◆刀剣・刀さにNL小説◆

□【長谷部】渇望と崇拝の口づけ
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 そんな彼に向かって、審神者は無言で両腕を伸ばす。彼女が何も口にせずとも。長谷部は審神者の願いをすぐに察して、一糸纏わぬ彼女を抱き起してやる。

 審神者は満ち足りた様子で淡く微笑むと、無垢な身体で半裸の長谷部に抱きついた。長谷部も彼女の裸の背に腕を回し、二人は座したままじっと抱き合う。

 長谷部の厚い胸板に、審神者の豊かな乳房が形が変わるほどに押しつけられて。やがて呼吸が苦しくなったのか、あるいは興奮のためなのか、審神者は熱く荒い息を吐く。

 彼女は長谷部の胸に自身の乳房を押しつけたまま、彼の耳元で何事かを囁きかけた。先ほど彼に尋ねられたことだ。どのようにして愛されたいか。

 彼に求められるまま、自分の肉体が欲するままに、ため息混じりで彼女が口にした願いは、あまりにも浅ましいものだった。しかしそれに満足したのか、長谷部は表情を緩めて吐息のみで短く笑う。

 愛する主人に求められることは、長谷部にとっては何にも代えがたい喜びだ。それは夜伽のさなかでも変わらない。

 長谷部は薄い笑みを浮かべたまま、審神者をその片腕に抱いて自ら敷布に倒れこむ。

 彼女を押し倒すのではなく、彼女の身体が自分の上にくるように、長谷部は座した姿勢から、自身の背が敷布につくようにして横たわった。

「……さぁ、始めてください」

 ズボンの前を寛がせ、自らの屹立した猛りを取り出して長谷部は審神者を促した。彼女はこくりと頷いて、彼のそれを愛撫するべく自ら体の位置を変える。



***



 仰向けになった長谷部の上に覆いかぶさった審神者はただ一心に、固く反り返った彼自身を口いっぱいに頬張っていた。寝そべる彼の下腹部に自身の頭部がくるようにして、恍惚に浸った様子で口淫に耽っている。

 すでに二人とも一糸まとわぬ姿で、長谷部と審神者を隔てるものは何もなかった。

「はあっ…… ん……」

 充血し、固くたちあがった彼のものを深くまで咥え込むたびに、審神者の瞳はうっとりと潤む。

 自分の下に横たわる長谷部に、脚の間の秘裂を舐めあげられながらの口淫だ。上下の口を同時に長谷部に満たされて、審神者は肉体の充足と被虐の興奮がないまぜになった、淫らな幸福の虜となっていた。

 すっかり感じ入ってしまい、自ら抜け出すことができないほどに耽溺している。

 審神者と長谷部が興じていたのは、四十八手でいうところの二つ巴だった。長谷部もまた興奮に瞳を眇め、自分自身をよりいっそう硬くしながら、口元に押しつけられた彼女の剥き出しの秘裂に、丹念に舌を這わせていた。

 肉色の花弁のような陰唇を押し開き、潤んだ裂け目を舐めてやりながら、長谷部は彼女の秘裂の上端にある突起を、丁寧に指先で刺激する。

 やはりそこは深く感じてしまう場所なのか、下肢の突起に触れられるたびに、審神者は長谷部の猛りから口を離して悶えてしまう。

 熱を帯びた甘い喘ぎを漏らしながら切なげに眉を寄せ、審神者は先ほどまで自分自身が口にしていた、長谷部の肉体の昂ぶりを見つめた。

 本当は愛しい彼のものをずっと口にしていたいのに、自分自身の秘裂への愛撫があまりにも心地よくて、口を離してしまったのだ。彼の大切なものに歯を当ててしまいたくはない。

「っ…… 長谷部……」

 彼の昂ぶりへの愛撫を邪魔された憤りからなのか、あるいは自身の秘裂への愛撫の心地よさのためか。

 審神者は非難めいた声を上げると、熱い息を漏らし、長谷部の下腹部に顔を埋めた。彼の反り返った猛りに頬を摺り寄せて、瞳を閉じて甘く悶える。

 そんな審神者の様子に長谷部は満足げに笑うと、彼女の裂け目への愛撫の合間に、密やかに囁きかけた。

「……そのままでいいですよ。そのまま、感じていてください」

 けれど、そのときに。長谷部のため息のような呼気が、審神者の濡れた秘裂に当たってしまう。彼女は切なげな声を上げ、真っ白な裸身を跳ねさせる。

「ああっ……」

 たしかな熱と湿度を孕んだ風のような刺激がたまらない。艶やかな低い長谷部の声にも、どうしようもなく感じてしまう。

「……可愛いですよ。そのまま、あなたは俺に愛されていればいいんです」

 そこまで口にしてから、改めて。

「ね……?」

 長谷部は審神者の濡れたその場所に、ふっと息を吹きかける。

「やっ……!」

 審神者はひときわ甘い喘ぎを漏らし、まるで一匹の魚のように大きく身体を跳ねさせる。

 長谷部の裸の肉体の上にうつ伏せで寝そべっているから、審神者の身体の反応はたとえどんなに小さなものでも、彼に伝わってしまうのに。

 そんな中で、これ以上ないほど素直で分かりやすい反応を示してしまい、審神者の頬にさっと朱がさす。

 薄明りの中、長谷部に自身の秘部の全てを暴かれて確かめられている羞恥を、審神者は改めて感じてしまう。

 潤んだ裂け目をしっかりと広げられて、覗きこまれて、好きに弄られて。そして愛撫に感じている身体の反応すらも、つぶさに知られてしまうなんて。

 けれどそれは同時に、被虐の興奮にも似た心地よさを彼女の肉体にもたらしていた。

「も、そんなことしないで……」

 審神者は長谷部に哀願するが、今まさに愛されている裂け目をしとどに濡らしながらでは説得力はなく、むしろその姿はさらなる愛撫をねだっているようにしか見えなかった。長谷部は喉を鳴らして笑う。

「……主は実にお可愛らしい」

 どこか彼女を嘲るような声色と、否定も肯定もせず話をそらすその様に、審神者は長谷部にやめるつもりがないことを感じ取る。

 長い睫毛を伏せて、審神者は熱く甘い息を吐く。長谷部の瞳が楽しげに細められる様を瞼の裏に描きながら、審神者は自身の無垢な裸身を長谷部へと差し出した。

 彼の手によって自身の秘部へもたらされる快楽にのみ意識を集め、性の頂点へと上り詰めるべく、その裸の身体から余計な力を抜いてゆく。

 審神者の身体が柔らかく緩み切ったことを確かめて、長谷部は彼女の細い腰を掴んで、改めてその濡れた秘裂を自身の口元に引き寄せた。潤ったその場所を長谷部に再び舐めあげられて、審神者は歓喜の声を上げる。

 今宵もまた彼の渇きが癒えるまで、この身体を貪られ、じっくりといたぶられるのだ。

 長谷部に嬲られ翻弄される興奮と期待に、審神者の背筋をぞくりとした震えが駆け抜ける。

 彼女のその場所に長谷部の指が差し入れられ、ぐちゅりと淫らな水音を立てた。



***



「はぁっ…… んんっ……」

 二つ巴の体位のまま、配下たる長谷部に自らの性器を愛されながら、審神者は夢中で一糸まとわぬ自らの肉体を反応させる。

 先ほどからずっと、審神者は自分自身のその場所を、長谷部の好きにされていた。

 逃れたくとも、審神者の細い腰は彼にしっかりと掴まれており、それもできない。もっとも今の彼女に、長谷部の愛撫から逃れたい気持ちなどなかったが。

「あっ…… 長谷部……っ」

 むしろ彼女は喜んで彼の奉仕を受け入れ、さらなる愛撫を求めていた。

 もう少しで性の頂点を極めることができるのだ。審神者は無我夢中といった様子で、彼の口元に濡れた秘裂を押し付けて、白い身体を仰け反らせていた。

 本能のままにその場所へのさらなるを刺激を欲しがりながら、ただ一人悦楽の頂点を迎えるべく、長谷部の名を呼び喘ぐ審神者はあまりにも淫らで、その姿はまるで美しい獣のようだった。

 しかし長谷部は、今まさに上り詰めようとしている彼女への愛撫を、寸前でやめてしまう。

「……え?」

 泣きそうな瞳で戸惑う審神者を、長谷部は自分の身体の上からおろし、敷布の上に仰向けで寝かせた。間を置かず、そのまま彼女に覆いかぶさる。

 先ほどとは違い、今度はお互いに見つめ合える向きで、長谷部は審神者と身体を重ねた。

「……っ、長谷部」

 物欲しそうに自分を見上げてくる審神者に、長谷部は薄い笑みを浮かべる。審神者の潤んだ瞳は、自身の秘裂に今すぐ彼の猛りを差し入れて欲しいと告げていた。

 しかし、長谷部は自らの主のたっての願いを一蹴する。

「――まだですよ」

「ッ!」

 驚きに呼吸を詰める審神者を尻目に、長谷部はおもむろに膝立ちになると、敷布に寝そべる彼女の片足を高く上げさせた。

「……!」

 これから長谷部が何をしようとしているかに気が付いて、審神者はひときわ甘い息を吐き、桜色の唇を震わせる。彼女の長い睫毛がゆっくりと上下に動かされ、その頬にもう何度目かの朱がさした。



 つま先への口づけは崇拝で、甲への口づけは隷属だ。長谷部は審神者の白い足先に、丁寧に口づけを落としてゆく。つま先から順に付け根に向かって、唇を這わせ、舌で舐め、愛おしげに頬をすり寄せる。

 薄明かりの中で長谷部はこれみよがしに、彼女の足を愛撫していた。

 陶酔に浸ったその横顔はまさに、恋しい女性にかしずいて、彼女を崇めることを何よりの喜びとする、被虐趣味の男そのものだ。

 自らの忠誠心をことさらに見せつけるように、褥での長谷部はときおり、あまりにも倒錯的な振る舞いを見せる。

「っ、長谷部……」

 足への口づけは思った以上に恥ずかしい。秘すべき淫らな場所でもないのにこんなにも羞恥を煽られて、興奮してしまうのは一体どうしてなのだろう。

 行灯の柔らかな明かりの中で、愛おしげに自分のふくらはぎに唇を寄せる長谷部の横顔は、ずっと見つめていたいと思わせるほどに美しい。

 恍惚に細められた藤色の瞳も、伏せられた長い睫毛も、元々の冷たさを感じさせるほどに整った容貌と相まって、いっそ凄艶なほどだった。



 そんな長谷部に自分まで引きずられ、審神者は脚の間の秘裂をさらにはしたなく濡らし、羞恥と興奮に頬を赤く染めながら、浅い呼吸を繰り返していた。

 長谷部の愛撫によって、あまりにも淫らに昂ってしまった審神者の肉体は、彼女本人には如何ともしがたく、審神者は荒い息を吐きながら、苦しいほどの胸の高鳴りを必死に宥めていた。

 きっと、長谷部は全て分かってやっている。倒錯的な振る舞いをあえてしてみせることによって、自分を追い詰めてその反応を楽しんでいるのだ。

 けれど、いかにこれが加虐趣味な彼の策略だと分かっていても、審神者は自分自身の肉体の昂ぶりを抑えることができない。彼の狙い通りに、さらなる高みに押し上げられてしまう。あともう少しで、性の頂点をただ一人極めてしまいそうになっていた。

 ぞくぞくとした震えが審神者の背筋を走り抜け、彼女は形容しがたい心地よさと浮遊感に囚われる。

 彼女の秘裂は長谷部に与えられた興奮に歓喜し、剥き出しのそこから間断なくはしたない蜜を溢れさせ、敷布に染みをつくっていた。

 溶けそうなほどに潤んだ粘膜はてらてらと濡れ光り、ひくひくと震えながら、長谷部自身による侵襲を今か今かと待ちわびていた。

彼に片足を持ち上げられているから、審神者のその場所の在りようは、全て長谷部に見えている。

 聡い彼が審神者の秘裂がそのような状態にあることに、気づかぬはずがない。しかし長谷部は、決して審神者のそこに触れようとはしない。

 堪え切れなくなった審神者は、形のよい唇を薄く開いて、何かをねだるような瞳で、長谷部を見上げた。




 生真面目でストイックな長谷部は、愛の営みすらも求道的だった。通り一遍のことでは飽き足らず、どこまでも快楽を追求する。

 そんな彼から、審神者は数々の艶事の手ほどきを受けていた。先ほどの互いの性器を同時に舐め合う二つ巴もそうだ。あのような愛しあい方があるなんて、長谷部に教わらなければ、彼女はきっと知らないままだった。

 そう。審神者の閨中での振る舞いは、全て長谷部に教えられたものだった。審神者の濡れやすく達しやすい淫らな身体もまた、長谷部の手によって仕込まれたと言ってよかった。

「……っ、長谷部……」

 ついにこらえきれなくなったのか。審神者はいまだに彼女の脚への愛撫を続ける彼を呼ぶが、長谷部は彼女の呼びかけには答えずに、ただひたすらに幸せそうに彼女の肉体を慈しんでいた。

 脛への口づけは服従で、腿へのそれは服従だ。長谷部の口づけは、審神者の脚の付け根に向かってゆっくりと降りてゆく。

「……こんなところまで俺に愛させるなんて、いけない方ですね」

 審神者の太腿に愛おしげに唇を寄せながら、長谷部は彼女をそう責める。

 しかし、彼の瞳は恍惚に細められ、その姿は長谷部が自ら望んで審神者の白い足を愛撫している、まぎれもない証左であった。

「も…… 長谷部……」



 自分の意志でそうしているくせに、まるで審神者のせいのように言われ、彼女は抗議の声を上げるが、そんな彼女もまた嫌がるそぶりを見せつつも、長谷部に抗うことはしていなかった。

 脚を下ろしたりはせずに、長谷部にされるがまま、自分の肉体の全てを彼の好きに弄らせて、もたらされる興奮を享受している。

 長谷部はようやく審神者の脚を下ろしてやると、その瞳を飢えた獣のように爛々と光らせたまま、彼女の脚を大きく広げた。ついに審神者のその場所へと指を伸ばす。
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