長い夢

□第九章 始動
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結局雑談を交えたりして200枚以上もの履歴書から班員を選ぶことはできなかった。

合間に昼食を挟むと尚更面倒になったのもある。

一旦外に出てシーツを取り込んだり、それをまた持ち帰ってベッドメーキングしたり、ベッドの位置を変えてみたり、どれくらい隣の部屋の声が聞こえるのか試してみたりもした。


するとあっという間に時間が過ぎたのだ。


明日は朝食前から初の上部会議がある
欲しい班員を発表し、それぞれ班を編成しなければならない。
まぁある程度団員を調べているエルヴィン団長が決めるだろうが、初めての部下となるのだ。選びたいだろうということで履歴書を借りた。
だがもう今や何だか何でもよくなった。

何せ壁外調査経験者は班長を除いて10名もいないのだ。

その10名足らずの経験者から選ぶのは他の班長のことを考えると気が引けたし、かといって駐屯兵団から補充された兵士の中から選ぶなんて、しかも接触したことのない人の中から選ぶことなどできるものか。


移動させたイヴの部屋のベッドの上でハンジは寝そべり、イヴはその手前で腰かけてベッドの上に持ってきた何枚かの履歴書を眺めた。

少しでも医療に関係のあることを経歴を持つ者がいれば候補にいれたのだが、さらっと見る限りそんな兵士は一人もいなかった。


ハンジは完全に諦めてエルヴィン団長任せにしようとしている。

イヴももう諦めようとした。

そこに机の前の椅子に座っていたリヴァイが1枚の履歴書を見て口を開いた。


「イヴ、コイツは使えそうだ」


「え、本当?!」


あきらめかけていたイヴは、その声に目を輝かせてリヴァイを見て立ち上がった。

すぐにリヴァイの隣に行き、その履歴書を受け取ってまず名前と性別を確認すると、やはり女兵士だった。

だがその内容は、救命処置は得意と書かれていた。


「ナイス、リヴァイ! この人に決めた! やった、一人決まればあとはもういいや」


イヴはガッツポーズして喜ぶと、リヴァイの頭をくしゃくしゃに撫でた。

リヴァイは顔をしかめてイヴを眺めながら髪を軽くといた。

そこに少し顔を上げたハンジが目を細めて声を上げた。


「うわ、イヴのだけ? 私のも探してよ、1時間も待たせたくせに」


「調子に乗るなよ、モブリットに手伝ってもらったんだろう......あぁ、モブリットでいいじゃねぇか。副長、つけるんだろ」


リヴァイはハンジを睨むと、思い付いたように言った。


「いやいや、モブリットはエルヴィンの分隊に入ってるし......さっきは黙って話聞いてくれたけど、まぁ真面目だからね、巨人捕獲に協力してくれないんじゃないかなぁ......」


「真面目だからいいんじゃないの? 真剣に言えば協力してくれそうな気がするよ」


ハンジが顔を歪めて答えると、イヴはモブリットの履歴書を見つけてそれを眺めた。

グラン分隊長の手紙に書いていた副長にするはずだったホランとはかけ離れている気がするが、今のところ思い付くのは彼しかいなかった。


「そうだね、一応候補に入れとくよ! ......よし、もう決まったね! ちょっと街行かない? 息抜きにさ!」


ハンジはそう言うなり起き上がってベッドに座った。


「街に? でももう3時だよ?」


「夕食までには戻れるでしょ、せっかく休みなんだからさ、行こう!」


イヴが時計を見ながら答えると、ハンジはもう行く気満々でドアに手をかけた。

イヴはそんなハンジを苦笑いして見たあと、リヴァイを振り返った。


「まぁ、暇だしな......行ってやらんこともない」


リヴァイはため息混じりにそう言って立ち上がった。


「よし、きた!」


ハンジは振り返ってガッツポーズをした。

何か企んでるのか、どうせまた「はぐれた」とか言って二人きりにしたりするのだろうか。

そんなことを想像しながら、イヴは早々と部屋を出ていったハンジの後に続くように、ゆっくり歩いて部屋を出たリヴァイを見送って部屋を出た。
そして鍵を閉めると、二人を追うようにその背中を追った。


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