◆刀剣・刀さにNL小説◆

□【長谷部】姫縛り〜主従逆転奉仕〜
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***



 儀式としての交合を終えてから。元審神者はようやくその身体から全ての紐を外されて、生まれたままの姿に還り、長谷部の腕に抱かれていた。絶頂の余韻で意識を濁らせたまま、彼のうわごとのような囁きを聞いている。

「俺は幸せです…… 主…… やっとあなたを俺だけのものにできた……」

 全てを長谷部に捧げ、人の身体すらも失った自分は、もう彼の主人でもなければ敬う価値もないと思うのに、それでも自分を崇めるような言葉を口にする長谷部に愛を感じて、元審神者は再び瞳を潤ませる。

 こんなにも執着されて求められることが嬉しく、だからこそ、そんな彼の想いに応えたいと願ってしまった。

 元審神者はその小さな手のひらを、長谷部の大きな背に回す。小刻みに震える肩口に彼が泣いていることを知った彼女は、まるで怯える子犬を宥めるように、その鈍色の髪を優しく撫でた。

 どれくらいそうしていただろうか。肉体の最奥から再び沸き立つ欲求を感じ取り、彼女は長谷部に行為の続きをしたいとせがんだ。何かに操られるかのように、浅ましくも正直な言葉を口にしてしまう。

 つい今しがたまで行っていた異物や縄を使った享楽的な情交で、失ってしまった理性や羞恥は未だ取り戻せていないのか、元審神者は長い睫毛を伏せてその頬を、長谷部の胸に摺り寄せた。

 愛する男に甘える情婦のようなその仕草は、彼女が今なお快楽の余韻に囚われて、さらなる刺激を求めている証左でもあり、そんな元審神者に長谷部は藤色の瞳を眇めて笑んだ。

「ええ…… あなたの思うままに」



 その後の長谷部と元審神者の交わりはあまりにも奔放で自由だった。

 全ての縄を外された元審神者の生まれたままの肉体は、どこまでも伸びやかで、長谷部の愛撫に呼応して柳の枝のようにしなり、あるいは美しい魚のように跳ね、淫らに痙攣した。

 長谷部の迸る欲求をその身体の全てを使って受け止めながら、元審神者である彼女は無防備な裸身を弓なりに反らせて、ひときわ華やかな声で喘ぐ。

 今も長谷部の身体の上に跨って、快楽に瞳を潤ませながら、愛する男の肉棒に貫かれる幸福を貪っていた。

「ああっ…… ああ……」

 嫣然と微笑みながら、薄く開いた唇から甘い喘ぎを漏らして、何かにとりつかれたかのように夢中で腰を揺らす元審神者は、本能のままに振る舞う美しい獣そのものだった。

 理性も羞恥も長谷部の手によって奪われて、あまりにも淫猥で大胆な姿を彼の眼前で披露している。

 金の組紐を食い込ませていた箇所に薄赤い痣を残した裸身が乱れに乱れ、元審神者は自身の痴態を長谷部に見せつけるかのように、存分に喘いだ。



 そして。いつしか彼女の裸体は、内側から淡い光を放ち始めた。神嫁となり、人でなくなったからだろうか。緊縛の痕跡が残る無垢な肉体は、この上もなく淫らでありながらも、全てを受け入れ包み込む聖女のような神々しさを、見るものに感じさせていた。

 しかしながら、その裸身のそこここに縄の痣を残し、情交に耽る彼女はやはり、春画や責め絵に描かれる淫猥な女奴隷の姿と重なり、聖と性という相反する二項を同時に体現する彼女は、まるで聖娼のようでもあった。

 今や元審神者は長谷部にのみ隷属する娼婦となり、長谷部もまたそんな彼女を愛玩する主人となり、かつての臣下たる長谷部に、元審神者は自らその裸身を捧げていた。

 無垢な肉体を彼に玩具のように使役され、淫らに酷使され、浅ましい蜜を溢れさせる秘唇に様々な快楽を教え込まれて、彼女は長谷部の手によって自身の肉体を、よりいっそう淫らに作り替えられていく。

 しかし、本能に根差した欲求と被虐の快楽の虜となっていた彼女は、長谷部の支配を素直に受け入れた。そんな元審神者はさながら、彼のためだけに生きる、永遠の虜囚のようにも見えた。



 その後も元審神者は、長谷部によって何度も絶頂を極めさせられ、白く濁った子種をその体内に注がれた。

「……――様、あなたは永遠に俺だけのものです…… 愛しています…… 俺だけの愛しいお方……」

 幾度もそう口にしながら、自身の眷属となった裸の元審神者を抱きしめて彼女にすがる長谷部は、かつて臣下だった頃と何ひとつ変わらない。愛する人に失う不安に怯え、ないものねだりを続ける、哀れな付喪神だ。

 しかし元審神者はそんな長谷部の腕の中で、改めて彼への愛を噛みしめていた。

「愛しています、長谷部…… ずっと私のそばにいて……」

 その言葉はあまりにも自然に、元審神者の唇から滑り出た。こんなにも強いふりをして繊細で脆い彼を、ずっと支えてあげたい。彼の苦しみを癒すためなら、何を犠牲にしても構わない。そう、自分が人の身を捨てることだって、構いはしないのだ……。

 美しい金の鎖にその心を絡め取られたまま、かつて人だった元審神者は、満ち足りた笑みを浮かべて瞳を閉じる。

 そんな彼女の姿にようやく安堵したのか、長谷部もまた淡く柔らかな笑みを浮かべ、まるで彼女を追うように、その意識を手放した。



***







 ここはとある本丸。よく晴れた青い空のもと、長谷部は仲間たちとともに内番の畑仕事に勤しんでいた。普段ならあまり好きではない畑当番もしっかりとこなす長谷部だが、今日の彼は少し違った。動作も緩慢で割り振られた作業もあまり進んでいない様子だ。

「――ちゃんと働けよへし切! 畑の世話だって主命だろ!」

 意外に真面目でやるときはやる不動の叱咤の声が飛ぶ。あの長谷部が怠慢を咎められるなんて珍しいこともあるものだと、同じく畑当番の燭台切が顔を上げ、話題に上がった彼を見やる。

 そう。今日の本丸もいつもどおりの本丸だった。審神者たる彼女は本日も変わらず審神者であり、長谷部もまた彼女に傅く打刀の付喪神の一振りであった。

 長谷部は彼女の臣下であり、主従交代事件など起こるはずもなく。……そうあれは、夢まぼろしのごとくなり。

 長谷部は未だ脳裏にこびりつく昨夜の夢を振り返る。そう、昨夜の浅ましく薄汚い欲にまみれた、あの夢を。

(……俺はなんという……)

 あまりの自己嫌悪に、長谷部の眉間の皺がさらに深くなる。夢とはいえ、あのような劣情を大切な人にぶつけてしまった自分は最低だ。

 あんなことを、自らの主で恋人でもある清らかで美しい人に望んでいたのかと思うと、誰に知られたわけでもないのに、腹を切って詫びたくなってしまう。

 しかし、自らの矜持にかけてどうしても認めたくなかった長谷部は、心の内で言い訳をした。

(いや、違う。俺は決してあのようなことは……)

 けれど、夢に見てしまったということは、多少なりとも願っていたことに違いはないわけで。とはいえ、頑としてそれを認めたくなかった長谷部は、原因を他に転化した。

(そうだ、これも全ては鶴丸国永、あの男のせいで……!)

 実は昨夜、長谷部の同僚でもある太刀の付喪神が本丸に大量の春画を持ち込んだ。非番の日に買ってきたというそれを、深夜で酒が入っていたこともあり、男士たち数人で面白がって眺めていたのだが。その春画のうちの一冊の内容が、あの夢に酷似していたのだ。

 最初は「そんなものに興味はない」と突っぱねていた長谷部だったが、生真面目さを揶揄されて、付き合いで中を見てしまったのが敗因だった。その手の欲は満たされていると思ったのに、人間の男の身体はなんと不便なのだろう。

 呪わしい気持ちになりながらも、長谷部は不動に返事をし、相も変わらず緩慢な動作で、割り振られた作業である草むしりを続けた。

 長谷部の怠慢が改善されていないことに、不動は不満げな顔をしたが、今の彼に注意を重ねても無駄と察したのか、何も言わずに自分の仕事に戻る。

「ん〜〜 悩んでるみたいだねえ〜〜」

 燭台切光忠の楽しそうなつぶやきは誰の耳にも届くことはなく、今日の本丸もまた、いっそ退屈なほどに平和だったのである。








END







以下あとがきあります








あとがき

お疲れ様です、作者です。お久しぶりです。
間が空いてしまいましたが、一か月ほど風邪をこじらせて体調を崩しておりました。
ここ数日でようやく体力や気力が戻ってきましたので、
ぼちぼち創作の方も無理のない範囲で再開できたらいいなと思います。

体調を崩している間に、刀剣の方でもテニスの方でも、
頑張って書いた作品を知らない人に盗作されたり
友人だと思っていた人に盗用されそうになったりなど色々ありまして、
二次創作は辞めないにしても、もうwebに作品を上げるのはやめて、
オフ専(つまり同人誌を「買って」下さった方にだけ作品をお見せする形態)に
移行しようかなと、常日頃全く悩まない自分が、珍しく悩んだ時期もありましたが、
まだもう少しwebにも作品を上げていこうと思います。
温かく見守って頂けましたら嬉しいです。

さて今回。
長谷部くんで緊縛・異物責め・主従逆転・ほんのり和風SMなエロでした。
いかがでしたでしょうか。
刀剣では前ジャンル(テニス)では書いたことのなかった・書けなかった、
シチュエーション優先のお話や、ヤンデレ風味のお話にも、
挑戦してみたいなと思っています。
刀剣の子たちは原作の世界観から考えても、
ヤンデレやメリバなお話も違和感なく似合いそうですよね。
特に長谷部くんは真面目でストイックでプライドが高くて、
歪んだ忠誠心を拗らせているぶん、ついつい妙なプレイをさせたくなります。
長谷部くん、ドSな変質者にしちゃってごめんね……。
でもこういうお話が書いてみたかったんですよ……。
それにしても、イケメンヘラで面倒くさくて、
とっても手のかかる長谷部くんが、とっても愛おしいです。

今回のお話はエロなうえに、
プレイ内容が私のお話にしてはちょっと特殊で過激なので、
あとがきで語るのも恥ずかしいのですが、緊縛・異物責めってエロエロしいですね!
ティーンズラブでも鬼畜ドSなイケメンに
異物責めされるシチュって意外とよくあるんですが、
自分でも書いていて「すごい、なんかエロエロしい……!」と
妙な感慨を覚えてしまいました。
閲覧者さんにもドキドキしてもらえたら、とても嬉しいです。

エロ突入前の、お風呂場で長谷部くんの背中を流してあげていたら、
長谷部くんに情熱的に口説かれるというシーンも、
自分で書いていて、本音全開の長谷部くん超かわいい、超愛しい、と思いました。
長谷部くんがああやって弱音を含めた本音全開で審神者嬢に迫るのは
本当に滅多にないことなんだろうなと思います。
長谷部くんの本音が聞けるのって、原作ゲームだと破壊ボイスくらいだと思うのですが、
追い込まれないと本音が言えない、そんなプライドが高くて弱いところも、
本当にかわいい子だなと思います。
でもこういう男の子って、実際にお付き合いしたら、絶対すごく面倒くさいですよね(笑)
長谷部くんのお相手の審神者嬢は、
母性強くて献身的な出来た女の子なんだろうなと思います。(まるで他人事のように)
それにつけても舞台の長谷部くんは本当にイケメンですね。
彼のせいで長谷部沼に落ちて、なかなか上がってこれません。

次回は全年齢で三日月さんのお話を書こうと思っています。
一万字以下くらいで、サクッと完成させられたらいいなと思います。
ここ最近は一話二万字弱のお話で、しかも全編R18なうえに、
自分で出来が気に入らなくてず〜〜っと直し続けていたりで、
書くのに時間とエネルギーをやたら浪費していたので、
次こそは短くてもいいので、サクッと書けたらいいなと思います。
生産性の高い書き手になりたいものですね……。

それではまた。
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