◆薄〇鬼NL小説◆

□【SSL沖千】ロングアイランドアイスティー
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◆番外編


「……なんか遅くなっちゃったね。千鶴ちゃん、ごめん」

「いえ、大丈夫です。今日もとっても楽しかったですし」

 夕暮れの美しい真夏の繁華街を連れだって歩いているのは、沖田と千鶴だ。今日はデートだった二人。大学の夏休み期間中はこうして一緒に過ごすことが多かった。

 夏は日が長いから、まだ夕方かと思いきやもうかなり遅い時間で、沖田はスマホで時刻を確認すると、千鶴を夕食に誘った。

「もう結構遅いしお腹すいたし、晩ごはん食べていこうよ」

「はいっ!」

 大好きな沖田とまだ一緒に過ごせると、千鶴は満面の笑みを浮かべる。そんな彼女に沖田も笑い返すと。

「ねぇ、僕行きたいお店があるんだ。晩ごはんそこでいい?」

「はい、大丈夫ですけど……。どんなお店なんですか?」

「行けば分かるよ、君も知ってると思う」

 少し歩いて、連れてこられたのは千鶴も知っている喫茶店だった。

「ここのお店、夜はお酒も飲めるんだ。知らなかったでしょ」

「知りませんでした……」

 実はこの店は昼間はカフェとして夜はバーとして営業している。有名な話だけど、お酒も飲まず夜に遊び歩くこともほとんどなかった千鶴は知らなかった。

「一応昼間のメニューも頼めるから、君も気に入ると思う」

 沖田は片手をズボンのポケットに引っ掛けたままスタスタと自動ドアをくぐり、千鶴は半歩遅れてついてゆく。

 千鶴も知っているおしゃれな店内だ。落ち着いた内装はカフェらしいおしゃれさで、けれど照明と流されている音楽が昼間と違って大人っぽい雰囲気だった。

 客層も仕事終わりのOLやサラリーマンにカップルが大半で、千鶴はかっこいい大人の世界を垣間見たような気持ちになり、なんとなく浮足立ってしまう。大好きな人との夜のお出かけはやっぱりドキドキする。

 千鶴たちの姿を見つけて、さっそくやってきた店員がテーブルに案内してくれた。二人は着席してメニューを眺めて注文をすませる。そしてしばらく経ってから。まずは沖田が頼んだドリンクが届いた。レモンとミントが飾られたアイスティーのような可愛いもの。しかし、千鶴は不思議に思う。

(あれ、先輩はさっきお酒を頼むって言ってたのに……)

 千鶴が不思議そうな顔をしていると、沖田が解説してくれた。

「これ、ロングアイランドアイスティーっていうカクテルなんだ。紅茶使ってないのに、紅茶の味がするんだよ」

 そこまで口にして、さっそく沖田はグラスを傾ける。

「……ん、甘くてすっごくおいしい。千鶴ちゃんも試しに飲んでみる?」

「えっ?」

「興味ありそうに見てたからさ。せっかくこの前二十歳になったんだし、口つけてみるくらいいいでしょ」

「そ、そうですね……。ありがとうございます……」

 そんなに凝視していたつもりはなかったんだけど、沖田に勧められたものを断るのは忍びなく、そして味が気になっていたのは本当だったから。千鶴は興味本位でお酒に口をつけてしまう。

「……わ、本当に紅茶の味がします。不思議ですね」

「でしょ?」

 お酒と言われて警戒していたけど、甘くて飲みやすくて本当に紅茶の味がした。

「も、もう一口……」

「いいよ、どうぞ」

 紅茶を使ってないのに紅茶の味がするのが不思議で、その謎を解いてみたくなった千鶴は、沖田の許可を取ってから探るように飲み進めてしまう。

 彼の言う通り甘くて美味しいお酒だ。飲めども飲めども味の謎は解明できないけど、喉が渇いていたのかとても美味しく感じてしまって、気がつけばたくさん飲んでしまっていた。すると沖田が少し焦ったような様子で。

「……千鶴ちゃん、そんなに飲んで大丈夫なの? これ結構強いお酒なんだけど」

「えっそうなんですか? 大丈夫です、別に何とも」

「本当に? ならいいんだけど……」

 沖田はまだ納得していないようだったが。そのとき、店員が千鶴が頼んだドリンクと二人が頼んだ料理を持ってやってきた。

「お待たせしました、ご注文の……」

 店員の口上に先ほどまでの話の腰が折られてしまう。しかし、すでに飲んでしまったものはどうしようもなく、沖田も気にしないことにしたらしい。

「……まあいいや、千鶴ちゃん。お酒はほどほどにしてご飯食べよっか」

「はいっ」

 飲酒経験がほぼない千鶴が自分がしでかした過ちに、この時点で気づけるはずもなく。繁華街の路上でちょっとした騒動が繰り広げられるのは、もうしばらく後のこと。





END




以下あとがきあります





あとがき



お疲れ様です作者です。
作者初のおきちづでした。いかがでしたでしょうか

タイトルのロングアイランドアイスティーはウオッカベースの紅茶風味の
レディーキラーのカクテルでカクテル言葉は「希望」です。
未来への希望ってところでSSL沖田ルートの希望に満ち溢れたラストを彷彿とさせますよね
無印本編の幕末沖田ルートのラストはハピエンでも儚く切なく
「えっ沖田くん〇んだの?」みたいなアレでしたので
結核にもならず羅刹にもならず、本人も他キャラも誰も死なないSSL時空は癒しですよね
カクテル言葉なんですが、ミントジュレップも「未来への希望」なんですが
あのお酒はアルコール度数がとても低く、あれで泥酔はしないと思うので
(でも夏にぴったりの可愛いカクテルです。ミントの葉の緑や爽やかさが沖田くんぽいですよね)
レディーキラーのカクテルの中からそれっぽいのを探してみました

作中の「総司って呼んで」のシーンについて
SSLでも両思いになったとたん沖田くんは「沖田先輩じゃなくて総司って呼んで」
「総司先輩かあ……。先輩はいらないんだけど」って言ってましたので入れてみました
でも今のSSL千鶴ちゃん(二十歳の大学生)は、
沖田くんの下の名前呼び捨てはできないと思うので総司さんとなりました
行為の最中に急に下の名前で呼ばせようとしてくる男性については激しく既視感がありますが
今作はおきちづなので気にしないことにします
「えっ左之さん? こんなとこにいるわけないでしょ」

沖田さんといえば
薄桜鬼無印本編ではいたずらっ子で甘えん坊で意地悪で掴みどころがなくて
冗談ばっかりでエスっけがありつつも、終盤の両思いになってからの千鶴ちゃんに対しては
エムっけもあるみたいな感じで、SSLでも同様の印象だったので、
今回のような、大人びてる中に幼さもある冷たさと温かさを兼ね備えた
甘え上手なひとつ年上の彼氏に翻弄されながら
大人の階段のぼりたくてお酒の勢い借りちゃったテヘペロな大学生同士のR18となりました
大好きな沖田くんを突き放せない千鶴ちゃんの惚れた弱みに付け込んで悪さをしたり
ヤンデレイケメンヘラを炸裂させたりする沖田くんがいとおしいです

お酒の勢いで行為になだれこんじゃって、自分もほろよいのせいか、
千鶴ちゃんの洋服脱がすのに手間取ったりする沖田くんがかわいいです
避〇具新しくしたんだ〜って前振りをして、行為の最中ずっと千鶴ちゃんの体の中にいる
沖田くんの沖田くんを意識させちゃうずるさも良いです
自分から他の男の話(土方さんとか)を出しておいて、浮気したら殺すよ発言も愛おしいです。
やっぱり沖田さんは斬るよ殺すよ言ってくれないと〜!
他にも無印本編、随想録、黎明録、そしてPSvitaのSSLのゲーム中に登場した
セリフやエピソードを拾って入れ込んでいるので
(シナリオブックを何度も読み返しながら頑張りました)
探していただけたら嬉しいです。沖田くんらしく書けていたらいいなと思います。

しかし沖田くんは奔放な毒舌家なので書いていて本当に楽しかったです。
常識人には常識人の魅力がありますが、自由人は自由人の魅力がありますよね
「普通こんなこと他人様に対して面と向かって言わないでしょ」みたいなことでも
沖田さんは発言してしまえる人(キャラ)なので、彼がいるとコメディが捗ります
そして女子を追いつめる系の過激な言葉責めエロも捗ります
薄〇鬼はどの子もかわいいですね。みんな愛おしく、どの子のルートも神だと思います。

次回がいつになるかはわかりませんが、またお付き合い頂けましたら幸いです。
それではまた。





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