短編


□若いと色々
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万斉とまた子が引っ付いたようだ。
2人共、別段その前後で働きが落ちたでも無いから良しとして、高杉は見て見ぬふりを決め込んでいた。言いたきゃそうしてくれれば良いし、もちろん言ってくれるなら喜んで祝福もしてやろう。
ただ面倒事だけは勘弁だと薄っすら思った。もし今後の2人に何かあって喧嘩別れでもして隊内の雰囲気が悪くなったら…どちらかが隊を抜けると言い出したら…。はたまたずっと仲睦まじくやってくれたとして、子供が出来たらまた子はすぐ休ませるべきだろう、無事に子育てが終わったら隊に戻ってくれるだろうか…。
ま、その時はその時に考えりゃあ良いか。


過激派攘夷党の大将とは思えない程の高杉の意外な親心やおせっかいを知ってか知らずか、それなりに2人の仲は良く続いているようであった。
春の日に鬼兵隊の皆で花見をした。その頃には隊内でも何となく全員が察しており、ほとんど公認の空気になっていた。
高杉も初めに感じていた心配事などすっかり忘れ、手際よく準備をしてくれる2人を満足そうに見やったりしていた。
「少し酔っちまった」と人の輪から外れて寝転び、空を見上げこっそり夜桜を楽しんでいると、心配した2人がやってきて代わる代わる高杉を覗き込んだ。
大丈夫大丈夫、歩いて帰れるから迷惑かけねぇよ。そうだな、ちょっと水くれよ。ふわりと舞い落ちる桜の花びらを前髪に受けながら赤い顔で微笑う高杉を、万斉とまた子は困ったように笑って見つめ返した。この時の2人の目に欲が薄っすらと灯った事に、本人は全く気付かないのであった。


高杉は、以前は若気の至りか万斉に時々抱かれていたが流石にもうないだろうと一種の安堵を持って桂との逢瀬を楽しむ日々だった。
だが花見の夜から後、万斉は逢瀬帰りの高杉を良しとせず、また思い出したように高杉の部屋に来るようになった。
最初は戸惑ったが、一晩に何度も強請ってくる万斉の姿を見るとつい許してしまう。事実とは的外れな楽観さや優しさでもって受け入れてしまうのが高杉という男の意外な性質である。
些細な喧嘩でもしたのだろうか、仕事の憂さ晴らしだろうか、こんな無体を強いたい事も…男だしなァ、あるかもなァ、俺を身代わりとはいい度胸だぜ…しかし来島にこんな事されちゃ困るなァ…俺で我慢しようってんなら、まぁ、仕方無ぇかなァ…。


茶屋で抱き合い別れたものの蕎麦で一杯をやりたくなったので、桂は家路の途中で方向を変え、高杉の船を訪ねた。
派は違えどお宅の高杉くんとはプライベートでは熱い思い出ほとばしる旧友の桂と伝えると、門番は興味深そうに高杉の私室前に通してくれた。しかし彼は襖に一度手をかけたものの一瞬動きを止めて不快そうな顔をした、ように見えた。
不思議に思いその様子を見つめていた桂を振り返ると、今は開けないほうが良いかも知れません、と早口で囁いた後に桂をそこに残したまま、彼は去ってしまったのだった。


逢瀬から船に戻った高杉が呑気に私室で煙管をふかしていると、久しぶりに万斉がやって来た。今日はもう疲れた、とやんわり伝えたものの万斉は引かない。仕方ないから、早く終わってくれよと願いつつ「一回だけ、な。」と受け入れてやった。
そんな夜に限ってだ。
最中にまた子が高杉の部屋を開けてしまった。悲しい顔はさせたくなかったのに。妹分どころか娘みたいに思っていたのに。
ここに来てやっと事の重大さを感じ、己の楽観さに深く後悔した。
見るな、すまねェ…うわ言のように繰り返す高杉をよそに万斉は手を離さなかった。


「また子、いらっしゃいでござる。今夜こそ手伝ってみるか。」
後ろから万斉にホールドされたまま、その言葉の衝撃のせいで何も行動を起こせなかった。
その間に襖を閉めて部屋に入ってきたまた子は頬を赤らめ高杉の正面に跪き、細い指を伸ばしてきた。
「な、ダメだ来島、悪かった、俺が。俺が、万斉を唆したんだ。それだけだ、もうしねぇ。信じてくれ。」辛うじて動く右手で小さな金髪頭を押しのけようとすると後ろの万斉に腰を深く抑え込まれて脱力した。そんな高杉にまた子は小さく微笑む。


「お目めが赤いっス、晋助様。大丈夫、また子しっかり練習したし、もうハタチなので本当に大人ッス。お願いです、一回だけで良いからさせてください。」
「…っく。お、お前は自分の女に何をさせようとしてんだ。止めろ、止めさせろ、馬鹿、ばか。」自分を捉える非情な部下を振り返り、震える声で訴えるもサングラスの奥の瞳はらんらんと輝いている。
「晋助、拙者の大事なまた子の夢を叶えてやってくれ。お願いだ。ついでに拙者も物凄く興奮してるでござる。」
こんなにぞっとする笑顔を見たのは初めてだ。絶句。頭おかしいんじゃないのか。怖い。若い奴って怖い。


パニックに陥る高杉をよそに、また子は小さな舌で高杉の中心を舐めた。びくりと腰が震える。こめかみと脇の下から冷や汗がだらだらと流れて来るのを感じる。後ろめたさで消え入りたかった。後ろから万斉の息が耳にかかってぞわりとする。かかったんじゃない、明らかな意図を持って注ぎ込まれたのだ。
「晋助…拙者のまた子は、可愛いだろう…?」万斉は少しずつ腰を揺らし、頸動脈に沿って強く舌を這わせる。
その間にもまた子の舌はたどたどしくも全体を濡らし続け、遂に口の中にすっぽりと収めてしまった。
「離せ来島…ん、あっ。ふぁ…んん。っく…。」苦しそうだ、小さな口にそんなもの入れることないのに。可哀想に。ぼんやり思ったが体は言うことを聞かず、万斉の熱い舌の動きと、体の中心に収まりゆっくりと上下に動かされるものに対して素直に喘ぎ声を返すしか出来なかった。
酷い顔をしていることだろう。自然と目頭から流れるものを感じる。ついでに鼻からも少し。あぁ喉が、乾いた…。
このまま眠ってしまいたかったが、若い2人はまだまだ許してくれない。


「また子、そろそろしてみるか?」万斉が低く囁くと、こくりと縦に揺れる金髪頭。働かない頭がそれでも何かを察して、高杉の目からいよいよ大粒の涙が流れ落ちた。はにかみながら順にするりと着物を床に落とし、うっとりとした目で高杉を見つめながら腰を落としてくるまた子。頬に白い両手を当てがい柔らかく口づけを一つ。いつの間にこんなに大人になってしまったのだろう、どきりとするほど一丁前に大人の女の顔をして、自分の体に高杉のものをあてがい、飲み込んでいった。少女の体の中は熱く、キュッと良い締まりだった。
いよいよ言葉を失う高杉の胸元に万斉の手が伸び、両方の乳首をくすぐった。と思うと強めに指の腹で潰してくる。体の芯が震える。震えると体の中の万斉のものが弱い所に当たって更に強い震えを連れてくる。
「ん、晋助、様ァっ」ぎこちないながらも自分で腰を上下に動かす姿がいじらしくて、あんなにいけないと思っていたのに、見つめてしまう。また子のテンポが早くなるにつれ、後ろの万斉もそれに合わせて下から突き上げてくる。
もう気持ちの良さは認めざるを得ない状況で、そう思う自分が浅ましくて。たくさんのピンに当って跳ね返って、いつまでもゴール出来ないピンボールのような気分だった。目の前がまた涙で滲んで、頭がくらくらした。


「そこまでだ。」突然、聴き馴染んだ凛とした声とともに襖がスパンと開けられる。
「貴様ら、何と破廉恥な。己が身の罪深さを知るが良い。行くぞ晋助、今夜は俺の部屋に来るんだ。」
高杉は、少しずつ焦点が合ってきた目線の先に立つ桂の姿にいよいよ絶句した。
すかさずまた子が冷静さを手繰り寄せ、顔を上げて言い返す。
「…桂ァ。アタシ知ってたっス。喜んで聞いてたくせに。どうせ興奮してたんじゃないッスか。」
顔から火が出るとはこのことだ。まさか襖の向こうで聞いていたのか?高杉は先程までの体の奥からの震えに加え、精神的に膝がガクガクしだすのを感じた。桂は無言でずんずんと目の前に進んでくる。こんな時でも姿勢が良い…。
また子を押しやり、高杉の前を陣取ってどすりと珍しくあぐらをかいた。全員が息を飲む中、当たり前のように高杉に口付けた。
それをしながら、高杉を挟み向かい合う万斉に向けてしてやったり顔を食らわせる。面白くない万斉はお前で終わらせるかと、再び腰を動かし始めた。桂も負けじと高杉の中心をしっかり握ると上下に擦りだす。舌を押し入れて文句も塞ぎ、あっという間にいかせてしまった。
「ヅラ、んむぅ。…は、や、いやだ…っん、むっ。」
訳も分からないまま達し、恥ずかしいやら疲労困憊やらでとうとう高杉は気を失った。それを確認してから手早く後始末を行い浴衣を着せると、桂は高杉を背負って部屋を出て行った。毒にも薬にもならない捨て台詞を残して。
「君たちはもう寝なさい。あー、それと、ごほん。ぶっちゃけ悪くないNTRであった。次は許さん。2人で仲良くやれ。おやすみ、バイビー。」


以来、高杉はこの夜の出来事に言及されそうになると必死に空気で抹殺している。
一週間も経つと普段は何事もなかったように振る舞えるようになったが、たまに夜の宴の席などで2人が意味ありげな笑顔をこちらに向けているように感じて怖い。若い奴らの性欲が怖い。部下の性癖が怖い。大切な奴らがただのセックスフレンドになってしまうのが怖い。
「晋助さまァ…また子がお注ぎするっス。」
愛らしい熱い眼差しに騙されてはいけない。この酔い加減のうちに撤収するのが大正解である。
「いやァ俺はもう良い。後は若い奴らで楽しくやんな。」
それでも抜けない癖で律儀に金髪頭にそっと手のひらを当てると、そそくさと退散する。そんな哀れな大将の背を見送る万斉とまた子は手を繋ぎながら、こっそりと目配せをして苦笑する。


二度目はない。まだ。取り敢えず。
 

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