赤い糸

□episode 3
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桜が散り、緑の葉を付け始めた頃、私も学校生活に慣れてきた。
それぞれ委員会も決まり、私は夏海と一緒に図書委員をやる事に。


今日は私の当番の日ではなかったが、中間テストが控えているので放課後、静かな図書室で復習を兼ねて勉強する事にした。夏海と一緒に男子テニス部を見に行こうと前に約束したけど、彼女も部活を始めることになり、なかなか見に行けず今に至る。私も誘われたけど、高校に入ったら部活はやらずに勉強に専念しようと決めていたので部活には入らなかった。





勉強を始めてから30分程経過した頃、図書室の扉がガラッと開き夏海が私の元へと駆け込んできた。



「ど、どうしたの?」


「結衣!ごめん!今日、私が当番なんだけど急用が出来ちゃって出れないの!代わって貰えないかな…?」



手を顔の前に合わせて深々と頭を下げる夏海。図書室にいる生徒が唖然としながらこちらを見ている。

そんなに頭を下げられたら周りから変な目で見られるし、恥ずかしいから止めて欲しい…。それに、どうせ勉強する為に図書室にいるつもりだったので彼女と代わってあげる事にした。



「いいよ。私もまだ図書室にいるつもりだから。」


「本当!?ありがとう!助かるー。明日何か奢ってあげるから!じぁね!」



私に笑顔で手を振りながら彼女は風の如く走り去っていった。
さて…。とりあえず、勉強は中断して頼まれた図書委員の仕事をしよう。机に広げたノートや教科書を片付けて、司書の先生の部屋へと向かう。ノックをした後すぐに返事があったのでドアノブを回し中へ入る。


「失礼します。宮原さんの代わりに今日は私が委員の仕事をやります。」


「あら、そうなの?オッケー。じゃぁ…広瀬さん。さっそくで悪いけど、そこの本の山を元の場所に戻しといてもらえるかしら?昨日の委員会の子やり忘れたみたい。私も昨日はいなかったし、今日も忙がしくて出来なかったの〜。」



「はい!どれでしょうか?」


元気よく返事をしたものの、先生に指差された先を見て絶句する。そこには返却された本の山…。



司書の先生というと、おしとやかな女性のイメージがあるけど、ここの先生は男勝りというか、はっきり言ってしまえばズボラな性格だ。でも、とても気さくな先生なので話しやすい。もしかしたら学校の先生の中で一番話をしている相手かもしれない。


「あ!あと先生、席外すけどいいかな?」


「え!?…わ、わかりました。」


「ありがとう。よろしくお願いね。」



そう言って先生は私を部屋に残し図書室から出ていった。夏海といい、先生といい、今日は頼まれ事が多い日な気がする。

しかし、すごい量だ…。多分、返却作業で放課後は終わってしまうだろう…。しょうがない。勉強はお預けだな。時間もそんなに長くはない。気合いを入れて片付ける事にした。
片付けやすいよう種類別に仕分け、手際よく本棚へ戻していく。山積みだった本が残すとこ後僅かとなった頃、窓から茜色の光が差し込み私を照らした。そして、ふと時計に目を向ける。



「うわ…もうこんな時間!ふう…。でもあと少し。」



独り言と小さなため息を付きつつも、残りの本を片付けるために本棚へ向かう。
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