◆薄〇鬼NL小説◆

□【SSL原千】悪い子になっちゃう?
7ページ/7ページ

『いいぜ千鶴、お前のこれは最高だな……。……っは、ん……っ』

 千鶴の奉仕に応えて、原田もまたいやらしい言葉と息遣いを唇に乗せてくる。しかし。

『っと、録音してるんだったな……』

 近くに置いていたスマホに気がつき、さすがに気恥ずかしくなったのか、原田は自身の淫らな振る舞いを抑え、平静を保とうとする。

 しかし彼に乱れてほしかったらしい千鶴は、口内の彼自身をさらにきつく吸い上げた。

『んっ…… 上手いぜ、千鶴……。その調子だ』

 あからさまに乱れることはなくても、原田もまた快楽を得ているようで、時間の経過とともに、原田の息遣いが次第に乱れてくる。

 それと同時に千鶴の奉仕も大胆になってきたのか、ちゅううっという何かをきつく吸い込むような音がしてくる。

 とはいえ、経験豊富な原田を乱れさせるのは並大抵のことではなく、心地よさそうな吐息は漏らすものの余裕を失わない原田に、千鶴はじれったくなったようだ。

『……声、我慢しないでください』

『……さっきとは真逆だな』

『左之助さんに、もっと乱れて欲しいんです』

『おいおい、俺の真似でもしてるのか?』

 千鶴のあまりにもあけすけな要求に、原田はおどける。しかし、妙なところで誠実な彼は素直な本心を吐露してくれた。

『……男の喘ぎ声なんて、録っても仕方ねぇだろ?』

 原田の自分自身を卑しむような寂しげな声が聞こえるやいなや、千鶴は強い口調で抗弁していた。

『仕方なくないです……! 左之助さんの声聞きたいです。我慢しないでください』

『……何だよ、そんなにいいのかよ』

 千鶴の勢いにつられて、原田はもう何度目かの苦笑をする。自分に素直な欲望をぶつけてくる年下の恋人が、愛おしくて仕方がないようだ。

 やがて。千鶴の熱心な奉仕の甲斐あって、原田は感じている声や仕草を抑えなくなった。無防備な姿をさらけ出している。

『はあっ…… んんっ…… すげぇイイ……』

 原田は自らの怒張を千鶴にきつく吸われながら、恍惚に浸った様子でつぶやく。

『とんでもねぇ技、身につけやがって……』

 ぎし……とベッドのきしむ小さな音が聞こえる。原田が片手を背後について、上体をのけ反らせていたからだろう。

 千鶴の口淫の巧みさを揶揄しながらも、ボイスメモの中の原田は確実に余裕を失くしつつあるようだ。

『っは……。今までのも、今しゃべってるこれも全部録音されてると思うと……。っ、やべえな……。すげぇ興奮しちまう……』

 千鶴の吸い上げに合わせて呼吸を乱しながら、原田は掠れた声で素直な思いを口にする。

『こんなん初めてだぜ……。いつもよりずっと、ゾクゾクする……。お前も今までこんなにイイの味わってたんだな……』



「……左之助さんの声、かっこいいです」

「……何だよ、別に普通だろ」

 千鶴はどこか恍惚に浸った様子でため息を漏らすが、原田はいたって冷静だ。むしろ、なんとなく微妙な気持ちになっていた。

 千鶴の可憐な喘ぎや息遣いならいくらでも聞いていたいが、例え自分のものであっても、男の喘ぎ声に特別な感慨など抱きようもなかった。

 むしろ、性欲に支配された男特有の切羽詰まった卑しさや聞き苦しさばかりを感じ取ってしまう。

 しかし、千鶴はすっかり感激している様子で妙にはしゃいでいた。

「普通じゃないです! かっこいいです。ずっと聞いてたくなります……」

 浮かれた様子でそう口にして、千鶴は原田の裸の胸に頬を摺り寄せてくる。そんな彼女に、原田は再び意地悪をしたくなってしまう。

 といっても、今度は優しい意地悪だ。可愛い人から愛の言葉を引き出したいだけの。

「……ったく、かっこいいのは声だけなのか?」

「っ! 全部かっこいいです。見た目も中身も生き方も……! 左之助さんの全部が、かっこよくって大好きなんです……!」

 あまりにもあっけなく願いが叶えられて、原田は苦笑してしまう。千鶴の少女らしい素直さは、ときに原田の大人らしい打算も駆け引きも全て飛び越えてしまう。

 無邪気に全てを差し出して愛してくれる可憐な恋人に、原田も素直に礼を言う。

「……ありがとよ。まさかここでお前に褒めてもらえるとは思わなかったぜ」

 情事のさなかの喘ぎ声よりも、むしろこちらを録音したかったと後悔しつつ、原田は先ほどから再生しっぱなしだったスマホのボイスメモを、ようやく停止させた。

 千鶴の素直さに穏やかな満足を得た原田は、彼女のおでこに触れるだけのキスを落とす。

「……千鶴、好きだぜ。録音したやつはまた今度送ってやるから、今日はもう寝ようぜ」

 精神的な充足感を得たら、今度は睡魔がやってきた。今夜は大人げなく張り切ってしまったから、疲れたのだろう。

 スマホを床に落とし、手が届かないようにしてから。原田は千鶴の髪を優しく撫でた。

「そうですね……」

 千鶴もまた情後の疲労が訪れたのか、素直に同意してくれた。

「明日も早起きして出かけるんだろ?」

「はい、そのつもりです」

 明日は出かける予定があった。隣町の百貨店で、いわゆる買い物デートだった。

「まぁ俺はわざわざ出かけなくても、お前と一日ベッドの上でじゃれあうのも悪かねぇんだけどな」

「も、左之助さん」

 相変わらずの原田らしい軽口に千鶴は膨れるが、しかしそこは彼に愛されている恋人らしく、心の内で悪くないかもと思ってしまう。

 朝から晩まで原田とベッドの上でいちゃいちゃするのはきっと幸せだ。もうすっかり毒されている。彼なしじゃいられないほどに。

「――千鶴、おやすみ」

 原田の甘い囁きがふり落ちてくる。情後の恋人を寝かしつけようとする優しい声に、千鶴の瞼はおりてゆく。

「……はい、おやすみなさい」

 愛を交わしたあとの蕩けるような余韻の中、千鶴は幸福な眠りについた。明日の朝ちゃんと早起きできたのかは、ふたりだけの秘密だ。






END





あとがき


お疲れ様です、作者です。
こんなに早く次のお話が思いつけるなんて思っていませんでした。
前回更新から比較的早く新しいお話を公開出来て(当社比です)
とてもうれしいです。こんにちは。


今回はなぜか唐突にネタがおりてきたので書いてしまいました、
さのちづでまさかの録音エロでした。いかがでしたでしょうか。
個人的には原田さんは愛の営みを録音とか撮影とかは、
したがらなさそうだなと思っています。
むしろ「そんなもん、男ならてめぇの心に刻みつけとくもんだろーが」
って録音やら撮影やらしたがる層のことを、苦手に思ってそうなんですが、
ネタが降りてきてしまったので、書いてしまいました。
不思議ですね……。すみません……。
やや解釈違いな原田さんかもしれませんが、お楽しみ頂けましたら幸甚です。


それで、今回は若干解釈違いな原田さんになっちゃったかなと思いつつも、
一応原作要素も少しですが入れております。
「俺の前でくらい素直になれ」「だからお前も悪い子になっていい」
このあたりですね。SSLの告白シーンです。
あとは、今回も原田さんが喘ぐシーンを書いてみました。
自分は普段R18小説で男子キャラを喘がせたりはしないのですが、
原田さんはなんだか喘がせたくなります。Mっけのある人かなと思っているので……
あと薄桜鬼の男子キャラは苦しむ描写が多く、
羅刹になる子は特に吸血シーンや吸血衝動我慢シーンで盛大に喘いでくれて、
人によってはヒロインにすがったり、ヒロインに弱いところを多々見せたりもするので、
なんだか抵抗なく自然に喘がせてしまいます。


自分はいつもR18を書くときでネタがないときは、ハイブラの香水にインスピを頼るのですが、
今回のテーマ香水はヒプノティックプワゾンでした。
ディオールの名香で、タイトルは催眠性の毒、催淫毒といった意味で、
ボトルデザインや広告ビジュアルは、白雪姫が食べた毒リンゴがモチーフなんだそうです。
ドSで情熱的な原田先生に誘惑されて、媚薬入りの毒リンゴを食べさせられちゃう
無防備プリンセスな千鶴ちゃんは、きっと可愛いと思います。
ちなみに作業中BGMは他ジャンルですが某松のF6の
マジックナイトサティスファクションでした。
甘いテイストの過激目のエロを書くときはいつも聞いてしまう楽曲です。
こちらも歌詞に白雪姫や毒リンゴが出てくるんですよ〜〜


話がそれました。すみません、戻します。
今回のお話の萌えポイントは、ヤンチャでドSな原田先生と、
そんな原田先生にあてられてどんどんエロスに目覚めてしまう、
清楚系ビッチな千鶴ちゃんです。
今回の原田先生は本当にSっけ溢れる「ヤンチャでイジワルなド攻め紳士」で
今回はキャラらしさよりも、どう突き抜けるかをあえて優先しました。
大変な部分もありましたが、書いていてとても楽しかったです。
あと原田先生が自分の喘ぎ声が録音されてるのを意識して、
いつも以上に感じている場面も、書いていて楽しかったです。
ここはいつものMで素直な原田さんですね。


個人的に原田さんはレディキラーのカクテルっぽいなと思っています。
甘い口当たりで飲みやすくてつい沢山飲んでしまうんだけど
実は結構アルコール度数が高くて、
気が付くと酔いつぶれる寸前になっちゃってて……というやつです。
悪い男がお目当ての女の子を酔い潰してお持ち帰りするときに使うお酒です。
原田さんならキッスインザダークですかね。赤くて甘いお酒なので(笑)
ご本人もお酒好きって設定がありますし、ぴったりかなと思います。
しかしほんとに原田さんは罪作りな色男ですよね。もう大好きです。
そして、本当にどうでもいいんですが、
短い読切のお話の冒頭に前回のあらすじが入ってから本編が始まる、
このお話の構成って随想録に似てるなと思いました(笑)
原田恋情想起・其の十八禁、みたいな……(これが言いたかっただけです、すみません)


これ以上あとがき長くても仕方がないので、今回はこの辺にしておきます。
(身近に薄桜鬼語れる人がいなくて、ついここで語ってしまいます……笑)
こんなところまでお読みくださり、ありがとうございました。



次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ