短編

□おかしな彼女
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ボンッと大きな爆発音。さっきまで騒がしかった教室が一気に静かになる。
爆発音を出した犯人、爆豪勝己は怒りで目をギラつかせてフー、と息を吐いていた。
あぁ、なんていい表情をするんだろう。
あの目を、顔を自分に向けてくれたならどれだけ幸せか。
教室の隅の席でミョウジナマエは爆豪が緑谷に手を出しているのをそんなことを思いながら見ていた。
ヒーロー科1-Aの教室では珍しくない光景だ、しかし周りのクラスメイトはヒヤヒヤしながら今注目の的になっている2人を見つめている。
「おいやめろって爆豪...!」
「うるせぇ!離せ、テメェもぶっ飛ばすぞアァ!?」
物怖じせずに切島が暴れる爆豪の両腕を後ろから取って止める。そんな光景にクラス中が助かった、と安堵の息を吐いた。
怒れる爆豪を宥めることが出来るのは、というよりキレてる爆豪に近づくことが出来るのは切島くらいのものなのだ。
「ご、ごめんかっちゃん...!」
「あ!?」
「ひぃぃっ!!」
緑谷が謝罪を口にしてもイライラが収まらない様子の爆豪は切島の必死の宥めで少しずつ落ち着きを取り戻していく。
そんな爆豪を見てナマエはあーあ、と落胆の声を上げた。
もったいない、切島くんなんてことをしてくれるんだ。もう少し見ていたかったのに。
すると、今まで黙って見ていたナマエがよく通る声で爆豪の名を呼んだ。
爆豪はそれに返事もせずギロリと鋭い視線を寄越す。
それだけでナマエゾクゾクと気持ちが高まった。
最高....。
思わず笑みが零れる。
「....きもちわりぃな」
ナマエの恍惚とした笑みをみた爆豪が呟く。その呟きを彼女も聞きとったようでありがとう、と会話になっていない返事をした。
「こっち見てんじゃねぇよクソが。いつもいつも俺のこと気持ちわりぃ顔で見やがって....殺すぞブス」
そんな爆豪のきつい言葉にもナマエは傷つかなかった。それどころかますます笑顔になっていく。
あんなことを言われて喜ぶなんてきっと彼女くらいのものだ、クラス中がそう思いながら呆れていた。
「爆豪くん、もっと!お願いもっと私のこと睨んで!もうほんと殺す勢いで!!」
「..........」
そんなことを嬉々と言うナマエに爆豪もさすがにドン引いてチッと舌打ちをひとつして教室を出ていった。
「あ、まって!!」
追いかけてきたナマエを爆豪は爆破で吹っ飛ばしてひと睨みしてからまた歩き出した。
「いったぁ.........」
「おい大丈夫かっ!?」
床に座りこむナマエに切島が慌てて駆け寄る。心配の言葉をかけるが当の本人は痛みに顔を歪めるどころか歓喜に満ちた表情をしていた。
「ふふっ...」
今日も爆豪くんから痛みを貰えた、そう言いながら先ほど出来た腕の傷を彼女は愛おしそうに撫でた。
そんな狂気じみた彼女を見ながら切島は苦笑いを浮かべることしかできなかった。







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