story

□依存の話
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時々、どうしようもなく苦しくなる時がある。

もう随分前から分かりきっていた事だけど、自分はクズでゴミで、だからこの世に必要が無くて。
それなのに何で生きているのかも分からなくなる日が、時々、ふとした瞬間に訪れるのだ。


ああ、いっその事死んでしまおうかな、と。

そんな時は必ず「楽な道」が頭をよぎる。

全てを捨ててこの世にサヨナラしてしまえば、何も考えなくて良くなれば、きっと今よりは楽になれるから。


でもそんな時は、必ずアイツが声を掛けてくる。



「なぁ、一松」



パーカーから香る仄かなヤニの匂い。
六つ子の長男松野おそ松。

兄はいつも通りの余裕を含んだ声音で、闇に溶けそうな僕を呼ぶ。

「お前はお前のままでいいんだよ。難しい事は考えるなって」

おそ松は、弟想いの兄らしく元からぼさぼさの髪を更に乱す様に頭を撫でて、「お前には俺らがいるだろ?」って笑うんだ。

歯を見せて、ニイと口端を吊り上げて作った笑顔は、実におそ松らしい、おそ松の笑顔なのだが。
その笑顔はいつも泣いているようも必死に縋っているようにも見えて、だから僕はいつも兄に助けられた弟の顔をして「うん」と素直に小さな声で答えるのだ。



こうして僕は今日も生きている。

長男からもたらされた甘ったるい飴を受け取って。
用意された居場所を受け入れて。


そしてまた"そんな時"がきたら、おそ松は僕に言うのだ。


「なぁ一松、お前はお前のままでいいんだよ」










――――
あとがき

おそ松は、一松にわざと優しい言葉とか一松の欲しい言葉を与えることで、一松を兄弟に依存させようとしていて、一松はおそ松が依存させようとしている事に気づいているけど、それを突き放すことはせずにその場所にいることを選んでいる。それは半分は既に自分が依存しているからだけど、半分は誰よりも兄弟に依存しているおそ松のため。
おそ松は一松が優しい事を知っているからこそ、こういうやり方を取って自分達から離れられなくしている。
…って言うような関係の話しが書きたかった…!!どっちも相手の事を全てわかった上でのやりとり、みたいな、ね!!(
そんな関係ならおそ一もアリかもとか一人で悶えていました


おそまつ!

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