短い夢

□大人の事情
1ページ/2ページ




リヴァイ班が新たに編成され、エレンとそのメンバーとなった104期生達は人里離れた山奥の小屋に来ていた。

硬質化の実験が開始されると、近くの小屋にハンジ班も下宿することになった。


……そんな中、兵長は毎晩どこかに出歩いていた。

初めはアルミンが夜中に小便に外に出ている時に気付いた。
それが3日続いた時、鋭いアルミンは不審に思い、コニーとジャンとエレンに相談したところ
ジャンに「ハンジさんとできてたりして」と言われ、コニーに「大人の事情じゃねぇか? ぐふふ」と言われた。

確かにそれはあるかもしれないが、「ハンジさんではないだろう」と、アルミンとエレンは昼間の実験中に兵長に気付かれないように兵長を目で追った。


……アルミンの見解では、ハンジ班の誰かと密会しているということだった。

ハンジ班に女兵士は二人しかいない。
どっちだろう......二人共兵長より背は低い。
一人は黒髪のショートヘア......兵長とは彼女のほうがよく接近している気がする。
もう一人は......


エレンがそんなことを考えていると、いつの間にか接近していたリヴァイ兵長に肩を叩かれ、エレンは肩を震わせて固まった。


「オイ......何してる、さっさと準備しろ」


「す、すみません!」


リヴァイに意識を取り戻され、巨人化したエレンはアルミンに観察を任せた。


......結局アルミンはわからなかったらしい。
兵長は絶対に弱みを見せない。
もしも一人の女兵士と付き合っていたとしても、周りに気付かれるようなことはしないだろう。

そうなると益々気になった。

エレンはその日の夜中、小便に外に出るふりをして小屋の物陰に隠れて兵長が出てくるのを待った。
10分ぐらい待っただろうか、エレンは眠気が襲ってきて止めようかと思った矢先、静かに開いた扉から兵長が出てきた。

兵長は足音を立てずにランプを持って暗い山道に消えていった。

エレンは緊張で高鳴る心臓を押さえて忍び足で尾行した。



兵長が歩みを進める先は、アルミンの予想通りハンジさんの班がいる小屋......

やはり大人の事情だろうか。
ハンジさんと密会か。
それともハンジさんの部下と密会か。

エレンは唾を飲んで、立ち止まった兵長を木の影から見守った。


するとハンジ班が下宿する小屋のほうからランプを片手にフードを被った誰かが現れた。

身長からしてハンジさんではない。

女兵士のどちらかだ。


兵長の目の前に来ると、フードを外して顔を見せたその女兵士は、黒髪のショートヘアではないほうのハンジ班の一員、
イヴ・サンローランだった。


兵長は彼女に近寄るなりランプを置いて抱き締めた。
彼女もそれに応えるようにランプを落として兵長の背中に腕を回している。

暗くてよく見えなかったが、今度は彼女の唇と兵長の唇が重なっている様だ。

それはキスというのだろうか。

しかも舐め回すようにお互いに舌を激しく絡めていた。
次第に兵長は彼女の首筋に舌を這わせ、器用にシャツを捲りあげて胸を揉みだした。


エレンはその光景に目が離せなくなった。
ゴクリと唾を飲み、高鳴る心臓と興奮する身体を感じながら自分の息を押し殺した。
自分だってもう15歳だ、何をしているのかぐらいはわかる。
これから何が始まるのかも大体想像ついた。


すると彼女の視線がこっちに向いていることに気付いた。
エレンはすぐに目線を離して木の影に姿を隠した。


「っ......リヴァイ、あなたの部下が着いてきてるみたい」


イヴは胸の突起をくわえようとしているリヴァイに、小声で耳打ちした。


「っ......何?」


リヴァイはすぐにイヴから離れて体勢を整え、イヴの視線を追って、ある一本の木に目をやった。
そういえば昼間、エレンとアルミンにやたら見られていたことを思い出した。
そのどちらかに的を絞り、静かな山奥で耳を研ぎ澄ませば、その木のほうから聞き覚えのある荒い呼吸が一瞬聞こえた。

その一瞬でどっちなのか確信したリヴァイは、置いたランプを拾い上げ、その木を照らして声をかけた。


「......エレンか」


エレンは息が聞こえないように両手で口を塞ぎながら、突然名前を呼ばれて肩を震わせた。

何でわかったんだ......?!

エレンは逃げるに逃げれない状況に、その場で立ちすくんだ。


「オイ、クソガキ......聞こえてんだろ」


リヴァイは姿を現さない部下に苛つき、顔をしかめて木を睨んだ。

エレンは鼻で深呼吸して渋々木の影から姿を見せた。


「の、覗く気はなかったんです......! しょ、小便してたら兵長が森の奥に行くのが見えたので! き、気になって......それで......すみません!」


エレンは声をあげて言った。


「声がデカイ、クソガキ......良いもの見れて満足か? 馬鹿正直におっ勃てやがって......わかったらガキはさっさと帰って寝ろ」


リヴァイはエレンに見えないようにイヴを自分の後ろに隠して、エレンを睨みながら言った。


「は、はい!」


エレンは言われて恥ずかしくなったと同時に自分の膨らんだ股間を手で覆い、肩を震わせながら兵長に背を向けた。


「他言したら次の日からお前の命はない、いいな」


リヴァイはエレンの背中に釘を刺すように言った。

エレンは一瞬肩を震わせて恐る恐る顔だけ振り返って頷いた。


早足で暗い山道を帰っていったエレンを見届けて、リヴァイはイヴを振り返りため息をついた。


「ちっ、とんだヘマしちまったな」


イヴは片手で頭を抱えるリヴァイをそっと抱き締めた。


「私は気にしないよ、リヴァイ」


「イヴ......」


リヴァイは抱き締められた手を退けて、イヴの背を木に押しやり舌を絡ませるキスをした。

そして先程の続きをするように、イヴのシャツを捲り上げて胸を揉み、股の間に自分の足を入れて秘部を擦った。

イヴはその刺激的な感覚に声をあげて体を震わせた。


.
.
.


エレンは何とか部屋に帰って布団に顔ごと体を埋めた。


アルミンにさっき見たことを報告したい。
だが自分の股間が大きくなってしまったことをアルミンに知られたくないし、恥ずかしい。
それに言ったら殺される。
......いや、自分は人類の希望なんだからいくら兵長でも殺しはしない......か?

エレンは考えながらも兵長の淫らな姿と、それに応える彼女の姿がたまに脳裏を過り興奮を抑えきれなくなった。

このままじゃ寝れそうにない。

もう一度外に出て興奮を鎮めてこようか......。
だが帰ってくるであろう兵長に出くわすかもしれない。

どうすればいい......一体、どうすれば?!


そうだ......ハンジさんになら言ってもいいかもしれない。

兵長の相手はハンジさんの部下だし、鋭いハンジさんなら知っているかもしれない。

明日聞こう。


エレンはそう考えを決めて目を閉じた。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ