story

□一年だけの恋人 上
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チョロ松が俺に向ける好意には、けっこう前から気づいていた。
多分俺だけじゃなくて、他の兄弟も薄々感づいてはいたと思う。


チョロ松は、俺の弟である松野チョロ松は、兄である俺、松野おそ松に恋愛感情を抱いていた。

でもチョロ松は馬鹿じゃない。寧ろ兄弟の中ではまともな部類で、ついでに気がききすぎる方で。
だからそりゃあもう必死にその気持ちを抑え込んでいるのが分かった。
見ているこっちが痛々しくなる位一生懸命に、あいつは普通の兄弟を演じていた。


俺はというと、見て見ぬふりをした。

俺はチョロ松の事は弟として好きだったし、チョロ松の方だって気の迷いという事もあり得るし。

だから俺は優しくて鈍感な兄を、チョロ松は常識がある普通の弟を演じていた。
他の兄弟も、特別突っ込んで聞いてくる奴は、誰一人としていなかった。






でも、一年たっても二年たっても、チョロ松の感情は変わらないようだった。

それどころか兄弟を演じる姿は、日に日に苦しそうになっていて、正直見ていられなかった。
他の兄弟も同じことを思っていたのだろうか。

ある日弟達を代表するように、カラ松がぽつりと問いかけてきた。


「どうするんだ?」


まあ要するに、どうにかしてくれっていう弟達からのSOSなんだろう。

俺は困った様に肩を竦めて「何とかするさ」とだけ答えた。
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