◆薄〇鬼NL小説◆

□【SSL原千】CANDY NIGHT
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 やがて、原田は唇を離してわずかに身体を浮かし、片方の手で千鶴の身体を探り始めた。

 千鶴の裸の胸を撫で突端を摘まんで慈しみ、彼女の素肌に顔を埋めながら、原田は千鶴の裸身のあらゆる場所にその大きな手のひらを滑らせて、丁寧な愛撫を施していく。

「ああっ……。はぁっ……」

 過敏になった千鶴の肉体は、優しく撫でられただけでも彼女を甘く喘がせるが、もう触れられるだけでは足りなくなっていた千鶴は、じれったそうな様子で原田を呼ぶ。

「左之助さん……」

 欲望に掠れた物欲しそうな声。愛する男の全てをを欲しがる浅ましい女の囁きそのものだ。名前を呼ばれただけだったが、千鶴の様子から彼女が何を言いたいかなんて、原田には手に取るようにわかった。

 控えめな彼女がここまで素直に自分を求めることもそうそうない。不意に愛しさが込み上げて、原田は千鶴を見おろしながら淡い笑みを浮かべる。

「……どうして欲しいんだ? 千鶴」

「左之助さんの好きに……」

 二人の暗黙の了解だ。昼間は原田が千鶴の、そして夜は千鶴が原田の願いを叶える。それはずっと昔からの二人の間の決まりごと。もうずっと前から二人はそうやって過ごしてきた。

 薄桜学園で教師と生徒として巡り逢うより遥か昔。京の街を浅葱色の羽織姿で駆ける彼に出会い、一生一度の誠の恋をしたあの頃から変わらずずっと……。

(……左之助さん、あなたの願うことなら全部叶えてあげたいんです。かつてのあなたが、私にそうしてくれたように……)

 千鶴は原田を見つめ、改めて口を開く。

「好きに…… してください……」

 あなたが望む通りに。

「そうか……」

 原田は目じりを下げて微笑むと、千鶴をそっと抱き上げた。





 千鶴の上体が倒れこんでしまわないように、彼女と両手を繋ぎながら。原田は千鶴を自身の腰の真上に跨らせ、彼女を下から突き上げていた。千鶴は切なげに眉を寄せながらも甘く喘いで、原田のなすがままにされていた。

 快楽に溺れる彼女の全てが眺められる体位として、原田はこの姿勢を気に入っていた。いつも見おろすばかりの彼女を、下から仰ぎ見るのも新鮮だった。

 内気で恥ずかしがり屋の彼女の裸身が、自分の匙加減ひとつでどこまでも奔放に揺れ動き、存分に乱れてくれるところも、原田にとってはたまらなかった。

 原田の突き上げに合わせて、千鶴の長い髪は跳ねるように揺れ、控えめな胸もまた上下に動いていた。

 原田のされるがままになりながらも切なげに眉を寄せ、下方からの突き上げの衝撃と間断なく押し寄せる快楽に耐えている千鶴は、この上もなく淫らでとても可愛らしかった。

 腰からぐっと反らされた女性らしい曲線を描く半裸の肉体も美しく、原田は千鶴を緩く突き上げてやりながら、自分に跨る彼女の全てを鑑賞した。

 すっかり快楽の虜となっていた千鶴は、無防備な自分自身の全てを彼に見られていることにも気づかない。

 大胆な痴態を彼の目の前で披露しながら、千鶴はただひとり獰猛な彼の猛りに真下から貫かれる喜びに浸っていた。

「ああっ……! 左之助さん……!」

 ときおり強くされるたびに漏れる、喜悦に満ちた甘い悲鳴。原田は眩しそうに千鶴を見上げながら腰を振り、彼女にさらなる喜びと幸せを与えてやる。

 いたいけな千鶴もこのときばかりは妖艶で、男の体の上に跨ってはしたなく喘ぐ彼女の姿をもっと楽しみたくなった原田は、千鶴が着ていた自分のグレーのワイシャツを肩から落とすようにして脱がせると、ようやく彼女を生まれたままの姿にしてやった。

 行為の最中の女の美しさは格別だ。愛する男に見せる、全てをさらけ出した無防備な姿。自らの秘部を男の猛りで貫かれている女の裸の肉体は、えもいわれぬ色香を放ち、自分をこの上もなく魅了する。

 その美をいっそう味わうために。原田は千鶴の両手を強く握りしめ、繰り返し激しい突き上げを見舞った。

「ああっ…… あっ……」

 逃げられぬよう身体の自由を奪われてから、原田に容赦ない快楽を与えられ、千鶴は顎をのけぞらし、もうたまらないといった様子で喘ぐ。

 硬く巨大な肉の楔を下方から何度も打ち込まれ、すっかり理性を溶かされてしまった千鶴は、やがて自ら腰を揺すり始めた。さらなる快楽を得るために、原田の動きに合わせて自分も腰を振る。

 そんな千鶴の姿にいっそう焚きつけられてしまった原田は、長い時間をかけてたっぷりと、このままの姿勢で彼女を愛してしまったのだった。



 やがて、原田の両手が千鶴から離された。支えを失った彼女の上体は大きく傾ぐが、すぐに原田の逞しい腕が伸ばされ、千鶴はそのまま彼の身体の上にゆっくりと倒れこんだ。

 原田は疲労のにじんだ表情で浅い呼吸を繰り返す千鶴を抱きしめて、その労をねぎらう。

「……疲れただろ、千鶴。よく頑張ったな。綺麗だったぜ」

「……っ」

 いつも以上に甘い原田の言葉に千鶴の頬に赤みが差す。かわいいではなく綺麗なのが嬉しかった。

 荒くなってしまった呼吸を整えながら、千鶴は原田の胸板にその顔を擦りつける。照れ隠しでもあり返事の代わりだ。

 下方からの刺突を受けながらの長時間の騎乗は、千鶴の体力を大きく奪う。千鶴はぐったりとした様子で、原田の身体の上でつかの間の休息をとっていた。

 原田との行為は心地よいけど大変だ。体力と体格に恵まれた精強な彼に合わせて、自分も頑張らなくてはいけない。 さきほどからずっと自分を貫いている肉の楔だって、ずっと硬いままで千鶴のその場所を満たし続けているし。

「…………」

 疲労でつらくなってきた彼女の胸の内に、若干の恨めしさが込み上げる。少しはこちらの都合も考えて欲しいというか……。

 千鶴は原田の胸板に爪を立てた。まるで拗ねた仔猫のような振る舞いだが、それでも原田にはなぜかその意図が伝わった。

「……はは、しつこくして悪かったな。そんなに疲れたのか?」

 千鶴はこくりと頷いた。疲労で言葉を発する気力はないけど、頷くくらいならできる。

「……じゃあ、次で終わりにするか」

 一応の満足を得たような、穏やかな原田の様子に千鶴は安堵するが。

 しかしいざ「次で終わり」と言われてしまうと、少し残念な気持ちになる。疲れているけどもっと繋がっていたい。もっと抱かれていたい気もするけど、もうお終い。

 けれど、こういうことは物足りないくらいでいいのかもしれない。

 次もまた沢山欲しくなるから。





 原田は片腕で千鶴を抱きながら、そのまま彼女と身体の上下を入れ替える。

「……しっかり捕まってろよ」

 そう促された千鶴は小さく返事をすると、細い腕を彼の広い背へと回し、白い脚を彼の腰へと絡めて、原田の身体にしっかりと密着してくる。

 以前の千鶴はいつも恥ずかしがるばかりで、原田にされるがまま何も返そうとしなかった。原田にきつく抱きしめられても、おそるおそるといった様子で彼の脇腹のあたりにそっと手を添えるだけで。

 恋人同士のはずなのに、控えめな千鶴は原田の身体に触れることすら、どこか遠慮しているようだった。

 けれど「それでは寂しいから」と何度も原田の催促や叱りを受けて、しっかりと刷り込まれた結果。

 今や千鶴は原田にに求められずとも、自分から彼を欲しがるようになっていた。入れられているときに彼の腰に脚を絡めたり、自分から彼に胸や局部をこすりつけたり。

「……動くぜ」

 いよいよだ。千鶴はこくりと頷いた。

 原田はまず慣らすような緩やかで優しい突き上げを何度か行い、千鶴の秘部が充分に潤んでいるのを確かめてから、徐々に突き上げのペースを速めていった。

 そして、千鶴の裸の身体が原田にひときわきつく抱きしめられた、その瞬間。

 最も強い突き上げが千鶴の最奥に見舞われて、そのまま千鶴の体内に原田の白い熱情が吐き出される。

「――千鶴っ」

 情欲に掠れた原田の囁きを、一糸まとわぬ肉体の全てで感じながら。千鶴もまた愛欲の頂点を迎え、その意識を手放した。





 ようやく全てを終えて。穏やかに眠る千鶴の髪を、原田は優しく撫でていた。

 小さな丸い額は汗ばんでおり、淡く上気した頬と掛布団から覗く裸の肩口は、いかにも情後の幸福な眠りといった様子で。

 交際を始めて二年と少し。出会った頃は高校一年だった千鶴も、もう短大生。すっかり大人っぽくなった。

 しかし、身体を重ねた後の千鶴の寝顔は無防備であどけなく、原田は彼女と同じ学園で過ごしていた頃のことを思い出す。

 あのときも、千鶴は周囲の男たちから人気があって、担任の教師という立場でありながら彼女に恋をしていた自分は、ずいぶんともどかしい思いをしたけど。

 今こうして普通の同世代の恋人同士のように、当たり前の日常を過ごしているのが、なんだか不思議な気持ちだ。原田は自分のベッドで眠る千鶴を見つめながら、とりとめのない物思いに耽る。

 あれからずいぶん遠くに来てしまったような気もするけど、彼女への想いの強さは今も少しも変わっていない。

 情熱の炎はその勢いを減じることなくこの胸に在り続け、ときおり恋を知ったばかりの少年のような、くだらない独占欲が頭をもたげることがある。そう。例えば、今このときのように。

 原田は千鶴の上にかかっているブランケットをそっと取り、彼女の胸元を優しく撫でた。そして、鎖骨に唇を寄せる。きつく吸い上げて小さな痣を残して、その場所を舌先で舐め、彼女の素肌の甘さと柔らかさを味わった。

 水のたまるような鎖骨は、昔から原田の好きな場所だった。

 女性らしいほっそりとした美しい首周りは、つい目が惹かれてしまう。そのまま原田は彼女の鎖骨にいくつもの赤い花を咲かせる。

 しかし、そんなことをされているというのに、千鶴が起きる気配はない。よほど疲れているのだろうか。

「……ったく、こんなにされてんのに気づかねぇなんて、何されても知らねぇぞ」

 原田は瞳を細めて笑う。まだ行為を終えたばかりで、下着一枚を履いただけの半裸の身体には、その余韻が残っていた。猛る欲望を鎮めるべく、原田は千鶴に覆いかぶさり、彼女の無防備な身体を探る。

 胸の突端のすぐ上、臍の横、そして太腿の内側に脚の付け根……。さまざまな場所に痕を残してようやく満足した原田は。

「……さてと、じゃあ俺も寝るか」

 明日の朝の千鶴の反応を楽しみに、彼女の隣で眠りにつくのだった。



***



 翌朝。目覚めたばかりの千鶴はさっそく、無断でつけられたいくつもの痕に気がついて、原田に文句を言っていた。

「も、勝手に痕をつけるのやめてくださいって、いつも言ってるのに……!」

「見えねぇところなんだからいいじゃねぇか」

「だ、だめです……! 私がいやです……! とにかく、勝手につけないでくださいね!」

「そりゃあ無理な相談だな」

 千鶴は真面目に怒っているようだが、昨夜と同じく裸の身体に原田のシャツ一枚という姿だったため、かわいらしいばかりで少しも怖くなかった。

 しかも、彼女が昨夜身に着けていたショーツは、いまだに寝室の床に落ちたままで。ということは今の千鶴は何も履いていないわけで、そんなことも原田を上機嫌にさせていた。

 とはいえ、いつまでも続けられるこの話題にも飽きてしまった原田は、彼女を煙に巻こうとする。

「そんなことより腹減っただろ、トーストでも焼いてやろうか」

「も、そうやってすぐ誤魔化して!」

 さすがにその魂胆には気づかれていた。しかし、その後に続けられた千鶴の言葉に原田は呆れてしまう。

「原田先っ…… 左之助さんは」

「――おいおい、この期に及んでまだ先生なのかよ、俺は」

 お前は先生の家でノーパンでうろちょろするのか? そう問いかけたいが呑み込んで、ついでにノーパンの彼女のシャツの裾をめくりあげたい悪戯心も呑み込んで、原田はわざとらしくため息をつく。

「ご、ごめんなさい」

 千鶴は慌てて謝るが、しかしこれはもう彼女の癖や性分のようなものなのだろう。そういうものだと諦めて、原田はかぶりを振って苦笑する。

「もういいさ、そういうところもお前だもんな」

 いつまでも初々しくて可愛らしい千鶴。この素直さをずっと失わないで欲しいと原田は願う。

(……そのためには、俺がしっかり守ってやらねぇとな)

 彼女を守りたい。そして、ようやく手に入れたこの穏やかな幸せも。

 愛しい人と同じ朝を迎えるたびに、原田は遥か遠い過去から変わらずに抱き続けてきた願いを、改めて思い起こす。

 教師と生徒として彼女と巡り合うずっと前、百代の昔、祖国での戦いを終えて異国に渡り、馬賊として槍を振るっていたときと、同じ願いを。 







End



以下あとがきです



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