◆刀剣・刀さにNL小説◆

□【長谷部】姫縛り〜主従逆転奉仕〜
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 何かを愛おしむような、蔑むような、温かく包み込むような、冷たく突き放すような。内面に闇と欠落とを抱える彼が、情交や戦闘のさなか垣間見せる、あの酷薄な笑みにも似た……。

 昏い瞳で笑う長谷部は、まるで彼女の知らない男のようだ。これが荒ぶる祟り神としての彼の本質なのだろうか。

 しかし、すぐに表情を戻した長谷部は小さく息を吐くと、単衣を着たまま、元審神者に覆いかぶさってきた。唐突に降り落ちてきた逞しい男の身体に、びくりと肩を竦ませる裸の元審神者の耳元で、長谷部は吐息交じりに囁きかける。

「――さあ、始めましょうか」



***



「……はぁっ……んんっ……」

 二人きりの褥を満たすのは、元審神者の甘い喘ぎだけだ。

 彼女は縛められた両手首を長谷部の左手に押さえつけられ、体の自由を奪われたうえで、その豊満な肉体の最も柔らかな部分を、長谷部に淫らに責められていた。

 そう、先ほどからずっと。長谷部は元審神者の秘裂に掛けられた紐を引き、彼女の無防備なその場所を、好きに弄んでいたのだった。

「……ああっ ……長谷部っ」

 下の口に縄や宝珠を咥えさせられ、その場所を巧みに嬲られるという、かつての臣下に辱められるような交合でありながらも、秘唇に異物を含ませる快楽に目覚めてしまっていた彼女は、その倒錯した愛の営みに、たまらない心地よさを覚えていた。

 これまでの彼との交わりによって、被虐と隷属の快感を植えつけられていた元審神者の肉体は、無防備な秘唇を長谷部の手によって淫らに責め抜かれることに、深い悦びを見出していたのだ。

「長谷部…… ああんっ……」

 快楽に瞳を潤ませながら恍惚の笑みを浮かべて、彼の名を呼ぶ元審神者に、長谷部は優しく諭すように言う。

「……主とお呼びください」

「っ……」

「さぁ」

「……っ、あるじさま……」

「そうです、そうお呼びください」

「ああっ…… あるじさまぁ……」

 元審神者が長谷部を主と呼び、彼に縋ったその瞬間。長谷部はまるで彼女に褒美を与えるように、彼女の秘裂に張られた紐を、ひときわ強く引っ張った。

 その場所にぴんと張られた紐は、元審神者の柔らかな下の唇のより深くまで食い込んで、彼女はあられもない声を上げ、縄化粧を施された白い裸身をびくびくと痙攣させる。

 紐に通された大粒のトンボ玉も、まるで狙いすましたように、彼女のぷっくりと膨れた陰核を蹂躙し、元審神者をさらなる高みに押し上げる。

「あるじさまぁ…… ああんっ……」

 硬いガラス玉で陰核を責められるなんて、彼女にとっては初めてのことだった。しかし、長谷部の手綱さばきはあまりにも見事で、めくるめく快楽の虜となってしまった元審神者は、いとも容易く理性を手放してしまう。

 紐やガラス玉といった異物を使っての秘唇への愛撫に、彼女はすっかり心を奪われ、完全に没入してしまっていた。

 今や元審神者の心は、あまりにも淫らで大胆な空想に満たされていた。彼女の脳裏には、自分自身の秘裂の上を自在に転がるガラス玉や、その奥の小さな入り口に次々と挿入されてゆく大粒の宝玉、あるいは自ら意志をもって彼女の陰核をくりくりと責めるきらめく宝珠など、様々なものが浮かびあがり、その空想は彼女の秘唇の最奥をさらに熱く潤した。

 たまらなくなってしまった元審神者は、ひときわ甘やかに喘ぐと、ゆるゆると首を左右に振りながら、さらなる快楽を求めて、より大胆に内股を擦り合わせ、長谷部の手綱さばきに合わせて、腰をくねらせはじめた。

 そのあまりにも従順で破廉恥な姿は、彼女を視姦する長谷部をよりいっそう楽しませる。

 秘部を異物によって責め抜かれる、この背徳と被虐の悦楽をもっと味わってみたい。さらなる快楽の深みに堕ちてゆきたい……。

 行為の虜となってしまった元審神者は、無意識のうちにそんなことを願ってしまう。

 理性も羞恥も、既に奪われてしまっていた。今や彼女の肉体に残っているのは、この上もなく浅ましい性の欲求だけだった。自身の肉体がしきりに訴えるそれを、羞恥を失った元審神者はあっさりと口にしてしまう。

「あるじさま…… もっと……」

「……もっと、どうされたいのですか?」

「もっと…… ガラス玉で……」

 自身の陰核を愛されたいのだと、潤んだ瞳で懇願してくる元審神者に、長谷部は満足げに笑う。物欲しそうな顔で淫らな願いを言葉にする快楽に従順な彼女に、長谷部はさらなる愛おしさと征服欲とを呼び起こされる。

 この可憐な人の大切な場所をもっと可愛がって、苛め抜いてやりたい。この人をもっと大胆に乱れさせてみたい……。にわかに加虐心を呼び起こされた長谷部は、喉を鳴らして笑った。

「……素直な方ですね」

 そうとだけ口にして、彼女の秘裂に渡された縄から手を離すと。愛しい人の願いを叶えるべく、長谷部はゆっくりと身体を起こすと、彼女の脚の間に陣取った。そして、審神者のほっそりとした美しい脚を限界まで大きく広げさせる。

 彼女の無垢な秘唇は、さきほどまでの丹念な愛撫で、既に熟しきっていた。長谷部は愛くるしいその様子を、ここぞとばかりにじっくりと鑑賞する。

 二枚の肉の花弁は愛液で濡れ光り、さらなる愛撫と刺激を求めひくひくと震えていた。中央の意外なほどに大きな裂け目には、淫らな紐がぴんと渡され、肉色の渓谷の深くまでしっかりと食い込んでいる。

 紐に通されたいくつものガラス玉も、彼女の性器を大胆に彩り、全身に施された菱縄縛りの縄化粧と相まって、今の彼女は、これ以上ないほどに淫らな性奴隷であり、自らの主人に腹と性器を見せた服従の姿勢を取る雌犬のようだった。

 長谷部はそんな彼女の痴態を存分に堪能すると、ついに彼女の陰核に重なるトンボ玉を、その指先でしっかりと捉えた。



***



「ああッ……!」

 ようやく訪れた快楽にひときわ甲高い喘ぎを漏らし、はしたなく身悶える元審神者を見おろしながら、長谷部は彼女を容赦なく性の高みに押し上げてゆく。

 巧みな指遣いで彼女の陰核の包皮を剥き、これ以上ないほど無防備になった彼女のそこを、長谷部は大粒の宝珠でたっぷりと嬲ってやっていた。

 元審神者は縄の掛かった秘裂から歓喜の蜜を溢れさせ、かつての下僕であり現在の主人である長谷部に、今まさに淫らに征服されようとしていた。

 一糸まとわぬ豊満な肉体を菱結びに緊縛され、秘すべき裂け目にまでいくつもの玉を通した紐を張られて淫猥に整えられた身体を、長谷部に存分にいたぶられている元審神者は、まるで伝承に伝わる哀れな人柱のようだった。波打ち際の巨岩に裸で縛められ、怒れる神々の手により魔物の生贄とされそうになった人間の女性。

 今の元審神者もまた、人身御供――神嫁として、その無垢な肉体を長谷部に捧げ、彼に蹂躙されていた。

 いかに彼女が長谷部のかつての主であったとしても、真名を盗られた以上は彼に隷属するほかなく、今や元審神者は長谷部に、その美しい裸身の全てを淫らに使役されていた。

 豊かな乳房や潤んだ秘唇に縄を掛けられ、性器を異物で責められながら、目くるめく背徳の悦楽をその肉体に教え込まれて、乱れ悶えるさまを視姦されている。

「――もう充分、潤いましたね」

 やがて、長谷部は薄い笑みを浮かべ彼女の秘裂から指を離すと、ついに自身の単衣を脱ぎ捨てた。

 生まれたままの姿に戻った長谷部は、彼女の秘部に渡された縄を解くと、充血しきった下腹部の楔を、彼女の秘唇に宛がった。

「っ、長谷部……」

「行きますよ」

「来て…… 早く……」

 手首を縛められたまま、両脚を大きく広げて、元審神者は潤んだ瞳で長谷部を呼ぶ。彼女もまた存分に濡れたその場所に、長谷部の楔が打ち込まれるのを待ちわびていた。

 彼女に望まれるままに、長谷部は元審神者の秘唇に張り詰めた自分自身を差し入れる。

「……ああっ ……ああ」

 固く充血した長谷部の肉棒を、その場所にずぶずぶと沈められながら、元審神者は菱結びに緊縛された肉体を歓喜に震わせた。

 股縄だけは解かれたものの、未だに元審神者の両の手首や胴は金の組紐で縛められ、彼女は身体の自由を奪われたままだった。

 それでも女体の最奥の欠落を、愛する男に埋めてもらえた喜びからか、元審神者は焦点を失った瞳を細め、満ち足りた笑みを浮かべながら、うっとりと喘いだ。

 今まさに全ての欠落を埋められて、心身を充足させた彼女は、甘やかな至福のただ中にいた。そして、長谷部もまた彼女と同じ幸福に浸っていた。

「――ああ、夢のようだ。これでようやくあなたを俺だけのものにできた」

 これまで渇望し続けていたものを、ようやく手に入れることができた。このまま交合を続け、彼女の四肢の隅々まで自身の神気を行き渡らせて、秘裂の最奥に吐精すれば、元審神者を自身の眷属とすることができる。

 積年の悲願の達成を前に、長谷部の背筋に歓喜と興奮の震えが駆け抜ける。

「……愛しています。――様……」

 長谷部は陶酔のただ中で恋しい人の真名をつぶやくと、彼女の細い腰をしっかりと掴み、僅かに持ち上げた。

 肉体に縄を食い込ませ、互いの真名を呼びあいながらする交合は、想像を絶するほどの快楽を、絡み合う二人にもたらしていた。今回の情交はこれまでよりもずっと、心身の深くで繋がりあえているような気がする。

 手首の縛めだけを解かれた元審神者は、長谷部の首の後ろに腕を回し、彼女の秘唇の最奥を穿つ長谷部に、縋りつくように抱きついていた。

 長谷部が腰を打ちつけるたびに、元審神者はあえかな声を上げ、彼自身をきゅうきゅうと締めつける。

 彼女への愛はあれども酷薄な長谷部は、元審神者の全てを自分自身のものとするべく、容赦のない抜き差しを繰り返し、彼女の肉体の隅々まで自らの情欲と神気を注ぎ込んでいた。

 長谷部の律動はかつてないほどに激しく、彼女をどこまでも追い上げ、その全てを情念の業火で焼き尽くしてしまうかのようで。それはあまりにも彼らしい支配と征服の仕方だった。どこまでも自分自身の欲求や願いに忠実で、狙った獲物を逃がすことはない。

 そう、彼が忠実なのはあくまでも自身の望みに対してだった。今の長谷部にとっては、元主人の彼女よりも、我欲を満たすことが重要だったのだ。純度の高い歪な忠誠心は脆く壊れやすそうでいて、その実はずる賢く強かだった。

 今も独りよがりな情交で元審神者を散々に凌辱していながら、長谷部はこの期に及んでもなお、まるで彼女に縋るように、元審神者の真名をうわごとのように繰り返していた。

 胸の内に欠落と闇を抱えながらも懸命に、元主人の愛を乞う長谷部に、絵物語で語られる恋情に狂い破滅してゆく哀れな男の姿が重なり。そんな長谷部の姿に、彼を愛する元審神者は、いとも容易く絆されてしまっていた。

「……っ」

 彼女のこめかみに一筋の涙が伝う。いじらしい彼が哀れで、どうしようもないほどに愛おしい。

 惚れた弱みとはこのことだ。その弱みにつけこまれ、ついに自分はこれまで過ごした現世を捨て、人ならざる者に身を落とすことになってしまった。

 祟り神と化した、かつての臣下であり情人でもあった男に仇なされ、今まさに彼に全てを奪われようとしている。

「……さぁ、どうか俺を求めてください。――様……」

 狂気すら孕んだその囁きに、しかし、元審神者は肉体の最奥を熱くする。たとえ全てを失うことになっても、愛する彼に求められることこそが、哀れな彼女の幸福だった。

 彼に乞われるがまま元審神者は、長谷部の望む言葉を口にする。

「長谷部…… 私を永遠にあなただけのものにして……」

 この瞬間に、言霊によるまじないが完成してしまう。それは彼女の意志では決して破ることのできない、永遠の呪いでもあった。

 真名を呼ばれて求められ、それを了承してしまえば、永久の呪縛が成立すると知っていたのに。元審神者は長谷部の求めに応じてしまった。

 彼女の言葉を聞き届けた長谷部は、満ち足りた淡い笑みを浮かべると、この儀式の最後の仕上げとして、彼女と自分自身とを性の頂点へ導くべく、再び律動を速めていった。





 そしてついに、その瞬間が訪れる。

「あああっ……! 長谷部……!」

 長谷部のものを濡れた秘裂に咥えこんだまま、元審神者は悦楽の頂点を極めてしまう。彼女の秘唇はひと息に収縮し、充血しきった長谷部自身を、ぎゅうぎゅうときつく締めあげる。

「っ……! は……」

 彼女の肉体に促されるまま、まるで搾り取られるように、長谷部は自分自身の全てを彼女の中に吐き出した。

「っ、主……! ――様……!」

 元審神者を主と呼び間違えながらも、長谷部は続けざまに彼女の真名を口にして、逞しい裸の腕で彼女を強引に掻き抱く。

 ――ついに堕とされてしまった。自分はやがて人ではなくなり、彼の眷属となるのだろう。

 自身の肉体の最奥で長谷部自身が脈打つのを感じながら、元審神者は朦朧とした意識の中でそんなことを思うが、しかし彼女はこれ以上ない幸福に浸っていた。

 情に流されるまま真名を奪われて、四肢の隅々まで長谷部の神気で満たされて、ついに自分は永遠に彼に囚われて生きることになってしまった。

 しかし、長谷部を愛する元審神者にとっては、それこそが無上の喜びだった。

 敬愛する人の唯一無二の存在として、永久に共に在ること。それは刀であった時代に主人に捨てられた来歴を持つ長谷部が渇望し、焦がれ続けた願いでもあったが、同時に元審神者たる彼女の切なる望みでもあった。

 愛しい存在との永遠の絆を追い求めてしまうのは、神であろうと人であろうと、きっと同じだ。誰かを愛する心があれば、きっと誰もが願ってしまう。たとえそれが、決して叶わぬ夢まぼろしであろうとも。
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