短編

□唐突な話
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「お前の好きなやつって誰なんだ」


「は?」
びっくりした。まさかの質問すぎて素っ頓狂な声が出た。
びっくりしすぎて動いていた足が自然と止まり、変な質問を投げかけた隣の轟の方をみる。
おかしくないか?色々とおかしくないか?さっきまでしていた会話の内容と違いすぎない?
さっきまで何の話してたっけ....。
.....あ、そうそう。明日のヒーロー基礎学は何だろうって話だった。
話の流れもおかしいけど何よりおかしいのは...。
「どうしたの!?え、どうしたの!?轟がそんなこというなんて珍しいね??」
テンパる私をよそに轟はいつも通りの口調で頼まれた、と正直に話してくれた。
「誰に....」
誰だ、轟に変な質問をするように仕掛けた奴は。許さん。心臓止まりかけたぞ。
「峰田と上鳴に、さっき教室出る前に」
「よし、殺ろう」
「どうした、いきなり」
「いや、ごめん何でもない」
あの野郎ども....面白がりやがって後で締める。絶対だ。
何となく後ろを振り返ってみると私と目が合った瞬間に曲がり角に姿を消した2人を見つけた。
後つけてきたのかアイツら....。
「とりあえず、食堂行こう」
「? ああ。」
私は轟の腕を引いて足早に食堂へ向かった。







「ていうか珍しいね、頼まれたからって轟がそんな話題出してくるなんて」
ちなみに私はオムライスで目の前の轟は好物のそばをたべている。
「しつこかったから仕方なく聞いてやった」
そう言って轟はちゅるっとそばを啜った。
私はちゃっかり彼の斜め後ろの席に座っている峰田と上鳴を睨む。向こうもそれに気づいたのか焦った様子で昼食を食べはじめた。
心の中で舌打ちをしたとき、轟が言う。
「で、誰なんだよ」
「ん?」
「お前の好きな奴」
「んんん??」
待ってくれ、この話続いてたの?え、そうなの!?
前を見るとじっとこちらをみる轟と目が合う。
そんなん言えるかばかやろう....!!
目の前にいるお前だ、なんて言えるかばかやろう!!
「....轟ってこういう話には興味ないと思ってた」
「そうだな」
うっ、そんなはっきりと...。
「じゃあ何で....何で」
私の好きな人のこと知りたいの、そう聞くと真顔で、私の顔をまっすぐ見て轟が口を開く。
「気になるからじゃねぇか?」
「私に聞かれても...」
「俺、お前のこと好きだぜ」
「..............」


「...は!??!?」
思わずガタッと勢いよく立ち上がると私と同じように立ち上がった峰田と上鳴が見えた。
なんの冗談....。いや、ないない。そんなことないない。
私に爆弾を投げた張本人はしれっとした表情でそばをもぐもぐ食べている。
口ちっちゃい、かわいい。..........じゃなくて!!
顔が熱い、全身が熱い。


「え、あの...轟...?」
やっとのことで声を出すとそばを食べていた彼は立ち上がっている私を上目で見た。
「お前は友達だからな」
「へ、と、ともだち.....?」
友達、友達....。うん、なんか、そんな気がしてた....。
「はぁ〜〜...」
やっぱりそんなオチかと脱力して椅子に座った私にお前飯食わないのか、と轟は呑気に言ってきた。
「食べますよ〜、もうそりゃあいっぱい食べますよ〜」
食べなきゃやってらんない、そう吐き捨ててオムライスにがっつく私。女子力の欠片もない。
もう何でもいいや、はぁ...。
しかし轟が友達だと言った時に笑ったあの二人だけはやっぱ締める。爆豪ほど口は悪くないけどこの時だけは内心でぶっ殺すと叫んでいた。

ヤケクソ気味にオムライスを食べる私を見て、轟がイタズラが成功したように可笑しそうに笑っているなんて私は気づくはずがなかった。








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