熱闘甲子園

□熱闘甲子園12
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miyuki side

地区大会も第3試合

2回戦はチームワークを取り戻し、アキバ学園と山本彩の名前が地元メディアに
取り上げられるようになった。もちろん、イケメン天才投手として。
地区大会にもかかわらず、球場にはたくさんのギャラリーとメディアで一杯だった。

控え室前の廊下は記者とカメラの山。

指「はーい、道開けてくださーい」

記者「山本君、今日の調子はどうですか?」
記者「今日応援に来てくれてる人にはひとこと!」

山「精一杯、僕の野球をするだけです。甲子園で待っててください。」

指「はーい、下がって、下がって」

ギャラリー「「「きゃー、やまもとくぅーん」」」

控え室入り口には彩ちゃんを一目見ようとギャラリーが押し寄せる。
ギャラリーといっても、うちの高校の女子生徒とそういうのが好きなおばちゃんたちだ。

やっとの思い出ベンチについた彩ちゃんたち。

山「指原、さっきはありがとう。」

指「//ううん。大丈夫だよ。」

山「あっ、今日の相手校のデータ見して」

指「はい、これ。」

指原さんの後ろから一緒にデータの載ったノートをみる。
彩ちゃん、近いって。

山「打率はそうでもないみたいやけど、打たれると大きいみたいやな……」

指「そうだね。」

山「これ、いつ作ってん?」

指「昨日は遅くまで……」

山「すご。やっぱ、指原すごいなぁ」

指「私はみんなのために、やれることやってるだけだよ。」

横「はーい、ミーティングはじめまーす」


ミーティングが始まると、それぞれが監督を中心に円になり定位置に着く。
監督を中心に左に北原くん、彩ちゃん。右には指原さん。
私とぱるるは輪の外でみんなの背中をみる。

指原さんは私にはできないことができて、みんなと一緒に野球ができる。
同じマネージャーのはずなのに、こんなにも差ができてしまうのか。

私は彩ちゃんのために何ができているのだろうか。
私がしていることは正しいのか。




遥「みるきー?ねぇってば。」

美「えっ?」

遥「すごい顔してたよ。」

美「ホンマ?」

遥「山本くんでしょ?」

美「えっ!!!」

遥「見てればわかるよ。どんどん遠くに行っちゃう感じ?取材とかすごいもんねー。
淋しいんでしょ?ちゃんと捕まえとかなきゃダメだよ。」

美「う、うん………」








そうこうしていると、ミーティングが終わり試合が始まった。

客席には彩ちゃん目当てのギャラリーで一杯で完全にホームになっていた。
そんな声援を浴びながら、第3試合も難なく勝利した。



sayaka side

球場から学校へ戻り道具を置きに帰る。
するとみるきーから『部室で待ってて』とメールが来ていた。
なので、部室で待っているのだが。呼び出しておいて待たせるってなんなん!


ガチャ


美「ごめん、彩ちゃん待った?」

彩「待った」

美「洗濯機回そうとしたら、洗剤なくて買いに行っててん。」

彩「そっか、お疲れ」

美「うん」

彩「で、なに?」

美「あっ、そうだ……」

みるきーは急に様子が変わり、下を向き顔をそらした。




部室の窓から照る夕陽が全てを茜く見せる。




美「私ね、彩ちゃんのコトが好き。もう、どうしようもないくらい。

野球に真剣で頑張ってる理由もしってるから彩ちゃんの邪魔はしたくないって思って

今まで隠してきたけど。最近、彩ちゃんが遠くに行っちゃう気がして、もう隠しきれない。

なぁ、彩ちゃん…………」





みるきーはオレの目を見つめ、自分のネクタイに手をやりスルッと外すと
カッターシャツのボタンをゆっくり上から外していく。


彩「ちょ、みるきー?」

美「なぁ、彩ちゃんの好きにしてええから。私を彩ちゃんのモノにして……」

真っ白な肌と鎖骨までは見えた。
それ以上は反射的に見てはいけないと思い、とっさに目をそらした。
しかし、みるきーは僕の胸に飛び込み背中に手をまわす。
柔らかいものが当たっていることは言うまでもないだろう。

彩「みるきー?」


美「お願い。私ね、ずっと彩ちゃんの一番そばで応援してたいの。

ホントはね、東京に来るのも迷ってたん。奈良にお母さん一人にさせちゃうから。

でもね、お母さんが行ってこいって。好きなようにしぃって言ってくれたん。

せやから絶対彩ちゃんのこと離したくないねん。

何言ってんねやろな、自分。押し付けがましいよな。ただの自己満やな。

でもな、それくらい本気やねん。彩ちゃんが人気になっていくのもう見てられへん。」



みるきーが話をしている間は、ちゃんと聞いていた。
でも、さすがにこのままではいられないので、近くにあったジャージを手探りでとり
みるきーに羽織らせ、オレから離れてもらった。

オレは、みるきーを見ないように背を向ける。


彩「やめてくれ。オレも男やから。そういうのはみるきーのことちゃんと好きな人にし。」

美「彩ちゃん………うっ………」

みるきーは泣き出し、ベンチに座り込んでしまった。






オレはサッと見えてはいけないものが見えてないことを確認して、
みるきーの隣に座り、嗚咽するみるきーの背中をさすってやった。

女の子が泣いてるなんて初めてだから、他に何をすべきなのかわからなかったというのが
本音だ。



彩「ごめん、オレがもっと器用な奴やったらみるきーの気持ちにも応えられてたんかな。」

美「ううん。私、知ってるのに。野球頑張らなあかん理由知ってんのに、
こんなこと言ったのがあかんねん。」




オレがここまで野球にこだわる理由。

小4で兄貴たちの影響で始めた野球。リトルリーグ、シニアリーグとそこそこの優秀選手だった。
秋葉学園大阪校は一般入試で入った。選んだ理由は野球ができて、そこそこ強かったから。
野球は部活程度で、普通に進学か就職かしようと思っていた。
でも高校に入ったと端、状況が一変した。父親が死んだ。不慮の事故だった。
一家の大黒柱を失い、母さんとオレ、兄2人姉1人不安定な状況に陥った。
オレ以外は成人し、大学や就職をしていた。父親を失い、正直兄弟たちの稼ぎだけでは辛く
オレもバイトしなければならないぐらいだった。
しかし、兄姉が『お前は気にせず好きなことをつきつめろ』と言ってくれた。
家族の中で末っ子のオレだけが好きなことをやることに抵抗しかなかったが、説得され
オレは好きなことをやらせてもらっているから、家族のために野球を頑張ると誓った。

オレは必死に練習した。朝から晩まで時間を見つけてはずっと野球をしていた。
おかげで1年ながらレギュラーをとったり、地区の優秀選手に選ばれるようになった。
みるきーはそんなオレをずっとみていたのだろう。

東京校の選抜の話は本当に嬉しかった。学費生活費がタダで、野球に没頭できる環境。
何より家族に恩返しができると思った。



彩「なぁ、みるきー。オレなんか好いてくれてありがとうな。でも、やっぱ今は無理やわ。」

美「うん。わかってた。」

彩「でもな、これだけは言える。みるきーにはホンマに感謝してる。
大阪校のアパート。白間と矢倉が餓死せんとちゃんと食えてるのも、
みるきーが家事手伝ってくれてんねやろ?知ってんで。
学校の勉強も、部活のマネージャーも、家に帰ったら後輩の面倒見て、ホンマにすごいよな。
みるきーにこんなこと言われて置いて言うのも申し訳ないねんけど
オレらにとってみるきーは必要やねん。だから、ここにいてくれ。」


美「うん……」





辺りはすっかり暗くなり、帰ろうと部室を出た。
みるきーはなんだか吹っ切れた様子だった。女ってつよいなぁ。。。


廊下を出るとスコアブックが落ちていた。

彩「あれ?」

美「誰?こんなとこに、もぉお!!」

みるきーは文句を言いながらも部室に中にしまい、暗いし家も同じなので一緒に帰った。



end
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