◆薄〇鬼NL小説◆
□【現パロ沖千】サンタ千鶴と沖田少年 聖夜の攻防戦
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◆配役
赤いサンタ千鶴 みんなのために頑張る
黒いサンタ薫 悪い子をしばく
プレゼントを届けてもらう子供1沖田 千鶴サンタと不純異性交遊がしたい
トナカイ1近藤 病欠(咳と発熱のため)
トナカイ2土方 近藤の濃厚接触者のため自宅待機(無症状)
トナカイ3斎藤 土方の代理 不純異性交遊は許さない
プレゼントを届けてもらう子供2藤堂 PS5が欲しい
プレゼントを届けてもらう子供3井吹 もらったプレゼントは金に換える
◆Pixiv検索用
沖千 沖田総司 雪村千鶴 薄桜鬼 薄桜鬼SSL
全年齢 コメディ キャラ崩壊 斎藤一 南雲薫
「そこは同意してやるぞ、総司。ミニスカサンタが嫌いな男などいない」
***
日付が変わって今日は十二月二十五日、クリスマス当日。
沖田少年は自室のベッドで寝たふりをしていた。
(千鶴ちゃんまだかな。待ちきれないよ。早くサンタな君と不純異性交遊がしたいよ……。てっきり昨日の夜来てくれるのかと思って、一晩中起きて待ってたんだけど来なかったから、なんかもう僕、寝不足なんだよね。でも今寝たら台無しだから寝ちゃダメだ総司!)
今にも寝そうになる自分を励ましながら、沖田は狸寝入りを続行する。
すると、部屋のドアをそっと開ける音と人の気配がした。
(きたっ、千鶴サンタだ! 待ってたよやっと来てくれた嬉しい! 僕の可愛いサンタさん……)
沖田少年は期待に胸を高鳴らせる。本当は今すぐにでも起きだして可愛いサンタに抱きつきたいけど、獲物……でなくサンタを限界まで引き付けるために、自分を抑えて寝たふりを続行していた。
足音を殺して部屋に入ってきたのは、ミニスカサンタの衣装を着て白のニーハイソックスを履いた千鶴だった。コスプレではなく本物のサンタさんなのだが、衣装が悪いせいかコスプレにしか見えない。
千鶴はベッドで横になっている沖田にそっと近づくと、小脇に抱えていた小さなプレゼントボックスを枕元に置いた。そしてサンタ千鶴は瞳を閉じて寝たふりをしている沖田を見おろすと、頬を染めてはにかんだ笑みを浮かべた。
「よかった。総司先輩、ちゃんと眠ってます……」
そう囁くと、サンタ千鶴はおもむろに沖田のベッドサイドに腰を下ろすと、彼の頬に触れるだけのキスをした。
「えへへ。これくらいなら、いいですよね……」
頬を淡く染めて笑うサンタ千鶴はとても、とても可愛かった。
(ああもう、とって食っちゃいたいよ!)
とうとう我慢できなくなった沖田少年は、ベッドからガバッと起き上がり勢いよくサンタ千鶴に抱きついた。
「千鶴ちゃんっ! やっと来てくれた!」
まるで変質者のようだが、無駄に顔がいいので免罪されている沖田であった。
「きゃっ! 総司先輩!」
可憐な悲鳴を上げる千鶴に、沖田少年は思いのたけをぶちまける。
「待ってたよサンタ千鶴! 昨日の夜から待ってた! 律儀にクリスマス当日になってからくることないのに! クリスマスはイブが本番で当日は後夜祭だよ! 遅くなっちゃったけど、今から一緒に性夜を楽しもうよ! 十月生まれの子供を僕が仕込んであげる!」
「ちょっ! やめてください総司先輩! 何言ってるんですか! 私にはまだ大事な仕事があるんです! 子供たちにプレゼントを届けに行かなきゃいけないんです! みんな楽しみに待ってるんです!」
「嫌だ! ダメだよ! 僕以外の子に配達になんて行かなくていいよサンタ千鶴! プレゼント届けるだけなら誰がやったって一緒でしょ! そんな仕事、一緒に来てるトナカイにでもやらせればいいじゃない!」
「な、なんてこと言うんですか! 私はこの仕事に誇りを持っているんです! プレゼントは私がちゃんと責任持ってお届けします! 平助君にはPS5、井吹君には何でもいいから金になるものをちゃんと届けなきゃいけないんです!」
「ねぇちょっと最後の何? 君、井吹君に何あげるつもりなの? 聞き捨てならないんだけど!!」
「そっ、それは……」
「井吹君のプレゼントなんて無しでいいでしょ。そんなのお願いするなんて悪い子だよ。悪い子にはプレゼントは無しだよ。平助にはそんなもん自分で買えって僕があとでラインしとくから大丈夫」
「ぜ、全然大丈夫じゃありません! も、総司先輩離してください〜〜!」
下らない言い合いをしながらも、サンタ千鶴は沖田少年の腕の中から逃げようとした。自分を拒もうとする千鶴に沖田は盛大にショックを受ける。
「ち、千鶴ちゃんのバカ! そんなパンツ見えそうなミニスカ履いてるくせに、なんでそんな真面目なのさ! 僕と仕事どっちが大事なの!?」
満たされない睡眠欲と性欲のせいか。沖田少年はやばい目つきでサンタ千鶴に詰めよる。
しかし、沖田のメンヘラはよく現パロの同人誌で見るやつである。千鶴は動じない。
「仕事に決まってるじゃないですか! 下らないこと聞かないでください! このスカートは会社指定の制服で仕方なく着ているだけです! いいから離してください!」
そう言って、千鶴はついに沖田の腕から無理やり抜け出した。
「ひ、ひどいよ千鶴ちゃん。このお話、沖千のタグついてるのに……。こんなのって詐欺だ! 作者にクレーム入れてツイッターで注意喚起してやる!」
「やめてください! このお話いつものR-18タグはついてないんですよ! それに一番出番が多いのは私たちなんですから、やっぱりこの話は沖千なんです! 私も先輩のことを沖田先輩ではなく総司先輩って呼んでいますし!」
「っ、確かにそうだね。この話は紛れもなく沖千だ」
「そうです、こんな話ですが、これは間違いなく沖千です。納得してくださったんならもういいですよね? それでは私は仕事に戻ります。時間も押していますし次の配達先に……」
沖田にそう挨拶をして、千鶴はこの場を辞去しようとしたが。
「えいやあ〜〜っ! 隙あり〜〜!」
沖田はやにわに千鶴に手を伸ばし赤いサンタ帽子を奪い取った。
「ああっ! 大切な帽子が!」
妙な説明台詞で驚く千鶴だが、完全に意地になっている沖田は彼女の口調の怪しさにツッコミも入れず、赤いサンタ帽を抱きしめて、泣きそうな顔で千鶴を睨んだ。
「僕を捨てて出ていこうとしたって、そうはいかないんだから」
「そ、総司先輩」
「……僕は一年前からずっと、この日を楽しみにしていたんだから。絶対に可愛いサンタさんな君と不純異性交遊をしてみせるって」
真面目な顔で変態じみた発言をする沖田だが、いかんせん顔がいいため全てが許されていた。得な顔面である。
「僕は箱に入ったプレゼントなんて本当はどうでもいいんだ……! 僕が本当に一番欲しいものは、大好きな君と過ごす特別な時間なんだ! だから……」
沖田はなけなしの演技力で千鶴を泣き落としにかかるが、今の千鶴には通じない。今宵の千鶴は男より仕事を選ぶタイプの女であった。
「ちょっと、ビータのSSLの設定を突然持ち出して、いい話風にまとめようとしないでください! 私の帽子、返してください!」
「ちえっバレちゃった」
沖田少年は舌打ちをする。しかし、そのとき。
「――沖田ああああ〜〜〜〜!」
ついにしびれを切らしたのか、千鶴の兄であり同僚でもある南雲薫が怒鳴り込んできた。こちらは赤ではなく黒のサンタ服を着ている。
「あっ薫!」
「ついに来たね、ヤンデレシスコンストーカー……。やっぱり君は黒サンタなんだね。お似合いだよ」
「うるさい黙れ沖田! お前はいつもいつも俺たちの邪魔ばかり……! 千鶴を返せ! 俺たちにはまだプレゼントと粛清の配達があるんだよ!」
薫もまたやばい目つきで沖田に凄むが、それにひるむような沖田ではない。沖田もまた不敵な笑みを浮かべて薫に言い返す。
「粛清の配達か……。いいね。じゃあ君は一人で井吹君のところに行ってよ。ついでに芹沢さんの寝首でもかいてきて」
「それは俺じゃなくて幕末のおまえたちがしたことだろ! 現パロでそんなことできるか!」
「へぇっ、じゃあ粛清って何をするのさ?」
「そっ、それは……。悪い子の枕元にじゃがいもと石炭を置くんだ……」
「えっ何それ、それが粛清なの?」
「仕方ないだろ……! 俺だって本当は主におまえを血祭に上げたかったさ! だけどビータSSLのCERO Bと、Pixivの全年齢コメディというタグが俺にそれを許さない! くそっ、何でR-18Gじゃないんだ!」
地団駄を踏んで悔しがる薫に沖田も黒い笑みを浮かべる。
「奇遇だね、僕もこの話の全年齢コメディのタグには苦しめられているところ。あっでも僕はR-18GじゃなくてR-18沖千担当だから間違えないで」
「なっ、R-18沖千担当だとっ……!? 沖田、おまえよくも俺の妹を……!」
「今更何言ってるのかなお義兄さん……。気づくの遅いんじゃない……?」
「ちょっと、二人とも生々しい喧嘩やめてください!」
やにわにセ〇クス済みを暴露され、千鶴は焦った。しかし、沖田は平然と千鶴に声をかける。
「……ちょうどよかった千鶴ちゃん」
「え?」
「せっかく二人目のサンタ来たんだし、あとの仕事は全部こいつに押し付けて、僕と遊ぼうよ」
「だ、だめです! そんな」
「いいじゃない別に。どうせ同じ顔してるんだし、赤い服着せとけばバレないよ」
得意の屁理屈で千鶴を言いくるめようとする沖田。しかし。
「――いい加減にしろ、総司」
「斎藤トナカイ先輩!」
「さ、斎藤っ……!」
彼の登場は予想していなかったのか、千鶴と薫は驚きに目を見張る。斎藤は二人に笑みを返すと、改めて沖田に向き直る。
「遅いと思って来てみれば、やはりこうなっていたか。いい加減諦めろ総司。たとえ今日が性なる夜であろうと、この話に沖千タグがついていようと、この話は全年齢コメディだ。そろそろ雪村は返してもらう」
「一君……。トナカイの着ぐるみも似合ってるけど、その鼻に着けてる赤い光る丸いの何? 君、笑い者ってキャラじゃないでしょ」
「これは近藤トナカイ局長から託された大切なつけ鼻だ。外すわけにはいかない」
「そう? 外した方が君のファンは喜ぶと思うけど? まあ沖千タグの話を読む君のファンがどれだけいるかは分からないけど」
「余計なお世話だ」
「っていうか近藤トナカイ局長って何? 近藤さんはトナカイ役なの? 今も寒空の下でソリ引いてるの?」
「いや、局長は残念ながら本日は病欠だ。楽しみにしておられたが、咳と発熱があったため大事をとっている。土方トナカイ副長も局長の濃厚接触者となったため出勤を自粛されている。ゆえに俺がお二方の代理で今宵ソリを引いている」
「へえっ……。反応に困る不謹慎ネタだね。コンプラ的にアウトなんじゃないの」
「俺は事実を述べただけだ。おかしな言いがかりはよしてもらおう」
トナカイ斎藤に窘められつつも、口の減らない沖田少年は一歩も引かない。今も無為な舌戦を繰り広げている。
しかし、口喧嘩をしている場合ではない。現在時刻など確認せずとも、基本すぐに辞去しなければならない立場のサンタたちである。南雲は沖田を指さすと、ヒステリックに絶叫した。
「ちょうどいい斎藤! おまえ、沖田から千鶴のサンタ帽を取り返してこいっ!」
先輩に対する発言とは思えないが、もうあきらめているのか斎藤は淡々としていた。
「あんたに言われずともそのつもりだ、南雲。……総司、雪村の帽子を返せ。この話は全年齢コメディだ。不純異性交遊など許されぬぞ」
「ここでまさかの三つ巴になるとはね……。タグがついてなかったから予想できなかったよ……。君がトナカイだろうとサンタ千鶴は渡さないよ。そこの黒いのは喜んで返品するけどね。そいつに赤い服でも着せて風紀守って配達でもしてれば? 僕は絶対に可愛いミニスカサンタさんと性夜を楽しんでやるんだから」
沖田少年は完全に意地になっている様子だ。射殺さんばかりの視線でトナカイ斎藤を睨みつけている。自分をはさんで斎藤と対立する沖田に、千鶴は気づかわしげな視線を向ける。
「そ、総司先輩……」
しかし、今夜の千鶴は少しズレていた。
「そんなにミニスカサンタが好きだったんですか……?」
「すごい質問だね千鶴ちゃん……。大胆な君も嫌いじゃないよ……。うん好き。大好き。男ならみんな好きでしょ」
「そこは同意してやるぞ、総司。ミニスカサンタが嫌いな男などいない」
力強いふたりの言葉に、千鶴は呆気にとられてしまう。沖田にしろ斎藤にしろ『なんかキャラ変わってない?』しかし。
「そういえばこの話、キャラ崩壊タグが付いていました……」
世界の真実を知ってしまった千鶴の運命やいかに。次回『こんな話に続きなんてあるわけない』