短い夢

□花いちもんめ
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「イヴ・サンローラン、お前は俺の班に入れ」



ある日の壁外調査から帰還後、
救護室で治療を受け終え医師がでていったあとリヴァイ兵長が入ってきた。

驚いたイヴは上半身を半分出した状態だったので羞恥心で言葉を失った。

すると突然言われた一言......。


イヴはさらに言葉を失った。




_____ イヴはハンジの部下だった。
今回の壁外調査で、目の前にいる奇行種に近寄りすぎて背後からくる巨人に食われそうになった上司のハンジを庇ってイヴは腕に怪我を負った。

すぐさまリヴァイ兵長が飛んできて一瞬で2体の巨人を討伐したのだが、
イヴの左腕からは大量に血が出ていて、声にならない声をあげるイヴに、慌てるハンジを見たリヴァイは自分の対応が遅れたことに舌打ちをした _______




「え......あの......兵長、私は......」


やっと声がでたかと思えばイヴは何て答えればいいかわからず困惑した。
言われた意味が理解できなかったわけじゃない。
自分を認めてもらえたのは嬉しいことだ。
だが怪我を負った自分を勧誘する理由がわからなかったし、それに自分はハンジの部下だ。


「私はハンジ分隊長の部下です」


しばらく沈黙が続いた後やっとまともに喋ったイヴだが、その目はどこか泳いでいてイヴを凝視していたリヴァイの目と合うことはなかった。


「そんなことはわかっている」


なかなか目が合わず欲しい返事をくれないことに痺れを切らしたのか、腕を組んで壁にもたれて立っていたリヴァイはため息をついて動いた。


「......痛むか?」


兵長が動いたことに内心ヒヤヒヤしながら相変わらず泳いだ目でイヴは答えた。


「そうですね、少し......」


リヴァイはハンガーにかけてあったイヴのシャツを取り、それを広げてイヴの肩にかけた。


「!」


イヴはその行為に驚き、そういえば胸から上を露出したままだったことを思い出すと、恥ずかしくなり頬を赤らめ下を向いた。


「あ、ありがとうございます」


下を向いてそそくさとシャツを着るイヴを横目で見ながら、リヴァイはまた壁にもたれて腕を組んだ。


「お前がハンジの部下であることはわかってる、あいつにはもう話はつけた。これは命令だ......俺の班に入れ」


リヴァイはシャツのボタンを右手だけで器用にとめていくイヴを凝視しながら強い口調で言った。


「! 話ついてるんですか」


その言葉にシャツのボタンをとめ終えたイヴはリヴァイを見た。


「やっと目が合ったな」


「!」


しっかり目が合って言われると何故か恥ずかしくなり顔を赤くしたイヴはまた目をそらした。


「は、話ついてるなら言ってください! ......よろしくお願いします」


イヴは高鳴る心臓に熱い頬を感じ、リヴァイを見れなくなった。


「......オイ」


リヴァイはこれ以上目を合わせようとしないイヴに苛立ち、壁から離れてイヴに近づいた。


「!」


下を向いていたイヴは、リヴァイの足が目の前にあることに気づいて更に心臓が煩く鳴った。


「何故俺がお前を班に入れたか聞きたくねぇのか」


座っているイヴの目の前に立ち、その頭に手を置いてリヴァイはしゃがんだ。
すると突然目の前にリヴァイの顔が見えてイヴの心臓は破裂しそうに跳ね上がった。


「な、何故ですか......?」


確かに気になったが聞けなかったことを強引に聞けと言ってきているリヴァイ兵長に逆らえるはずもなく、気付かれてしまいそうな心臓の高鳴りを手で押さえつけながらイヴはおそるおそる聞いた。


「お前......イヴをあのクソメガネに預けておけねぇからだ」


リヴァイはイヴの頭に置いていた手を髪を撫でるようにして下ろし、今度はイヴの肩に置いた。
それにくすぐったさを感じながら、よくわからない答えにイヴは思わず聞き返した。


「え?」


今までにない至近距離で二人の目が合うと、リヴァイの顔も少し赤いことに気付いたイヴは、まさかと思いながらも今度は目をそらすことができずに答えを待った。


「......俺がイヴに惚れてるってことだ」


「!」


リヴァイはイヴの目をしっかり見ながら、少し小声ではっきりと言った。

イヴにとってリヴァイはずっと尊敬して憧れていた。
異性として好きか、と聞かれると好きだったのかもしれない。
そんな人類最強と言われている兵長が、自分に惚れていると言った。
嘘みたいな話だ......これは夢ではないか?
だが左腕には痛みがあって、右肩にはしっかりと感触が伝わってくる。
その肩に置かれているがっちりした手は少し震えていて、至近距離で見るしっかりと合った目は少し潤んでいる。
イヴは信じられない現実と自分の破裂しそうな心臓に何も言えずに固まってしまった。


「オイ......何か言え。俺の心臓が弱っちまうだろうが」


リヴァイは肩に置いてしまった手が震えだしたのを押さえるように肩を握った。
イヴははっとして何とか声を出したが、心臓が高鳴りすぎて言葉が震えた。


「うそ、みたいです......私なんか......っ!」


そんな震える唇に、突然柔らかい唇の感触がしてイヴは言葉を詰まらせた。

それは唐突にキスされていた。

イヴはその心地よい感触に目を瞑った。
すると更に抱き締められた感触のあとリヴァイの心臓の鼓動も感じた。

……このまま何でも受け入れられる気がした。
何をされても、兵長ならいい。
イヴはそう思った。


リヴァイはただならぬイヴの反応と自分よりも早い心臓を感じ、両思いであると確信した。
胸に当たる柔らかい胸の感触に、このまま誰もいない救護室で理性を解放しヤってしまおうかとも思った。


「んっ......」


暫くその場で触れるだけの長いキスが続いた後、無防備になったイヴの唇の隙間にリヴァイは舌を入れた。
それに応えるようにイヴも舌を絡ませてきて厭らしい声を出したもんだから、リヴァイの理性はたちまち解放された。
舌を器用に絡ませたまま、リヴァイは座っているイヴを立ち上がらせて隣にあるベッドに腰掛けさせた。
更に胸を揉みながら先程器用にとめられたボタンに手をかけようとした。


......その時




「イヴーーーー!!! 傷はどう?! リヴァイ来てない?!」


「!!」


カーテンが勢いよく開けられ、聞こえたうるさい声にリヴァイの手は止まり唇も離された。
そしてすぐさまイヴを隠すように体勢を整えたリヴァイは、急激に理性を取り戻され入ってきたメガネに対し平然を装った。
イヴは自分を盾に元上司から見えなくしてくれたリヴァイに感激しながら、衣服を整えて静かに深呼吸して気持ちを切り替えた。



「あ......いたね......で、何かごめん」


「......クソメガネ」


リヴァイは立ち上がるなり、眉間に最大級の皺を寄せてハンジを睨んだ。


悪いタイミングか良いタイミングだったのか……。
ハンジは睨まれている焦りと、いいものを見た気分とでニヤニヤしていた。


「はははは......まぁ落ち着いて! 誰にも言わないからさ! それよりイヴは私の大事な部下だ、渡さないよ?」


「は? 自分の不注意で怪我させといて何言ってる。イヴはもう俺の班に入った。出ていけ」


「それは謝るよ、本当に悪かった! でもイヴは......え? もう入ったってどうゆうこと?! イヴ?」


ニヤニヤしていたハンジは、リヴァイの発言に顔をしかめてリヴァイの後ろにいるイヴを覗き込んだ。

イヴは焦ってリヴァイの背中から顔を見せた。


「は、話がついたと言っていたので......」


「はぁ?! ついてないよ、リヴァイ! どうせ強引に引き込んだんでしょう!」


「奪われたくなかったらしっかり守れ。俺はこいつに惚れてる......これ以上テメェのとこにいたら怪我どころか死ぬかもしれねぇ。俺なら怪我すらさせねぇが......オイ、イヴ......お前が選べ。
俺か、このクソメガネか」


「っ......!」


確かに怪我をさせてしまったハンジは言い返すことができず、イヴを申し訳なさそうに見た。

自分で選べと言ったものの、リヴァイは自信満々というわけではなく強ばった顔つきでイヴを見ている。


二人に注目され突然選択を強いられたイヴは、嬉しくも難しい選択に交互に二人を見た。



ハンジさんは確かに巨人を研究するために危険を犯すし一緒にいたら怪我どころじゃ済まないかもしれない......。
それでも入団したときからずっと自分を気に入ってくれて可愛がってもくれた恩もある。



リヴァイ兵長は強面だけど本当に強いし部下思いで優しい。
しかも自分のことを好きと言ってくれた。
さっきもすごく優しかった。
自分も兵長が好きだ。



「......私は......」




ハンジさん→ ページ2
リヴァイ兵長→ページ3




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