贈り物

□emotion
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「ねぇねぇ、これなんかどう?」

大きなショッピングモールに来ていた2人は目に付くショップに入っては色んな種類の服を見ていた。

人も多く、コソコソとする周りの声も聞こえていたが、最後にはみな『でも女の人だから違うよね』と言ってその場を通り過ぎて行く。

「うん、いいんじゃないかしら」

笑顔でうさぎに差し出された服を手に取り自分に少し当ててみる。パンツにもスカートにも合いそうなニット素材のトップス。

「ヒーラーとお揃いがいいなぁ〜・・・だめ?」

おねだりするように、少し上目遣いでヒーラーを見つめるうさぎ。

「うさぎがそうしたいならいいわよ。でも、そんな顔してたら食べちゃうわよ?」

悪戯っぽく微笑みながら言うヒーラーにドキッとしつつ、うさぎも同じ物を手に取る。

「じゃ、じゃああたしは黄色にするね。ヒーラーは?」

「あたしは水色にしようかな。春って感じでいいわよね」

うんうんと頷きながら2人で同じ服を着れると言う初めての事に、ウキウキするうさぎ。

「ねぇ、うさぎ。こういうの着てみる?」

そう言ってにやりと笑いながらヒーラーから差し出された服を見て少し固まるうさぎ。

前から見ればシンプルな物だが、背中部分が大きく開いている。とても大人っぽいが、うさぎはこういう服を着たことがない。

「あ、あたしには似合わない・・・と・・・思います、はい」

うさぎの反応にクスクスと笑いながらうさぎに当ててみる。

「似合わなくはないわよ?これもあたしとお揃いで買ってみる?」

「ヒーラーとお揃い!!買います!!!」

まさかのヒーラーからの提案にうさぎは嬉しくなり、即答した。即答してから『しまった』と思ったがヒーラーはしてやったりの顔をしていた。

「じゃあ決まりね。さっ、行きましょ」

そう言ってそそくさと別の場所へと移動してしまった。

うさぎは少し後悔したものの、『たまにはこんな大人っぽい服もいいわよね』と自分に言い聞かせ、ヒーラーの元へと向かった。






ーーーーーーーーーーーー



「ちょっと買いすぎたわね」

沢山抱えていた服の紙袋を椅子に置き、ヒーラーとうさぎも椅子へと腰掛けた。

「でもでも、ヒーラーとお揃いいっぱい買えてあたし嬉しいよ!」

「ふふ、それもそうね」

あれから2人はお互いに似合いそうな服や靴、アクセサリー等を一緒に見て回った。互いに気に入れば色違いの物を買ったり、全く同じ物を買ったりした。

夜天とは違う女の子同士と言うこともあり、うさぎはいつにも増して楽しそうだった。

そんなうさぎにヒーラーもまた嬉しく思っていた。自分を、男とも女とも認めてくれているうさぎに感謝もしながら。

そしてだいぶ買い込んだ事もあり、ショッピングモールを出て近くのカフェに立ち寄ったのだ。

気候も暖かく、いい天気だった為にテラス席にしたのだが、通りに近く、通り過ぎて行く人がみなヒーラーを見て一度は立ち止まる。

そんな風景にも慣れてきた2人だったが、うさぎは気付いてはいない様だが、ヒーラーとは違う可愛いさもあり、うさぎを見ても立ち止まる人も少なくはなかった。

「あたしトイレ行ってくるけど、平気?」

「え?あたし?大丈夫だよ?」

うさぎはヒーラーの言葉の意味を理解出来ず、疑問符を浮かべている。

「まぁ、そう言うわよね。それじゃ、すぐ戻るから」

そう言って苦笑いを浮かべながら席を立つヒーラー。うさぎは未だに理解出来てはいなかったが、何か注文をしようとメニューに手を延ばす。

「君、ひとり?」

メニューとにらめっこしていたうさぎだが、ふと声を掛けられた事に気付き顔を上げると見知らぬ男が2人。

「え、いや、違いますけど・・・」

知らない人に声を掛けられ、少し怪しみながらも質問に答えるうさぎ。

「友達と2人?」

「は、はい・・・まぁ、そん・・・」

「じゃあさ、今から俺らと遊ぼうよ。こっちも2人だしさ!君可愛いし、一目惚れしちゃった!!」

うさぎが言い終わるよりも先にうさぎの手を取り、強引に詰め寄ってくる男にうさぎは恐怖にも似た嫌悪感を抱き、必死に腕を離そうとするも相手も離してはくれない。

「ちょ、やめて!あなた達とは遊びません!!離して!」

抵抗も虚しく、無理矢理席から立たせられそうになった時、パシンとうさぎの腕を掴んでいた手が払われた。

「ちょっと、あなた達。嫌がってるでしょ?」

静かにうさぎの前に立ち、怒りを含んだ目で相手を見据えるヒーラー。

「いってー。って、こっちの子も中々可愛いじゃん!!冷たい事言わないで遊ぼーよ」

そう言ってうさぎの腕を掴んでいた男がヒーラーに詰め寄る。

「いい加減にしないと痛い目見るわよ?」

「お〜、こわっ。笑」

キツく男を睨むも女ということに舐められているのか全く効果がない。

「まぁまぁ、威勢が良いのも好きだけど俺はこっちの娘がいいなぁー」

そう言ってもう一人の男が後ろからうさぎに抱き着いた。それを見た瞬間、ヒーラーの中で何かがキレた。

「うぉっ・・・」 「ぐっ・・・」

一瞬の内に2人の男は地面へと転がり込んだ。そしてヒーラーは何も言わず、荷物を纏めてうさぎの手を引き歩き出した。
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