◆刀剣・刀さにNL小説◆

□【長谷部】姫縛り〜主従逆転奉仕〜
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 湯上りの二人は室内着代わりの単衣姿で、寝台の上にいた。

「――お召し物を脱いで頂けますか」

「……っ」

 容赦のない主命に息を呑みつつも、元審神者は長谷部に命じられるまま着物の帯を解いてゆく。

 すぐに行為を始めるつもりで、下着は身に着けていなかった。単衣の袖から腕を抜き肩から落としてしまったら、一糸まとわぬ姿になってしまう。羞恥に躊躇う元審神者の指先は、帯を解き終えたところで止まってしまった。

 彼に素肌を晒したことくらいもう何度もあるはずなのに、今回の情交が特別なもののせいか、なかなかその先に進めない。

「……ご自分で出来ないのであれば、お手伝い致しましょうか?」

 しばらくの躊躇ののちに、しびれを切らした長谷部にそう急かされて、ようやく元審神者は、その身に纏う着物を肩から落とす。

 真名を盗られた今となっては、元より長谷部の命に逆らうことなどできない。そうであれば、無理やり脱がされるよりも、自分で脱いだ方がましだった。薄暗い室内で、彼女の裸身がついに晒される。

 まだ日の高い時間で、部屋の明かりを点けずとも室内の全ては見通せた。それは元審神者の裸体も例外ではない。豊かな胸の色づいた突端に、女らしくすっきりとくびれた腰部、脚の間の秘裂を隠す薄い下生えも全て、長谷部には見えているはずだ。

 長谷部は元審神者たる彼女の無垢な裸身を存分に堪能し、満足げな笑みを浮かべると、まるで挑発するかのように、卑しい欲望を口にする。

「……やはりお美しいですね。そのお姿をずっと眺めていたい」

「……っ!」

 いかにそういう関係にあるとはいえ、男性に裸を鑑賞されるのは恥ずかしく、元審神者の頬に鮮やかな朱が走る。

 剥き出しの両胸も脚の付け根の下生えも、本当は両手で隠してしまいたいのに、今そんなことをすれば長谷部の不興を買いそうで、元審神者は両腕を体の横に下ろしたまま、長谷部の無遠慮な視線に、ただひたすら耐えていた。

 恥ずかしくて仕方がない。けれど、愛しい長谷部の視線を感じるたびに、元審神者の裸身の最奥はどうしようもなく甘く疼いた。まだ触れられてもいないのに、その場所が熱を持ち、潤ってゆくのがわかる。

 元審神者の女の肉体は驚くほどに快楽に従順だった。長谷部の視線の愛撫に応え、乳房の突端は硬さを増し、ぷっくりとたちあがってゆく。

 このような分かりやすい反応を長谷部が見逃すはずがない。自らの肉体のあまりの浅ましさに、いたたまれなくなった元審神者は長い睫毛を伏せるが、生理的な身体の反応を意志で制御できるはずもなく。長谷部の視線での愛撫によって自分自身の肉体が淫らに花開いてゆくのを、元審神者たる彼女は止めることができずにいた。

 限界まで固くしこった両胸の先端はもうむず痒いほどで、脚の間の秘裂も内腿を汚してしまうほどに愛液を溢れさせ、長谷部の侵襲を今か今かと待ちわびている。

 今は脚を閉じているから秘唇の様子は知られていないけど、この様子では触れられたときに彼を喜ばせてしまうことは明らかだった。

 ほんの数分ほど視姦されただけで、こんなにも見事な反応を示してしまう己の肉体を、元審神者は恨めしく思うが、そんな彼女とは裏腹に長谷部は上機嫌だった。

「……こんなにも麗しいあなたを俺だけのものにできるのが、嬉しくてたまりません」

 恍惚に浸った表情で一糸まとわぬ姿の彼女を称える長谷部に、審神者はますます戸惑うが、長谷部は容赦なく彼女を追い詰める。

「……両手を出してください」

 元審神者は長谷部に言われるがまま両手を差し出す。彼に真名を奪われた以上は彼の命令は絶対だ。しかし元より、元審神者は長谷部に逆らうつもりなどなかった。愛しい彼が望むことなら、何でも叶えてやりたかった。

 長谷部はどこからか金色の組紐を取り出すと、あまりにも自然に、彼女の両手首にそれを掛け、縛り上げた。

 若干の遊びを残しつつも、自力では外せないほどにしっかりと縄を掛けられ、元審神者は怯えを見せる。

 元々は平和な現世で暮らしていた清らかな女性だ。手首を縛られるなど初めてで、相手が愛しい長谷部だとしても、元審神者たる彼女はやはり恐れを抱いてしまう。伏せた瞳を不安に泳がせ、長い睫毛を瞬かせる。

「……怖がることはありませんよ。普段通りに、楽にしていてください」

「でも……」

 長谷部は湯上りに着た単衣を着たままなのに、女の自分だけが裸で、しかも両手首を縛められているという異様な状況で、平静でいられるはずもない。

 その上、これから自分たちが行おうとしているのはただの交合ではない。長谷部に身も心も捧げて、元審神者たる彼女が人ならざる彼の眷属となる儀式としての交わりだ。

「大丈夫ですよ。恐れることはありません。あなたは俺のただ一人の愛しいお方だ。何も心配せずに、俺に全てを委ねて下さい……」

 うっとりと謳うようにつぶやく長谷部に、しかし元審神者は不安を消せず、それどころかさらなる恐怖を覚えてしまう。

 しかし、長谷部の囁きは不思議な祝詞のようでもあり、あるいはまじないのようでもあり。元審神者は操られるかのように、こくりと頷いてしまう。

「はい……」

 滑り出たのは了承の言葉だ。古来より言霊信仰があるように、言葉には力がある。自らの真名を奪った付喪神とのやりとりには、拘束力が生まれる。元審神者は自身の発した言霊により、自分自身をさらなる窮地に追い込んでしまう。

 それを知る長谷部は口の端を上げて笑うと、再び別の紐を取り出し、彼女の裸の胴に掛けてゆく。ところどころ柔らかな肉に紐が食い込むように加減しながら、長谷部は元審神者たる彼女の裸身がより美しく淫らに見えるよう、その全身に縄化粧を施した。

 いわゆる菱縄縛りだ。元審神者の豊かな胸がさらに強調されて突き出るように、両の乳房の上下にはしっかりと縄が渡され、その喉元から下腹部にかけても、幾つもの多角形が網目のように美しく並ぶ。しかしこれは手首以外の拘束はないに等しい飾り縄だ。

 拘束を目的としない、女性の無垢な裸体をより淫猥に彩るための華やかな緊縛だったが、この縄掛けにはもうひとつ重要な意味があった。

 元々何かを結ぶという行為は、万葉の昔から縁や絆の象徴だった。長谷部は人である元審神者を、自らが愛用する金の組紐で縛り上げ、交合により彼女の肉体に注ぎ込まれる自身の神気が、彼女の身体の外に逃げぬよう、強固な結界を作り出した。

 この状態で、長谷部の神気が彼女の四肢の隅々に満ちるまで交合を続ければ、長谷部は彼女を自らの眷属とすることができる。

 長谷部は元審神者への縄掛けを終えると、余った紐を使い、武装姿の彼がいつも胸の前でしている、吉祥結びにも似た飾り結びを作った。

 吉祥結びにも長谷部のあの飾り結びにも、永遠を象徴する結びが隠されており、長谷部の健気な願いを感じ取った元審神者は、その瞳を潤ませた。

「長谷部……」

「……お美しいですよ。もう終わりますから、あと少し我慢してくださいね」

 寝台の上に座したまま、緊張に身体を強張らせている彼女をそう宥めて、長谷部は彼女を仰向けに寝かせた。そして改めて一本の紐を取り出す。

 それもまた金の組紐だった。けれどそれには、いくつもの大粒のトンボ玉が通されており、まるで首飾りのようにも見える。その紐を手にし、長谷部は藤色の瞳を細めて淡く微笑むと。

「……ここも、縛めておきましょうか」

 なんと長谷部は元審神者の脚の間に、首飾りのようなその紐を潜らせて、きつく結い上げてしまった。まるで下帯を締めるかのように、彼女の陰部に紐を食い込ませてしまう。

「っ……!」

 女性の秘所に縄を張ることによりその場所に刺激を与える、股縄と呼ばれている緊縛法だ。この縄掛けをされた女性は途端に従順になってしまうため、姫縛りや姫縄とも呼ばれている。

 そして元審神者たる彼女も例外なく、頬を真っ赤に染めてすっかり大人しくなってしまった。先ほどまではことあるごとにごねていたのに、すっかり抗う気力を削がれてしまったのか、今は黙ったまま恥ずかしそうに瞳を伏せている。

 長谷部はそんな彼女を改めて見下ろした。愛おしい女性が、美しい裸身に淫らな縄化粧を施されて、その秘部にまでいくつものガラス玉を通されたいやらしい紐を張られて、まるで供物のように自分の眼前に捧げ置かれている。

 この人をこれから自分の気が済むまで好きにできるのかと思うと、それだけで長谷部の下腹部は興奮に怒張した。

「……これで完成ですよ。やはりあなたはお綺麗だ」

「っ、見ないでください……」

 両脚を固く閉じて、羞恥に泣きそうになりながら、元審神者は長谷部に哀願するが、もちろん彼は取り合わない。

「……これまで見たどんな責め絵よりそそられます」

「っ……!」

「かわいらしくて、淫らで、――ひどいことをしたくなる」

 まるで性感を煽るように、縄化粧を施された裸身を褒めてくる長谷部に、元審神者はいたたまれなくなり瞳を逸らす。

 あまりにも恥ずかしく、せめてガラス玉を咥えて呑み込んでしまいそうになっている秘唇の様子だけでも隠そうと、元審神者たる彼女は図らずも内股を擦り合わせるような仕草をしてしまう。

しかし、それにより元々きつく張られていた姫縄が、女の秘所にさらに食い込み、縄に通されたいくつものトンボ玉が、恥ずべき割れ目の内側に入り込んでしまった。

「あっ……!」

 反射的に、元審神者はガラス玉から逃れようと腰をくねらすが、むしろ逆効果だった。

 彼女が腰を揺らすたびに、いくつものトンボ玉が彼女の秘唇の内側を転がり、ひんやりとしたガラスの宝珠による刺激が、彼女の最も柔らかな部分に次々と襲い掛かる。

「ああっ……!」

 固いガラスの冷たく滑らかな感触は、興奮に熱く濡れた粘膜にはあまりにも心地よかった。

 彼女は思わず甘やかなため息を漏らし、長谷部に見られているというのに、さらに大胆に内股を擦り合わせてしまう。

 こりこりとした異物によるたまらない刺激に、長谷部の存在も忘れ、元審神者はさらなる快楽を求め、内股を擦り合わせながら、腰を左右に揺すり始めた。

「はぁ……っ、んっ……」

 彼女がその身を揺らせば揺らすほど、淫らな縄と宝珠は彼女の秘所にさらなる快楽を与え、その場所のより奥深くに食い込む。

 下の口に異物を含ませる快楽の虜となった元審神者は、自分自身をさらに追い立てるべく、眼前に長谷部がいるというのに、たった一人で淫らな遊びに興じ始めた。

 まだ、縄を掛けられただけで、その裸体を愛撫されたわけでもないのに、自ら発情しはじめた元審神者を見おろしながら、長谷部は喉を鳴らして苦笑する。

「……いやらしい方だ」

 自分一人だけ興奮し、いやらしく身悶えている姿を、長谷部に見られているというのに。夢中で快楽を追っている元審神者は気がつかない。ただ、淫らな喘ぎを漏らしながら、自分自身を慰めることに没頭していた。

 彼女が腰をくねらせ、内股を擦り合わせるたびに、いくつもの大粒のガラス玉が秘唇の内側を自在に転がり、金色の姫縄もまるで褒美を与えるように、彼女の秘裂を巧みに擦りあげ、元審神者をさらなる悦楽の深みに引きずりこんでゆく。

 女体の最も秘すべき場所を、異物を使って慰めるなんて初めてだった。固く冷たいガラス玉や紐による秘唇への刺激は、今まで経験したことのない快楽を、元審神者たる彼女の肉体にもたらした。

 女の大切な部分を、このような淫らな道具を使って慰撫する大胆な性の営為は、元審神者にこれ以上ないほどの、背徳と被虐の興奮を与えていた。

 自らの陰部を玩具で弄ぶ愉しみに、元審神者は目覚めてゆく。ぴんと張った縄を食い込ませた彼女の秘裂からは、淫らな蜜が溢れ、内股や敷布をたっぷりと濡らし汚していた。

 そんな彼女を見おろして、長谷部は嬉しそうにつぶやく。

「……お気に召して頂けたようですね」

「っ……! 長谷部……!」

 彼のつぶやきにようやく我に返った元審神者は、これまでの自分のあまりにも大胆で浅ましい振る舞いを思い出し、消え入りたいほどの羞恥に頬を赤くする。

 ずっと秘唇に食い込む紐とガラス玉に気を取られて、長谷部が意識の外だった。元審神者は改めて、長谷部を見上げた。

 かつては一番の臣下で、今は自らの主人たる長谷部。自身の情人であることは、今までもこれからも変わりないけど、どうしてだろう、今の長谷部は元審神者が見たことのないような、なんとも形容しがたい薄い笑みを浮かべている。
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