熱闘甲子園

□熱闘甲子園 過去編
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熱闘甲子園22 このときのお話

haruka side

カチカチカチ 時計は15:10を指している。

バタバタバタ

「こらぁ!!廊下は走らない!!」看護師長さんの怒号が響く。

遥「また怒られてるしw」

?「由依ー、待ってよー」

「こらぁ、そこのあなたまで!!」

病室のドアがザッと開く。

由「ふー、ついたぁ…」

制服のYシャツに身を包んだ青年が息を切らせてやってくた。
遅れて上着にジャージを羽織った女子も到着。

島田「由依……速すぎだって…」

由「晴香が出発、もたもたするからやろ?」

島「だって、先生に提出物集めろって」

由「まぁ、いいよ。無事着いたし。それより今何時?」

遥「3時10分」

由「30分はいれるな。よっし!」



私の名前は島崎遥香。10歳の小学生5年生
生まれつき体が弱くてよく入退院を繰り返している。

で、今走ってきたのが横山由依。17歳高校3年生。野球部でライトを守っている。
由依とは家が隣で親同士が仲がいいので、歳は離れているがずっと一緒だ。
と、由依の所属する野球部のマネージャーの島田晴香ちゃん。
私と名前が似ているからと由依とよくお見舞いに来てくれる。

すると由依たちが来るのを見計らったようにお母さんが買い出しから帰ってきた。

母「由依くん、それに島ちゃんまで。毎日毎日ありがとうね。」

由「いえ、毎日バタバタとお邪魔してすみません」

母「いいのよー。遥香も退屈みたいだし。それにしても、今日は速かったわねー。」

由「ホンマですか?!毎日来たから持久力ついてるかもしれません。」

アハハハハ

母「ジュース買ってきたから、飲んでいってね。練習頑張ってねー。」

由「はーい。」島「ありがとうございます。」

遥「ねぇねぇ、島ちゃん!!」

島「はいはい、持ってきたよー!」

そう言って島ちゃんが紙袋から取り出したのは大量の写真

由「あぁ、この前の」

島「そうそう。ぱるちゃん、この前の大会応援行きたがってたのに、これなかったから。
写真部の美宥に頼んで借りてきたの。」

遥「わぁー!由依だ!!」

島「由依ね、この間の試合大活躍だったんだよ。」

遥「えー、見たかったなぁ」

島「えっとね、この写真はね。由依がフライを捕って、2塁に投げてダブルプレーしたとき。
カッコよかったー。」

遥「えー!すごい!!」

由「やめや、はずいやんか…」

島「そんなに照れなくてもいいじゃん」

由「んっ…もう!」

遥「はぁ、今度の試合こそ行きたいなぁ。ねぇ島ちゃん、次の試合いつ?」

島「来週の日曜日だよ」

遥「行きたいなぁ」

由「そんなに来たいんやったら、ちゃんと元気にならな」

由依は私の頭をポンポンと撫でる。

遥「うん!」

島「ねぇ、由依。時間……」

由「やっば、監督に怒られる!晴香帰ろ」

島「じゃあね、ぱるちゃん!」

遥「練習頑張ってね!」

由「おう!また明日な」

二人は部活の時間になり帰ってしまった。















次の日曜日。私は病院を退院できて、由依の試合を見ることができた。

母「県大会準決勝だって!」

遥「すごいよね、由依!」

母親同士仲が良く、家も隣なので小さい頃から7つ上の由依の野球の試合を見てきた。
正直野球のルールがわかってきたのは最近のことで、島ちゃんが教えてくれた。
でも、それまでもそれからも、試合にくる目的は由依を見ること。
野球をしているときの由依は、普段の優しくておっとりした由依とは少し違い、
キラキラしててカッコよかった。

遥「あっ、島ちゃーん!!」


ベンチの島ちゃんを見つけて声をかける。

島「あっ、ぱるちゃん!!」

「「おっ、マジで!?ぱるちゃーん!!」」

他の野球部の人も手を振ってくれる。よく試合に行くので顔を覚えてもらっていた。





試合が始まると私の目にはライトの由依しか写っていない。

母「あのピッチャーの子イケメンね」

由依母「もぉ、何言うてんのよ!倍以上違うのよ」

アハハハハ


なんて話しているお母さんたちは放っておいて、由依を追いかける。


守備のときはボールがいつ飛んできてもいいように、じっとバッターの方を睨む。
攻撃で打順のときは遠くを見据えてバットを構える。
打順じゃないときもベンチから仲間の応援を誰よりも大きな声でする。

由依が他の誰よりもカッコよかった。

歳上だからだろうか?クラスの男子にはない落ち着きに惹かれているのか?
でも、ピッチャーのキラキラした人より、ライトの一生懸命な由依に目を奪われていた。

そうこうしているうちに試合は終了。
いつものことだが、由依ばかりを見ていると試合の流れなんか途中から追えていない。
5-2で勝利したそうだ。

由依母「これで来週の決勝に勝ったら!」

母「ついに甲子園ね!」

由依母「ほんまに信じられへんわー」

母「由依くんすごいわねー」






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