【short/他】

□一夜を共にした人は会社の上司でした
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『わぁ・・・』


食卓に並んでいたのはホットサンドとスープとサラダとフルーツの乗ったヨーグルト。
即席だとは思えないくらいバランスの良さそうな朝食だった。


『美味しい・・・』


そして美味しい。ルックスも良くてご飯も良いなんて完璧男子じゃないだろうか。
私の一人朝食なんて、むしろ食べないか、食べてもスープかヨーグルト。もはや朝食と言えないレベルの献立だった。ここでも女子力終了のお知らせです。


「良かった。ホットサンドなんて普段めったに作らないから味が心配だった」
『いや、ほんと美味しいです。お店に出せるくらい美味しいですよ』
「ははっ、褒めすぎだから。でも誰かの為に作るのとか嫌いじゃないからね」
『松川さんの彼女さんは幸せですね』
「俺、彼女いないから」
『・・・え、嘘!こんなに良い人なのに』
「ははっ、ありがとう。でも彼女いたら女の人連れてこれないよ」
『そう、ですよね・・・彼女でもないのにお邪魔しちゃってすみません・・・』
「まぁ、あの状況でほっとくわけにもいかないしね」
『すみません・・・』
「△さんが良ければ、またいつか呑んでくれればいいよ。俺も独り身で暇だから」
『はい、是非』
「ところで会社は大丈夫なの?」
『あ、はい。今日は午後出勤で1時からで』
「そうなんだ。俺も午後出勤なんだ。車だから良かったら送ってくよ」
『いやいや、そんなことまでして頂くわけには・・・』
「遠慮しなくていいよ」
『・・・何から何まですみません・・・』
「うん」


松川さんの車に乗せてもらい、出勤することになった。





『あ、松川さん。ここで大丈夫です』
「そう?じゃあ、車停めるから降りて待ってて」
『え?あっ、ま、松川さんっ』


待っててって・・・松川さんはどこの会社なんだろう。この辺の近くなのかな。
ビルの前で降ろされて松川さんを待つ。


「お待たせ。じゃあ、行こうか」
『え・・・?は、はい』


車を停めてきた松川さんは何食わぬ顔で、エレベーターに乗り込む。
・・・同じビル内の会社なのかな?うちの会社は自社ビルを持ってるから他の会社が何社か入ってるし。
そんなことを考えているとエレベーターは目的の階へ到着して、私は慌てて鞄からパスを取り出す。ドアが開くと松川さんと私が降りた。


『あれ?』


松川さんもパスに触れてゲートを通った。振り向いてパスを持ったまま唖然としている私を見てクスッと笑った。



「俺、今日から君の上司なんだよね」
『えぇええー!!!』




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