長い夢

□第三章 心の葛藤
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結局広間の掃除はイヴとリヴァイが手伝って日が完全に暮れる前にリヴァイの「もういい、疲れた」の一言で中断した。
とゆうか一般的な人からすればもう終わってもいいぐらいに綺麗になった。

真っ暗になる前に急いで家の前につけた荷馬車から全員で荷物を下ろした後、食事の用意を今から担当を決めてするのはもう体力も尽きていたので、持ってきていた食料の中のパンを1人2つずつ頬張った。

かなり汗をかいたが、今から何度も井戸水を汲みに行ってそれを風呂釜に入れて火をおこして沸かすような体力など誰も残っていない。
とゆうか風呂の掃除をしてないので入れるかどうかもわからない。

汗を流せないのは残念だが明日からの任務に備えて体を休めるべく、ハンジとイヴは奥の部屋、他の4人はリヴァイが掃除したその隣の部屋に自分の荷物を持って入った。


「うおっ! すっげぇ綺麗! さすがイヴ!」


ハンジは部屋に入るなり声をあげた。
大袈裟に褒めてくれるハンジにイヴは得意気に笑った。自分の頑張りを褒めてくれるのは凄く気分が良い。ハンジはいつもそれをくれる。


「当然でしょう。病気を治すのもまずは環境から、だからね」


イヴとハンジは持っていたランプと荷物を下ろして荷ほどきしながら話し始めた。


「ははははっ、なんか懐かしいねその台詞! 訓練兵の時にもそんなこと言ってたっけ? 掃除しないと病気になるだとか、これだから伝染病が流行るだとか!」


「笑い事じゃないよ、ハンジの不衛生さには呆れてたんだから。いっつも私が掃除してさ、自分でちゃんと身の回り片付けたりしないからリヴァイに怒られたんだよ」


「ははは、いつも助かってるよ! まぁイヴは診療所で育ったんだもんね。でもさ、リヴァイには正直驚いたよね。あの顔であの潔癖ぶりだよ?! あはははは」


ハンジが大声で笑うもんだから、イヴは荷ほどきする手を止めて人差し指を口の前に当てて声を小さくした。


「ちょっと、部屋隣なんだから聞こえてるかもよ?! ......明日殺されるかもね」


「ちょちょちょ、真顔で怖いこと言わないでよ! 私は奇行種以外には殺されたくないよ......いざって時はイヴが守ってくれるだろ?」


「わからないよ、リヴァイの言うこと正しいと思うもん」


イヴは荷ほどきを終えて全身に巻いてあるベルトを外しにかかった。


「え、うそ、もしかしてリヴァイに惚れた?」


ハンジは未だに荷ほどきをしている手を止めて珍しく小声でイヴを見た。


「な、わけないでしょう!」


イヴは突拍子もないことを言われて少し声を荒げてしまった。
親友にはすべて話しているが、実は惹かれているなんて自分でも認めていないし今回は言えなかった。
だってもう恋愛はしないって決めたんだから。


「そうだよね、ごめんごめん。恋愛感情はもたないんだったね」


ハンジはイヴの反応に少し驚きながらも手を動かしてやっと荷ほどきを終えた。


「うん、ごめん......まぁ確かに驚いたよ。すごい綺麗好きだよね、口は悪いし」


イヴは声を荒げてしまったことに反省して、シャツを脱ぎながら話した。


「口が悪いのは地下育ちのせいかと思うけどさ、潔癖なのはどこからきたと思う? 地下街、行ったことないけど聞いた話だと相当ゴミ臭くて汚れてるって言ってたよ」


ハンジも装備をとくと、シャツを脱いで適当に持ってきた服を着ながら話にのった。
イヴはその話に興味を抱き、少し考えて答えた。


「うーん、親が病気で死んだとか?」


イヴは考えながらも服を着替え終えて布団の用意をしだした。


「え、何それどうゆう考察?」


ハンジはイヴの答えに目を丸くして一瞬手を止めてイヴを見た
イヴは手を止めることなく考えているようだったので、ハンジもその隣で布団の用意をしだした。

イヴは一時伝染病が流行って親がかまってくれなかった時のことを思い出した。
あの時はひたすら家にある医学書を読み続けていたけど、母親は毎日忙しく環境整備をしていた。
なぜかと聞けば、この環境が病気を悪化させるからだと言っていた。
それを思いながら適当に答えた。


「病気で死んだ親は伝染病だったとして、それが環境のせいで悪化したのだとしたら、そうなりたくないから潔癖になったとか」


話しながらも布団を敷き終えたイヴはまだ布団を敷き終えてないハンジの手伝いにかかった。
その話にハンジは目を丸くした。


「中々の考察だね、とゆうかそれイヴの話?」


「まさか、私の親は患者の伝染病がうつって死んだわけじゃないもの......まぁそんな環境で育ったせいでこうゆう考察になったのかもね。もう寝よう」


イヴはハンジの布団を敷き終えるとさすがに重い体を感じて布団に入る体勢になった。


「そうだね、また明日。おやすみ......」


ハンジは布団に入ろうとするイヴを見て、自分も疲れきっていてすぐ寝れそうなことに気がついた。眼鏡を外して結っている髪をほどき、適当に手で解いた後すぐに布団に入った。


「ん、おやすみ......」


イヴは布団に入ってハンジが髪をほどく姿を見届けると目を閉じた。

思った以上に疲れきっていているためすぐに眠れそうだ。
なのに何故か今日自分のために蜘蛛を殺してみんなにそれを蹴飛ばしたリヴァイの姿が脳裏に浮かんだ。
更に夕暮れ時のリヴァイの悲しげな姿まで出てくる。
彼ともっと話したいと思った。
この気持ちをハンジに話せばきっとこれは恋してしまっていると言われるだろう。
もう恋愛感情をもたないと言ってまだ1年もたっていないというのになんて意志の弱いやつだと思われるだろうし、自分でもそう思う。

イヴは目を開けて隣のハンジを見た。
彼女はもうすでに寝息をたてている。


明日になればまた気持ちは変わる、そう言えば明日の役割分担を決めてなかったなと思いながら、頭もとに置いたランプの火を消しイヴは再び目を閉じた。


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