story

□灰色の故郷と君の色
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耳障りなバイクの音。
駆動音。ウインクみたいな点滅が二回。
窓越しに見えるは鼻下を擦る彼の笑み。


「迎えにきたよ、チョロ松」


このまま”うみ”に行ってみよう、と。
そう語る彼は今まで見たどの色よりも鮮やかで。
今までどこ行ってたって、絶対怒鳴ってやるつもりだったのに。
まあそれもこれも全部、後でもいいかなって。
徹夜で握っていたペンをほっぽり出して、僕は笑うんだ。
彼のバイクの後ろに乗って、何年ぶりか分からない体温に身を預け。

「おそ松、僕ずっと待ってたんだから」


まあるい瞳が泣き顔みたいに笑ってそれで。
僕らは空に、飛んだんだ。







例えばそれは、朝霧の様に街にまとわる煙で。
例えばそれは、昼夜を問わずアスファルトに反響する機械音で。
夜闇にプラズマの夜光虫が舞い、巻き上がる排気ガスが胸いっぱいに染みこんでくる。
そんな酷く現実的で幻想的なのこの街に、僕らの故郷に今日、僕らは別れを告げる。
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