◆薄〇鬼NL小説◆

□【SSL沖千】僕の可愛い子猫ちゃん
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◆番外編


 ある日の部活終わり。汗をタオルで拭いながら道着のまま更衣室に向かおうとした沖田は、とある人物に声をかけられていた。後輩の井吹龍之介だ。

 二人の様子から察するに、沖田は井吹に何かの頼みごとをされているようなのだが……。

「……コスプレ屋台の売り子? 面倒くさいな」

「沖田先輩〜〜 頼むよ〜〜 あとは先輩だけなんだよ〜〜」

 もうすぐ行われる大学の学祭。その出し物の勧誘だった。

 剣道部有志というよりは井吹を中心としたメンバーで立案された、ハロウィン直前特別企画のコスプレ屋台。井吹及び剣道部の部費稼ぎも兼ねた、学祭の賑やかしだった。

 沖田の華やかな容姿で女子客からの荒稼ぎを目論んでいるのか、井吹はなんとか彼を口説き落とすべく、先ほどから平身低頭している。

 しかし、沖田はあからさまに嫌そうにしていた。やはり、学祭の出しものとはいえホストまがいの接客を強いられるのは嫌なようだ。

「……だいたい衣装はどうするのさ。君が用意してくれるの?」

 不機嫌そうな半眼で見おろしてくる沖田に、井吹は必死に食い下がる。

「衣装は先輩の好きなの買ってきてくれればいいからさ……! 代金は払うし、衣装も終わったら先輩にあげるから……!」

「衣装なんて、そんなのもらってもね……。別にコスプレなんて興味ないし、どうせ使わないから要らないんだけど」

 他人に頼み込んでいる立場で『衣装はそっちで用意して』などと適当なことを口にする井吹に、沖田は露骨に顔をしかめる。

 どんな衣装なら着てもいいかとかサイズとか、本人じゃないとわからないこともあるから。当人に買わせて後から衣装代を払うのは合理的なのかもしれないけど、ちょっと気に入らなかった。

 けれど、井吹はめげずに沖田に言い募る。

「衣装がいらないなら捨ててくれていいからさ……! それにせっかくちょうどいい時期なんだし、ハロウィンのときに着ればいいだろ? 先輩みたいなリア充はどうせ、仮装パーティーとかするんだろ? すっげえいかがわしいやつを」

「……別に僕は君が思うようなリア充じゃないし、そんなパーティーの予定はないけど」

 井吹の偏見を正しながらも、沖田はあることを思いつく。

(……そっか、買った衣装は千鶴ちゃんに着せればいいのか。僕サイズの服は着れなくても、頭につける飾りやアクセサリーなら使えるだろうし)

 幸いにも衣装代は井吹持ちで、好きなものを買っていいと言われている。そういうメリットがあるなら、この面倒な依頼も受けていいかもしれない。

「……わかった。別にいいよ。やってあげる、コスプレ屋台の売り子」

「あっ、ありがとな! 沖田先輩っ……!」

「でも、貸しだからね? 覚えておいて」

 本当は私欲のために受けているだけ。けれど、そんなことはおくびにも出さず、沖田は井吹に平然と恩を着せる。

「わかってるって! 斎藤先輩も藤堂先輩もやってくれるって言ったし、沖田先輩も参加してくれるんなら大儲け間違いなしだぜ!」

「えっ、平助はともかく一君の了承を取り付けたの? 君すごいね。土方さんより商才あるんじゃない?」

 井吹の意外な行動力を絶妙に貶しつつも、沖田はさっそく条件の確認をし始める。

「ところで、衣装はどんなの買えばいいの? あと予算はいくらまで?」

「おっ、さすが話が早い! 助かるぜ先輩! えっとな予算は……――くらいで」

「へえっ、結構潤沢なんだね。どっから沸いてきたのそのお金」

「おう、俺は本気だぜ!!」

 予算の出どころはスルーして、井吹は熱意を示す。本気で儲けるつもりのようだ。井吹は瞳に米ドルのマークを輝かせながら、固く握り拳を作った。

「仮装は女子受けするストレートにカッコいいやつで頼むぜ! オモシロ系やウケ狙いはナシで! 先輩の唯一のとりえの顔面をいかして女子客を……!」

「ねえ井吹君、君さっきからちょいちょい僕を貶すよね。今から稽古つけてあげよっか……?」

 井吹の軽口もそろそろ看過できない。『ねぇ君、僕を何だと思っているのかな』と言わんばかりに、黒い笑顔で沖田はすごむ。

 彼のシゴキのきつさは部内でも有名だった。

「わわっ……! 悪かったよ沖田先輩!」

 井吹は慌てて謝るが、この程度で納得するほど沖田は甘くない。

「ったく、なんでみんな僕が不純異性交遊してる前提で話をするのかな。これでも結構真面目なつもりなのに……」

 ぽつりとつぶやきながら、沖田はこれまでの自分を振り返る。

 青春の情熱の大部分はこれでもスポーツに捧げてきたつもりだった。興味のない相手とくだらない遊びをしている暇があったら稽古をして、少しでも強くなって敬愛する人の役に立ちたかった。

 そして異性に対しての心からの愛情はただ一人、あの子にだけ捧げられている。昔も今もこれからも。

「……って言っても誰も信じてくれないんだけどね」

 沖田は切なげに苦笑するが。その両腕は井吹にプロレスの締め技をかけて、きっちりと彼に制裁を食らわせていた。

「いでででででで……っ! 沖田先輩離してくれっ……!」

 井吹は青い顔で苦しそうにうめく。しかし沖田の腕は緩まない。口は禍の元と言うべきか。相変わらず不憫な井吹と想い人以外には辛辣な沖田なのだった。










END












あとがき

お疲れ様です、作者です。
最近は時々パソコンを持ってひとりでカラオケに行って原稿をすることがあります。
自分の場合はフリータイムで吉岡さんの薄桜鬼の歌ばっかり何時間も歌って
疲れたら飲み放題のドリンクを飲みながらパソコンでダラダラ原稿をしたりします。
そして原稿に行き詰まったり飽きたりしたらまた吉岡さんの歌を歌って……と
多分歌7原稿3くらいの比率です。
吉岡さんの歌は飽きないので歌がメインになっています
個室のひとりカラオケとはいえ外出先なので、
分厚い資料集などは持っていけませんが、いい気分転換になっています
おしゃれカフェで原稿というのも憧れるのですが、
自分の場合18禁ばかりなので背後が心配で作業できません……笑
とはいえ、場所を変えるっていいですよね。
本当に気分転換になりますし、ネタもおりてきやすい気がしています

前回の土方さんのお話は違いますが
前々回の沖田君の18禁の話とその前のさのちづ看病話と
今回のお話はカラオケでネタ出しして自宅で完成させました。
もう秋も本番でハロウィンも近いので←?
今回は悪ふざけニャンニャンコスプレR18となりました。いかがでしたでしょうか。
しかし、沖田君は本当にモラル低めの18禁が似合いますね笑
千鶴ちゃんへの愛情は本物のはずなんですが、絶妙に低モラルなので
顔と身体しか興味ないセ〇レ女子と
楽しくやってるだけのイケメン君のような雰囲気が漂います笑
本人がいくら「僕は不純異性交遊なんてしてないのに」
とぼやこうとしてそうな雰囲気がぬぐえないのは
沖田君のモラルの低さや小悪魔な色気のせいだと思っています笑

前々回の沖田君のお話(ロングアイランドアイスティー)では
薄桜鬼本編や随想録のエピソードや台詞を盛り込みましたが、
今回は黎明録とPSvitaのSSL沖田ルートのエピソードを入れています
「千鶴ちゃんとお付き合いする前は勝利に貪欲で
剣道の試合でも荒いプレーが多かった」とかそういうやつです
シナリオブックを見返しながら盛り込んだので見つけていただけると嬉しいです。
vitaのSSLの沖田ルートのシナリオも大好きなので、
ゲーム本編の続きのようなお話が書けていたらいいなと思っています
しょうもない内容の18禁話ではあるんですが……苦笑

あと、今回のテーマが猫ごっこなので猫のことわざや小ネタも盛り込みました。
自分が猫好きなので、テーマが猫だとつい張り切ってしまいます。
このお話も1万5千字くらいで終わるつもりが3万文字です……汗
参考資料として日〇響子さんの猫コスプレの写真集まで買ってしまいました。
最高でした。

話を戻します
自分はテニプリや刀剣でも18禁のお話を色々書いてきたんですが
ここまでがっつりコスプレR18のお話を書いたのは初めてかもしれません
結構書いていて新鮮で楽しくて、沖田君のキャラもああいう感じなので
つい自分比でモラル低め過激寄りの内容になってしまい
千鶴ちゃんゴメン……という感じになってしまいました
といいつつも悪ふざけドSモード全開で千鶴ちゃんを煽って
容赦なく追い込みをかける沖田君は、書いていてとても楽しかったです
いつもは飄々としているのに心から愛した人に対しては激しく執着したり
淡泊でクールそうでいて剣道の試合や稽古では激しくて荒っぽいとか
そういう沖田君の二面性や狂信者ぶりは書いていて楽しくて
どんなふうに彼のカッコよさを表現しようかな、みたいな創作欲?が刺激されました
ちなみに、このあたりの沖田君の描写は無印黎明録の沖田ルートの最後のあたりを参考にしています。
黎明録もいいですよね。胸熱の過去編で号泣しました。

あと、余談なのですが。
SSL井吹君は千鶴ちゃんと同じクラス(同学年)なので沖田君、藤堂君、斎藤君たちの後輩になるんですよね。
SSL井吹ルートのプールの話で井吹君が沖田君を先輩付けで呼んでため口で喋っていたので
本作でも同じように喋らせました。(先輩付けため口)
他ルートの井吹君の沖田君たちへの喋り方が気になるところです

さらに余談ですが、沖田君といえば黒猫のエピソードも入れれて良かったです
斬ろうとしたというのはフィクションらしいんですが労咳快癒祈願で飼っていたのは本当みたいですね
(猫の世話は沖田さん本人ではなく他の方がされていたようですが)
薄桜鬼には出てきていないようですが……

相変わらずとりとめのない後書きですみません。
これ以上長くてもしかたがないので、今回はこの辺で失礼いたします
こんなところまでお読みくださりありがとうございました


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