短い夢

□壁にドン!
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「意中の相手を射止めるには壁ドンがいいらしいよ!」



とある平和な日、ここはエルヴィン団長の部屋。
会議が終了したあと、続々と分隊長達が出ていってリヴァイも出ていこうとドアに手をかけていた。

途端、「あ、そうだ! 」と声をあげたハンジを振り返えると急に意味不明なことを言い出した。


「は?」


リヴァイはそんなハンジを眉間に皺を寄せて睨んだ。


「最近読んだ恋愛本に書いてたんだよ、壁ドン。これやると片想いの相手も落ちるんだって」


睨まれても怯むことなくハンジはヘラヘラ喋りだした。
何を言ってるのかさっぱり理解できない。リヴァイは一層眉間に皺を寄せた。


その様子にエルヴィンは笑いを堪えて手を口に当てている。


「ふっ」


リヴァイは笑いを堪えきれず少しふいてしまったエルヴィンに更に苛立った。


「だから、イヴにやってみなよ! 絶対落ちるって」


リヴァイはイヴの名前が出たことに一瞬目を丸くして何を言われてるのか即座に理解した。


「黙れ、クソメガネ。俺がいつイヴを好きだと言った」


ドアから手を離し、その手をポケットに突っ込んで一歩メガネに近づいたリヴァイは今にもポケットからナイフでも出しそうな形相だ。


「わかりやすいからね、リヴァイは。前はエドナ、その前はケイトウだったかな。みんな死んだけど」


自分の片想いをずばずば言い当てられ、リヴァイは驚きを隠せず呆然とした。
エルヴィンは相変わらず背を向けて笑いを堪えている。


「......」


「あ、当たっちゃった? 更に言うとリヴァイのタイプは背が145〜157p、髪は肩より下で目がくりっとした可愛らしいかんじ、それでもって胸は......

「何が言いたい」


リヴァイの反応に手応えを感じたハンジは気にせず喋り続けた。

それにリヴァイは半ば諦めてため息をついた。


「だからさ、応援したいんだよ。君の恋路を」


ハンジは胸を張って言った。
リヴァイはそれに呆れた様子でハンジを睨んだ。


「は、余計な心配だな。どうせ死ぬヤツに気持ちを押し付けてどうなる。俺は目の保養にしているだけだ。オイ......そこで気味悪い笑いをしてやがるお偉いエルヴィン団長、お前も男ならわかるだろう」


リヴァイは背中を向けて肩を震わせていたエルヴィンに目をやった。
笑いを堪えていたエルヴィンは急に話をふられて振り返った。


「ははははは、そうだな。目の保養は必要だ、見るものが巨人ばかりでは人生楽しくないからな」


返ってきた言葉を聞いてリヴァイは腕を組んでハンジを睨んだ。
それに怯むことなくハンジは言った。


「まぁわからなくもないけどさ、今回は違うと思うんだよね。イヴはこれまで何回もの壁外調査で怪我すらなく帰還してるし、討伐数も20を超えてる。もう班長やってるしリーダーシップもあるけど、特別な方が集まるリヴァイ班に所属してもいいと思うし......ね、エルヴィン」


「ぁあ、そうだな。彼女は中々の器の持ち主だ。頭もいい。分隊長に相応しいと思っている。そろそろ昇格を考えていたところだ......まぁ、君がよければ配属を許可するが」


二人で向き合いながら話し出した様子を眺めてリヴァイは少し考えて答えた。


「それは......まぁ、悪くねぇな」


その答えにエルヴィンとハンジは意味深に微笑みあった。


「彼女をリヴァイ班に配属するに当たって1つ条件がある」


「何だ」


エルヴィンがニヤニヤしながら条件をつきつけたのを、リヴァイは嫌な予感がして顔をしかめた。


「壁ドンをするんだ」


真剣に言ったエルヴィンにハンジは口を押さえて笑いだした。
エルヴィンも今にもふき出しそうだ。


「......お前ら面白がってるだろう」


そんな二人にリヴァイは殺意を覚えた。


「いや、イヴも喜ぶと思うよ。私は両想いになってほしいんだよ、本当に」


ハンジは何とか笑いを堪えて言った。
エルヴィンも笑いを堪えているが、どうやら本気らしい。
こんな馬鹿げたことに言いなりになるのはどうも腹立たしいが、今までの目の保養とは違いイヴにはもっと特別な感情があるのは確かだ。
そりゃあ分隊長にするより自分の身近におきたい。
リヴァイはこの状況を回避する方法が思い付かず渋々承諾した。


「チッ......失敗したらお前らのその薄汚ぇ口を二度と開けねぇようにしてやる」


「よし、きた!」


ハンジはまるで奇行種に会ったときのように目を輝かせてガッツポーズをした。


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