もしものお話
□No.2もしもこんな"個性"があったら
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───お腹が空いた。
夜の十一時過ぎのこの時間、暗い路地裏で一人の男が走っている。
男はあるモノから逃げている。
男が走っているにも関わらず、そのモノはツカツカと一定のリズムを刻んで歩いている。
男は息を切らせて必死に逃げているのだが、……とうとう行き止まりとなってしまったようだ。
「ハァッハァッ!クッソ…どうにかここを……」
────カツンッ
「……鬼ごっこは終わり?オジサン」
「ッ、なんなんだよテメェはっ‼何処までも追いかけてきやがって…!」
月の光がゆっくりと相手の顔を照らす。
「…オジサン、悪いことをしたよね?
一週間前と昨日…宝石店を襲撃して、店員二人と一般人を五人怪我をさせて、一人は人質にしてヒーローから逃げ仰せた悪い人」
「そ、それがなんだ?お前も宝石が狙いなのか?なら宝石を半分、お前にくれてやる!だからここ…「そんなモンどうでもいい」、だったらなんで追いかけてくんだ!!!」
男は情けなく震えがら叫んだ。
そんな男を軽蔑する視線をくれながら、そのモノは口を開いた。
「……ボクね、お腹が空いたんだ だから…
オジサンのキラキラしたその赤い目を頂戴」
「…は?」
意味がわからない。と、思った次の瞬間、男の見ていた景色はブラックアウトした。
『次のニュースです。昨日の夜十一時過ぎに三十代後半の男性が二人の警察官に保護されました。保護した警察官の証言によりますと───』
男性の両目がくり貫かれていたと証言しており、恐らく"美食家グラトニー"による犯行だと思われます
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