◆薄〇鬼NL小説◆

□【SSL沖千】僕の可愛い子猫ちゃん
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 チリリン…… リン…… リン…… 淫らな雌猫の鳴き声に清廉な鈴の音。そのコントラストが倒錯的だ。沖田はスマホのカメラを起動して千鶴に向けていた。消音の動画撮影モード。

 見つかったら絶対に怒られる、けれどやめられない。いけないことをするのは、どうしてこんなにも甘美で心地いいのだろう。我ながらひどい彼氏だと思う。けれどこの背徳感やスリルがあるから、この手の悪戯はやめられないのだ。

(ごめんね千鶴ちゃん…… 僕だけの秘密の宝物にするから……)

 心のうちで言い訳をして、沖田は男の昂ぶりで貫かれながら気持ちよさそうにしている卑猥な姿の千鶴に、内臓カメラのレンズを向け続ける。

 まるで沖田に甘えるように猫の鳴き真似で喘いで、心地良さそうにしている千鶴はとてもいやらしくて可愛い。彼女が身をよじり腕を動かすたびに鳴る鈴の音も妙に卑猥だった。そんな彼女と彼女をとりまく全てを、沖田は動画で撮影してゆく。

 先ほど口にした「君に関しては全部諦めたくない」をこんな形で実践してしまった、そんな自分を卑しむように沖田は薄い笑みを浮かべる。

「ああっ…… にゃあ…… にゃんっ……」

 チリン…… 可憐な喘ぎの合間に、密やかに鳴る美しい鈴の音。

 可哀想なほどに生真面目でお人好しな千鶴は、まさか愛する彼にこんな動画を撮られているとは夢にも思わないだろう。ただ彼を喜ばせるためだけに、言われるがまま卑猥な衣装を着て猫の物真似までして。

 けれど、沖田自身を受け入れている彼女の小さな裂け目からは、水のような体液がとめどなく溢れていて、彼女もまたこのこの卑猥な営為を楽しんでいるのがはっきりとわかった。

「すっごくいいよ…… 千鶴ちゃん……」

 沖田は千鶴の脚の間にカメラを向けて、自分のものをくわえ込んでいる千鶴の淫らな裂け目を撮影する。女の子の一番大切な秘密の場所だ。熱く濡れて男のものを咥えて離さない淫らで可憐な場所。

 そんなところを暴き立て、あまつさえ動画で撮影してしまうのは、本当に悪趣味だと思うけど。可愛い千鶴の可愛い場所は全部記録に残したくて、沖田はその場所にカメラを向け続けた。

 意外なほどに快楽に貪欲なところも、千鶴の美点のうちのひとつだ。控え目なふりをしてこんなにも愛の営みが大好きで、奔放に乱れてくれる。

(……やっぱり、してるときに積極的な子っていいよね)

 沖田は改めて乱れる彼女の全身をカメラに収めると、そこでようやくスマホを置いた。これ以上撮影を続けて彼女にバレて怒られるのは、さすがに沖田といえども嫌だった。

(千鶴ちゃんだからいきなり修羅場ってことはないだろうけど、やっぱりね……)

 さりげなくスマホを隠してから、沖田は再び千鶴が最も感じてしまう割れ目の先端の突起に触れた。

「ああっ……!」

 千鶴の唇から漏れた吐息には、確かな歓喜の響きがあった。彼女の素直な反応に気をよくした沖田は密やかな笑みをこぼして、さらにその場所を刺激してやる。

「すごくいいよ…… 僕の猫ちゃん……」

「ご主人様ぁ…… そこがいいですにゃあ……」

 チリン…… リン…… 彼女の言葉を追うように澄んだ鈴の音が鳴り、聴覚でも沖田を煽ってくる。

「……やっぱり、ここが一番なんだね。可愛いよ、千鶴ちゃん」

 一番感じてしまう突起を弄られて喜んでいる、まるでマタタビを与えられた子猫のような可愛い姿も撮影したかったけど、さすがに危険すぎるだろう。早晩、彼女に気づかれてしまう。けれど、一番のいい絵が撮れずとも沖田は満足していた。

(うん、あの動画は永久保存版だね…… あとでパソコンに転送しとこ)

 彼は千鶴の突起の愛撫をやめてから。

「――じゃあ次は後ろからしてみよっか。可愛い千鶴猫ちゃん」



 ベッドの上で千鶴をうつ伏せにさせて、真っ白なおしりだけ突き出させて。沖田は彼女の腰をつかんで、ゆるやかに突いてやっていた。

「……ほら、猫ちゃん同士の交尾だよ。千鶴猫ちゃんはいつも他のオス猫たちとこうしてるの?」

「してませんにゃ…… 総司さ…… ご主人様だけですにゃ……」

 沖田の抜き差しに合わせて無防備な腰を揺らしながら、千鶴は沖田に媚びるように答えた。しかし、彼はつれない。

「……本当に?」

「ひどいですにゃ……」

「ごめんごめん。だって君があんまり可愛いからさ。よそのオス猫たちとも交尾して、飼い主とも交尾してるのかなって」

 するはずもない浮気の疑いをかけられるのは、これで何度目だろう。沖田の抜き差しに合わせて裸の腰を振りながらも、千鶴は悲しい気持ちになってくる。

 彼の固い昂ぶりのおかげで身体は強い快楽を得ているけど、心は悲しく寒い。沖田はいつも『君が可愛いから心配なんだ』って冗談めかして笑うけど、それでもつらい。

 浮気なんてするわけないのに、するような子だと思われているのだろうか。身も心も許して、全てを委ねて愛を交わすのは。後にも先にもご主人様…… 沖田とだけだ。

 後背からの突き上げも心地いいけど、彼の顔が見えないから心細くなってくる。ただの冗談ですまない浮気疑惑を何度もかけられているから、なおさら。

「総司さっ…… ご主人様……」

「……なに?」

「やっぱり…… 抱き合ってしたいですにゃ……」

「えっ……?」

「後ろからだと顔が見えなくて寂しいから…… 抱き合ってするのが、やっぱり一番好きですにゃ……」

 恥ずかしがりながらも懸命に、千鶴は猫語で愛を伝える。愛の行為の最中に体位のリクエストをしたのなんて初めてだ。だけど、何かと不安がる飼い主さんに自分の気持ちをわかって欲しかったから。

 甘い容姿でもクールで気高い猫が媚びるのはただひとり、身も心も許した飼い主さんだけ。こんなにも愛しているのはあなただけ、なのにゃ。

 そんな千鶴の想いが伝わったのか、沖田の纏う雰囲気が不意に和らいだ。穏やかで優しい緑の瞳には、さきほどまでの不安の光など宿っておらず。

「……うん、そうだね。僕も正常位が一番かも」

 不意にこぼされた沖田の今日で一番甘く穏やかな言葉に、千鶴は泣きそうになってしまう。これはきっと嬉し泣きだ。意地悪な煽りでもなく、猫なで声の甘やかしでもない。

 優しくて温かい愛のこもった彼の言葉が嬉しくて、涙がこぼれそうになってしまった。



 最後はしっかりと抱き合って、千鶴と沖田はお互いを懸命に求めあう。

「千鶴ちゃんっ…… 気持ちいいよっ……」

「にゃあっ……! ああ……っ 総司さんっ……!」

 チリン…… リリリン…… リン…… 千鶴が激しく突き上げられるたびに、千鶴の身体につけられた鈴が澄んだ音を立てる。あえかな喘ぎ声に重なる清廉な鈴の音の二重奏は、たまらなく扇情的だった。

 鈴の音が鳴るような千鶴の声と本物の鈴の音が絡み合い、さらに情事のさなかの淫猥な水音に肌と肌とがぶつかり合う音までが混ざりあう。

 耳慣れない不思議な合奏は、次第に沖田から現実感を奪ってゆく。鈴の音と猫の鳴き声が沖田を惑わせる。……黒猫を見ると可愛がりたくなるような、あるいは斬りたくなるような気持ちになる。相手が逃げても追いかけたくなって。

 夢とうつつの狭間で、沖田は病魔に蝕まれた身体を引きずり黒猫を斬ろうとする自分の幻を視た。しかしそれはすぐに霧散する。

 ――いけない、千鶴との情事の最中に他のことに気を取られるなんて。沖田は激しい突き上げをしながらも、改めて千鶴を見おろした。

 卑猥な衣装で自分に犯されている彼女はあまりにも新鮮で、千鶴ではない別の女の子と行為をしている錯覚すら覚えてしまう。本当にいけないことをしているみたいだけど、この喘ぎ声や温もりは間違いなく千鶴で、沖田は新たな興奮を覚えてしまう。

 女の子との行為も慣れているつもりだったのに、ここにきて新たな愉しみを知ってしまった。

「っは…… こんなの初めてかも…… すごいよ千鶴ちゃん……」

 しばらく抜き差しを続けて、そして。

「っは、千鶴ちゃん…… 出すっ……」

 非日常な状況に興奮していたのか、沖田は思ったより早く千鶴の中に白い欲望をぶちまけた。体内で沖田のものが脈動するのを感じながら、千鶴は安堵の息を吐く。

 今日はすごく気持ちよくて興奮できたけど、なんだか疲れてしまった。特有の充足感と倦怠感に包まれながら、千鶴は彼を呼ぶ。

「総司さん……」

「……今日もすごくよかったよ。ありがと。僕のやらしい子猫ちゃん」

 機嫌よく微笑む沖田に千鶴はまたしても頬を染めてしまう。千鶴の脳裏に改めて今の自分の格好やこれまでの言動が蘇った。

「……っ! 総司先輩、猫耳もう外しますね」

 急に猛烈な羞恥がこみあげて。耐えきれなくなった千鶴はそう口にすると同時にカチューシャを外した。沖田の返事も待たずに、続いて首輪を外し始める。沖田の呼び方も総司さんから総司先輩に戻っていた。

「えっ!? もう外すの……」

 裸のまま避妊具の後始末をしながら、沖田は愕然とした顔をする。彼としてはもう少し事後の余韻に浸りながら、猫姿の千鶴とまったり過ごしたかったのだが。

 しかし何かを思い直したのか、沖田は仕方がなさそうに苦笑すると。

「……でもまあ仕方ないか。うんいいよ、お疲れ様」

 本当はもう少しゆっくりしたかったけど、初心な千鶴をすごく頑張らせちゃったし仕方ないか。沖田は自分をそう納得させていた。


 その後、千鶴の部屋には着々と新しいコスプレ衣装が増えていった。

(……また、届いてたんだけど)

 あの淫らな猫ごっこからしばらく経ってから。部屋のテーブルの上に鎮座する小包を見つめながら、千鶴は途方に暮れていた。

 発送伝票の品名欄にはなぜかパソコン用品と記載があるけど、中身はセーラー服だ。数日前に沖田に連絡をもらっていたから知っていた。まさか、大学生にもなってセーラー服を着ることになるとは思いもしなかった。

『ねえ千鶴ちゃん、今度は体操服とセーラー服どっちがいい?』

『総司先輩…… また買うんですか?』

『いいじゃない。君って清楚系すごく似合うよね。迷っちゃうよ。あ〜 なんか全部着せたいな。全部買いたくなる。よし買おっと。通販で発送先そっちにするから。着日わかったら連絡するね、受取りよろしく』

 ちなみに、体操服は明日届く予定だ。伝票の品名欄にはまた明らかな嘘が記載してあるのだろう。千鶴は小さく息を吐く。新たな扉を開けてしまったのか。最近の沖田は毎日元気に通販三昧していた。

 いつもと違う君の姿を見るのが楽しいと、口にする沖田が買ってくれた衣装はどれも妙につくりのいい高級志向のもので、彼の財布の中身が若干心配だけど気にしないことにしよう、うん……。

(……破産するまで貢いじゃいそうっていうのは、ただのお世辞だから)

 さすがに目端の利く沖田がこんなくだらないことに、身を持ち崩すほどハマったりはしないはず。しないはず……? ここしばらくの彼の言動を思い出し、千鶴は自分の家に届いた荷物の数を指折り数えた。

「……も、もう考えないことにしよっと」

 衣装のほかには変わった下着に妙なタイツとかもらった気もするけど、思い出したくもない。千鶴はひとり天井を見上げた。

(あの衣装、他の人に見つからないように隠しておかないと……)

 特に自分の兄には絶対に見つかりたくない。大好きな沖田のせいで、大好きな沖田のために。まるで思春期の男子のような悩みを抱える千鶴なのだった。
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