les yeux comme les etoile(STORY)

□七星士との出会い
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辺鄙(へんぴ)な、かろうじて人が通れるように整備された凸凹の道。
側には枯れた木々がぽつりぽつりとあるだけの場所。
そこに突然黄金の光で輝く球体が現れる。
その中からふわりと樹里が姿を現した。

すとん・・・と樹里は静かにその場に舞い降り、あたりを見渡す。


「・・・・本当にここ?。」


ーこのような辺境の地に・・・?。
新たなる朱雀の巫女が現れるであろう場所に転移したはいいが、このようなところにいるのだろうか・・・。
そう考えながら樹里はしばらく立ち往生していると、唐突に樹里が現れた時よりも激しい朱い光があたりを照らした。


カアアアアアアア!


「・・・・・朱雀の光!」


樹里は目を凝らしてその光の先をみつめる。
不思議と眩しいとは思わなかった。


ーさあ、朱雀の巫女、私に姿をみせて・・・?。


期待を胸にその光の根源である場所に歩みを進める。
完全に朱い光が無くなってその場に現れたのはあの図書館にいた二人、そう美朱と彼女の友人、唯であった。


「・・・・二人・・・?。」



ーなぜ・・・。

本来ならば巫女という存在はその四神の司る場所に一人と決まっており、現れるのも一人であるはずなのだが、なぜか二人とも朱雀の光をまとってこの四神天地書の中に誘われたのである。


樹里は歩みを進めていた足を止め、困惑する。



ー一体どちらが朱雀の巫女・・・?


樹里は巫女を見極めるためにも二人から見えない場所に隠れる。
じっと彼女たちの行動を影から静かに観察する。
樹里に見張られていることなど知らない二人は、相変わらずやいややいやと騒ぐ。


「ちょ、ちょ、唯ちゃん、ここ、どこ・・・?」


おろおろと落ち着きなく騒ぎ出す美朱。
美朱とは対象的にただ静かに辺りを見渡す唯。


「美朱・・・・・これ、痛い・・・?」


ごつーん!
唯は思いっきり美朱の頭頂に肘鉄をお見舞いする。
うおおおおおっと女らしからぬ声をあげて自身の頭を押さえる美朱。

いきなり肘鉄をお見舞いしてきた唯をひと睨みした美朱は、い、痛かったわ〜〜〜〜〜!!と唯を張り飛ばした。



「い、痛い・・・・痛すぎる。夢にしては痛すぎるわ・・。」



美朱に仕返しされた唯は、腰を押さえながら痛みに悶える。
夢であるなら痛みもないはずなのに・・・ひりひりと痛む患部を摩る唯。
しかし、美朱は今置かれている現状よりも重要な悩みがあった。
唯に背を向け空天を見上げて大声で咆える美朱。


「夢であってもなくても・・・。ここには、ダブルバーガーも、ナッツとレーズンのトッピングアイスもなぁぁぁぁい!」


ー・・・今はそんなことなんだっていいんじゃないかしら。


見ていた樹里がつい突っ込んでしまうようなことを真剣に悩み始めた美朱。
それを思ったのは樹里だけではなかったようで。



「おめぇは食いもんの心配が一番かーーーーー!」


漫才コンビもおっかなびっくりな勢いでツッコミを入れた唯。
唯が何考えてるのよ美朱!と呆れ返った次の瞬間、男の腕が力づくで彼女を押さえつける。
驚き目を見開く唯。しかし、その様子に美朱は気づくことなく未だ恋しい自国の食べ物について語らっている。


満足いくまで語り尽くした美朱が最後に”どうしよう!”と唯に話を持ちかけた時。
ようやく美朱は自分の大親友に起きた危険に気がづいた。


「唯ちゃん!!!」

「み、美朱!!!」


唯は押さえつけられながらも必死に抵抗する。
現代っ子美朱はこの状況をうまく把握しきれず唖然とする。一方唯を捕らえている男達は、ニヤニヤと笑いながら言った。


「こいつぁ、上玉だぞ。結構な金になるぜ・・・なあ?」

うへへへへへと気味の悪い笑い声をあげる男達。
その様子を不思議そうに見る美朱。

その傍、樹里はいつでも巫女を守れるように呪を唱える準備をする。しかしすぐその修羅場に出ようとはしなかった。
ー悪いけれど、どちらが本物の巫女か試させてもらいましょう・・・。巫女ならば朱雀の力の何かが反応を起こすはず。
緊張した面持ちで二人を見守る樹里。

しかし美朱が思いっきりこの場に沿わない発言をした。


「なに?こいつら・・・・。
おじさんたち、中華舞踏団??」


・・・・・・・・。


黙りこくる一同。
美朱以外の全員の頭に男たちが中華舞踏をする様子が浮かび上がる。


ー・・・・・美朱さん・・・。
がくりと項垂れる樹里。

もし彼女が朱雀の巫女だったら、この先大丈夫だろうか・・・。危機感が無さすぎる。
行き先を本気で心配していたとき、一人の男が怒った様子で怒鳴った。


「あほぉおおおお!俺たちは人買いよぉ!」


美朱のとんでもない勘違いと認識を訂正しようと自らの恐ろしさを威張り散らす人買いたち。


「っっえええ!?」


ようやく事の重大さに気づいた美朱は声を上げる。
中華舞踏団などと言われプライドが傷つけられた人買い達はその驚きの声が恐怖からくるものだと解釈すると、途端に鼻高々に自己自慢をし始める。

が、美朱はそのようなこと知ったことではないと、思い切り加速をつけ、唯を押さえる男に自ら体当たりをした。


「ええええええええええええい!!!」


倒れる美朱と唯と美朱に攻撃された男。
被害の一番少ない唯はすぐさま美朱を振り返る。


「美朱!!!!」

「唯ちゃん!逃げてーーーーー!!!」


倒れる美朱を心配する唯。
倒れながらも唯の身を一番に考え叫ぶ美朱。
剣を引き抜き反撃してきた美朱を脅そうとする男達。
美朱たちを助けるため呪を唱えようと構える樹里。



それぞれの顔が己の感情のままに変化する。
張り詰める空気。
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