◆刀剣・刀さにNL小説◆

□【長谷部】渇望と崇拝の口づけ
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「もう少し、慣らしておきましょうか」

「あ……っ」

 割れ目の表面を指先で優しくなぞられて、審神者は甘い喘ぎを漏らす。既に充分潤っていた肉色の粘膜は、ひくひくとはしたなく震えながら、長谷部の侵入を待っていた。

 そんなところに直接触れられてしまったら、審神者はひときわ甲高い悲鳴を上げるほかない。

 一糸まとわぬ身体で大きく脚を広げて、長谷部の眼前で自分自身の全てをさらけ出しながら、もうたまらないとばかりに、審神者は甘く身悶えた。

 そんな彼女を見おろしながら、長谷部は唇の端を上げて笑うと、彼は審神者の潤んだ秘裂に、きっちりと揃えた長い指を差し入れた。そのままゆっくりと沈めていく。

「あっ…… んんっ……」

 ようやく彼女のその場所に、欠落を埋めるものが与えられる。審神者は歓喜の表情を浮かべると、白い喉を反らして心地よさそうに喘いだ。

 長谷部は男の指を下の口でくわえ込みうっとりと身もだえる審神者を見おろしながら、彼女のその場所の準備をさらに整えてやるべく、そこに入れた指をゆっくりと大きく動かし始めた。

 長谷部の指の動きに合わせて、彼女のそこからはとめどなく蜜が溢れ、くちゅくちゅと卑猥な水音を立てる。

「も…… 長谷部……っ」

 もうたまらないとばかりに、審神者は困ったような声を上げ、彼を見上げてくる。

 そうやって長谷部にすがって甘えるのは、あまりにも心地よいときの彼女の癖だ。自らの主が性の頂点を迎える寸前であることを察した長谷部は、彼女をしっかりと導いてやるべく、審神者のそこにさらなる愛撫を加えてゆく。

 彼女の秘裂に入れた指を動かすのはそのままに、その突端に位置する小さな突起の包皮を剥いた。そのまま、長谷部はその場所を指の腹で可愛がり始める。

 そこは彼女が最も感じてしまう場所だった。審神者は脚を大きく広げたまま、切なげに身悶える。

「やっ…… だめぇ……」

 ダメと口にしてはいるものの。大きく広げた脚を閉じようともせず、長谷部に甘く媚びながら、ゆるく頭を左右に振る彼女は、「もっと」とせがんでいるようにしか見えない。

 口では恥じらいながらも、白い裸身をくねらせながら、男の昂ぶりをあさましく求める自らの主人に長谷部は表情を緩めると、そんな彼女に優しく命じた。

「……まだ行けますよ。力を抜いてください」

「も、や……っ」

「……全て俺にお任せください、主。力を抜いて」

 いやいやと口にしながらも、しかし審神者は長谷部に命じられるまま、深く息を吐き、その華奢な肉体から余計な力を抜いてゆく。

 初心なふりをしながらも、審神者はもう何度も長谷部の手によって性の頂点を極めていた。勘所はすでに抑えている。彼女は恥じらいながらも、長谷部に見つめられながら自らの肉体の準備を整えていった。

 そして、審神者の身体が柔らかく緩んだ瞬間を見計らい、長谷部は審神者の淫らな突起にひときわ強い愛撫を加える。

 無防備になったそこへの刺激は、いとも簡単に彼女を興奮の頂へと押し上げた。



***



 甘やかな悲鳴を上げながら、審神者はびくびくと身体を痙攣させる。今宵も、いともたやすく導かれてしまった。

 自らの近侍たる長谷部に見つめられながら、性の頂点を極めてしまった審神者は、はしたない自分を恥ずかしく思いながらも、長谷部の手によって、自分がこの上もなく淫らな身体に作り替えられてしまったことを喜んだ。

 自分の無垢さや清らかさの全てを愛する彼に奪って貰えたのなら、それは彼女にとって本望だった。

 今の審神者にとっては、長谷部に尽くされて求められ、そして彼に奪われることこそが、何よりの幸福だったのだ。

 惚けた瞳で荒い息を吐く審神者を、長谷部は満足げな笑みを浮かべて見おろす。結果を出すのは当然とばかりの不遜な笑みに、審神者の胸の鼓動が跳ねる。長谷部のあの表情は、どうしようもないほどに彼女の理性を弱らせる。

 審神者に対してはたとえ愛の営みのさなかであっても、慇懃でへりくだった態度を崩さないくせに、その丁寧な物腰からときおり覗かせるプライドの高さと尊大さこそが、長谷部の魅力であり色気だった。

 普段はあれほどまでに忠実な下僕を気取る彼が垣間見せる傲慢さは日頃の振る舞いとの落差で、たまらなく色っぽく男らしく見える。その差異に、審神者はどうしようもないほど、心を掴まれてしまっていた。



 審神者の達したばかりの無垢な肉体に、長谷部は改めて優しく触れた。骨ばった大きな手のひらを彼女の身体に這わせながら、その女らしい曲線をどこまでも辿ってゆく。

 性の頂点を迎えたばかりの審神者の肉体はどこもかしこも鋭敏で、彼女は長谷部に撫でられながら、まるで美しい白魚が跳ねるように、無垢な裸身をびくびくと素直に反応させていた。

 あまりにも無防備な主人を、愛おしげに見おろしながら長谷部はうっとりとつぶやいた。

「……かわいい方だ」

 しかし、長谷部はあまりにも淫らで愛くるしい彼女に、何かの危機感でも覚えたのか、自分に裸体を撫でられながら、蕩けるような笑みを浮かべる審神者に釘を刺す。

「このようなお姿は、俺以外の男に見せてはいけませんよ」

「も…… 見せません……」

 長谷部がいるのに他の男となんてありえない。貞操観念を疑われたように感じた審神者は憤るが、長谷部は切れ長の瞳を眇めて彼女を嘲るように笑うと、言葉に棘をにじませて吐き捨てる。

「さてね…… あなたにその気がなくとも、あなたを狙う男は大勢おりますからね」

 もちろんこの本丸にもね、と平然と続けられ、審神者は驚きに息を呑む。

「っ」

 長谷部の皮肉めいた、嘲るような薄い笑み。どこか残酷さすら感じさせるあの表情に、嫉妬深く独占欲の強い彼の本性と自分への想いの強さを垣間見て、審神者の背筋を歓喜の震えが駆け抜ける。愛しい彼にこんなにも想われて、執着されていることが嬉しい。



 審神者は長谷部を見上げたまま、不安定になりがちな彼を宥めるように囁いた。

「私には長谷部だけです…… あなただけを……」

 愛していると、そう口にすることで彼を安心させてやりたかった。刀剣とその主人という間柄ながら、こんなふうに抱き合って男女の契りを結ぶのは、後にも先にもきっと彼とだけだ。審神者たる彼女にはそんな不思議な確信があった。

 そんな審神者の真摯さにようやく安堵したのか、長谷部は口元を緩めると柔らかな笑みを浮かべた。

 先ほどの彼女を嘲るような笑みとは違う、穏やかなその笑顔は、俺もあなたを愛していますとその美しい藤の瞳で彼女に伝えているかのようだった。

 そして、ついに。一糸纏わぬ審神者の身体に、長谷部が覆いかぶさってくる。ようやくそのときが訪れる。興奮と期待に審神者は秘裂をさらに潤した。

 充血しきって、固く反り返った長谷部のものが、審神者のその場所の奥にある小さな入口を、先走りのにじんだ先端で探す。

「あ……っ」

 審神者が歓喜のにじんだ声を上げる。ついに長谷部に入り口を探し当てられたのだ。

「っ……!」

 間を置かず始まった長谷部の侵襲に、審神者は苦しげに眉を寄せる。もう何度も経験しているものの、圧倒的な質量と体積に身体が押し広げられてゆく圧迫感は凄まじく、審神者は夢中で息を吐き、挿入の痛みから気を散らす。

 充血しきった彼のものを沈められてゆくこのときは、やはり苦しく感じてしまうけど、愛する長谷部の全てをこの身体で受け止めて、彼とひとつになるこの瞬間は、審神者にとってこの上ない幸福でもあった。

 この痛みや苦しみも含めて、彼の全てを受け入れてあげたい。その胸に抱える癒えぬ傷も、根深い劣等感も、常に高潔であろうとするプライドも、全て。

 やがて、長谷部に自分自身の最奥まで貫かれ、今宵もまた彼に肉体の全てを侵された審神者は、再び喉を反らして喘いだ。

「ああ……っ」

 まだ挿入の痛みが残っているのか、彼女は形のいい眉を切なげに寄せていた。長谷部は繋がりあったまま、まるで彼女を労わるように、審神者の頬や首筋に、触れるだけのキスを落としてゆく。

「っ…… ん……」

 しばらくたって、彼女が落ち着いてきた頃を見計らい。審神者の頬に張りついている髪をよけてやりながら、長谷部は彼女に囁きかける。

「……どうです?」

「ん、平気……」



 審神者の返答は意外なほどにしっかりとしたものだった。彼女の身体から痛みが引いたことを察し、長谷部は柔らかく微笑んだ。

「……そうですか」

 そう口にして、長谷部は審神者の膝裏に手を入れて、そのまま彼女の両脚を大きく開かせて、敷布に押しつけた。

 女性に負担がかかる姿勢だが、それは長谷部が交合の際に最も好む体位だった。

 審神者の表情も乳房も長谷部を受け入れている秘裂も、その全てが見渡せて、それでいて長谷部のものを彼女の最奥まで差し入れられる姿勢。

 淫らな体位を長谷部に無理に取らされて、審神者は興奮に呼吸を荒くする。

いよいよこれから始まるのだ。一糸まとわぬ無垢な身体で抱き合いながら、二人同時に性感の頂点を目指してゆく。

 審神者は長谷部のものを受け入れている秘裂をさらに熱く潤して、彼自身をきゅうきゅうと締めつけた。

 固くなった男のものを秘裂に入れられて、このような淫らな体位を取らされて喜んでいる浅ましい自分。それはきっと長谷部にも伝わっている。

 しかし、長谷部は口の端を上げて薄く笑うと。

「――それでは手加減はいたしませんよ」

 鼓膜を震わせる囁きに、審神者は甘い眩暈を覚える。





 当初は緩やかだった抜き差しはすぐに早くなり、審神者は長谷部の裸の背に腕を回しながら、じんわりとした快感に酔いしれていた。

 長谷部が好きだ。日頃の鍛錬ですっきりと引き締まった肉体も、冷たさを感じさせるほどに整った顔立ちも、全てが彼の愛すべき美点だ。

 しかし審神者にとって長谷部の一番の魅力は、仄暗い闇を抱えた内面だった。情緒のバランスを欠いた彼が、ときおり見せる捨てられた子犬のような瞳や、従順を装いながらも、いつ自分に牙を剥くかわからないその高慢な危うさに、審神者はどうしようもなく魅せられていた。

 心に傷を抱えた長谷部に鬱屈した情念を向けられるたびに、審神者たる彼女もまた仄暗い優越感と高揚感を覚えていた。

 誰かに切実に求められることが、誰かの生殺与奪の権を握ることが、あれほどまでに甘美な陶酔と満足感とをもたらしてくれるなんて知らなかった。

 長谷部の愛はまるで阿片だ。けれど、今更それに気がついてももう遅い。すっかり蝕まれてしまった今となっては、自分はもう長谷部なしでは生きていけなくなっていた。





 まるで藤の花が飾られた黄金の檻だ。それに囚われている自分はさながら、籠の鳥か虫篭の蝶といったところなのだろう。金色の美しい鎖で柔らかに縛められて、その自由を奪われている。

 けれど愛しい彼になら、風切羽を切り落とされて、小さな胸を潰されて、艶やかな鱗粉をまとった羽根に鋭い針を打たれても、審神者は構わないと思っていた。

 長谷部は自分の肉体のすべてを支配して、自分は彼の心のすべてを支配する。この共依存にも似た関係の行きつく先が悲劇でも、長谷部と一緒なら幸せだ。

 何があっても離れない。離れられない……。

「……っは、主……」

 長谷部にきつく抱かれながら、審神者はその身体の内側に、彼の精を注ぎ込まれる。

 もう何度目かの悦楽の頂点を迎えながら、愛する長谷部の腕の中で審神者は意識を手放した。



***






 それから、どれほど経ったのだろうか。眠っていた審神者は、室内の物音と人の気配に目を覚ました。

 時刻は既に明け方だった。ぴったりと閉められた障子の向こうは薄明るく、日が昇っていることが察せられた。

 昨夜は一緒に眠ったと思ったはずが、自分の隣に長谷部はいなかった。審神者は寂しく思いながらも、布団から身体を起こし、あたりを見回した。

 愛しい姿は鏡台のほど近くにあった。もうずっと早くに起きていたのか、長谷部は既にカソックや武具を身に纏い、今はちょうど白手袋をはめているところだった。

 その端正な横顔に昨夜の彼との交合を思い出し、審神者は淡く頬を染める。けれど、そうこうしているうちに。

「……すみません。起こしてしまいましたね」

 長谷部に気づかれてしまった。さすがは刀剣の付喪神だ。たとえここが戦場でなくとも、自分に向けられた視線や気配はすぐに察知する。

「……長谷部」

 まだ起きたばかりの、しどけなく乱れた姿で彼を呼ぶ審神者に、長谷部は柔らかな笑みをこぼす。

「……もう少しご一緒したかったのですが、あいにく燭台切光忠と早朝稽古の約束をしておりましたので」

「そうだったの……」

 審神者は肩を落とす。仕方がないこととはいえ、愛する彼ともう少し一緒に過ごしたかった。

 けれど。あまりにもわかりやすくしょげる審神者に、長谷部は表情を緩めて呼気だけで笑う。

「っ…… ははっ」
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