長い夢

□第一章 始まり
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「そうそう、今日の夜18時に集合で決まったから!」


少し静かになった中、ハンジは声を上げた。


「え?」


イヴは何の話かわからず聞き返した。


「リヴァイの歓迎会だよ! 明日は調整日だろ? みんなで酒場に行って、とことん飲もうじゃないか!! あ、もちろんリヴァイは強制参加だよ! 君が主役なんだからね」


「......」


にこにこしながら強制的に話を進めるハンジに、さすがに巨人4体を1人で討伐したリヴァイでも断ることはできずため息をついた。
その反応を見て見ぬふりしてハンジは喋り続けた。


「よーし! そうと決まればさっさと反省会して、報告書書いちゃおう!!」


すっかり歓迎会モードになっていた一同は面倒くさそうに返事をした。
壁外調査のあとはいつも反省会を行ってみんなで報告書を一気に書き上げるのがこの班の決まりだった。


「おい、何でハンジが仕切ってんだ。この班の長は俺だぞ」


「ははは!! すみません、グラン分隊長!」


未だに興奮が抑えられていないハンジは、上司である分隊長の言葉を待たずに適当に席についた。
それを見て頭をかきながらため息をついたグラン分隊長は、これ以上何も言わずにハンジの斜め前に座った。

それに続いてそれぞれが一つのテーブルを囲うように座りだした。


「あ、イヴちゃんはここに座って」


「遠慮します」


グラン分隊長はイヴを自分の隣の席に座るよう促したが、イヴは見もせずにハンジの隣、分隊長の前に座った。

リヴァイは机を囲うように座った一同の輪には入らず、グラン分隊長の後ろに腰をおろした。


「う......まぁよく見えるからいいか。うわ、かなりの時間をくったな! よし、反省会を始める。イヴちゃん、記録してもらっていいかな?」


グラン分隊長は時計を見ると、雑談で10分程時間がたっていたことに気づき少し焦った様子で目の前にいるイヴを見つめて記録ノートを渡した。


「またですか」


イヴは半ばため息をつきながらノートを受け取ってそれを開いた。
そこには前回もしっかりとイヴが記録をした証拠があった。


「イヴちゃんの字は綺麗だからなぁー」


開かれたノートを見て分隊長はうっとりした様子で言った。


「はは、ありがとうございます」


そんな分隊長に呆れたイヴは苦笑いして答えた。


「分隊長、セクハラですよ」


「セクハラですね」
「セクハラです」


その様子を見かねてハンジは言った。
それに続いて班員全員が分隊長に冷たい視線を送った。


「何だよみんなして! 違うよなぁ、な、リヴァイ!」


それに逃げ場がなくなり分隊長は後ろにいるリヴァイを振り返った。


「あ?」


案の定、リヴァイは聞いてなかった様子で眉間に皺を寄せた。


「う......」


とどめの睨みを受け、分隊長はしょんぼりした。
その様子を見届けてハンジはノートを自分の前にいる班員に渡した。


「はい、記録はサレね! さっさと始めよう!! 時間が勿体ない」


「おい、仕切るのは俺だ!」


ノートを渡されたサレはハンジを睨みながらも、イヴの申し訳なさそうな顔を見ると仕方なくノートを受け取った。


「ごめんね、サレ」


ノートを受け取ってくれたサレに一言お礼を言うと、彼は照れ臭そうに頷いた。


「ありがとハンジ」


グラン分隊長はハンジに無視されながらも気を配るイヴを見てやっと反省会を開始した。


......イヴが上司だからといって躊躇うことなく断れるのはグラン分隊長の人柄のおかげもあるが、それ以上にバックに心強い味方、ハンジがついているからだ。

まぁこんな上司でも分隊長と名のつくことだけのことはあり、壁外にでると強くて頼りになることは確かだし、真面目になると部下思いの信頼できる上司だ。
最初の壁外調査からの帰還後に泣いていたイヴとハンジに声をかけたのもグラン分隊長だった。
そんな分隊長をイヴは尊敬していたが異性として好きにはなれなかった。


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反省会は1時間程度で終わった。
それだけ歓迎会を楽しみにしているのか、集中すれば会議はすぐに終わる。

リヴァイはその様子を感心して眺めていた。


「よし、昼食までに報告書書き終えろ! リヴァイ、お前もな」


それぞれが席を立つ中、分隊長はリヴァイを振り返って紙を何枚か渡した。


「......ここでクソみてぇに仲良く書くのか」


リヴァイは座って足を組んだまま渡された紙を受け取った。


「昼食までここは誰も来ないからね、好きな席使っていいんだよ!」


その様子を見ていたハンジは席を確保しながら口を挟んだ。


「......」


要は昼食までに書き上げろということだと察したリヴァイは眉間に皺を寄せて受け取った紙を睨んだ。


「チームワークだ。まずはメンバーを知ることも大事だぞ、リヴァイ」


分隊長はリヴァイの頭をさらっと撫でると近くの空いてる席に腰かけた。


「ちっ、......わかった」


リヴァイは頭を撫でられたことに苛立ったが何とか抑えて席を立った。
グラン分隊長は何かとスキンシップが多い。


「おっ、意外と素直だな」



それぞれ1人1つのテーブルの席につき、1枚の紙きれに没頭し始めた。

リヴァイは1人みんなから一番離れた席に腰掛け、紙きれとにらめっこしていた。


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