月と星々の恋物語
□記憶
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なんだか体調悪いかも。
そんなことを思いながら今日も学校へ行く。今日はスリーライツの皆も学校に来るって言ってたっけ。
あー、なんだかクラクラする。
周りの声が遠く感じる。
教室まで辿り着ければなんとかなるよね。と思ううさぎとは裏腹に身体が後ろに倒れていく。あぁ、痛いかもなんてことを思った所でうさぎの意識は途絶えた。
ー記憶ー
「いや、やめてえええええ!!」
涙を浮かべながら起き上がると、心配そうな眼差しで自分を見つめる夜天がいた。
乱れる呼吸を整える。その間も夜天は何も言う訳でもなく、ただ隣に座っていた。
ふと、此処が何処なのか気になり辺りをキョロキョロと見渡すうさぎ。その様子を見ていた夜天が口を開いた。
「ここは保健室だよ」
保健室、何故ここにいるのかわからないうさぎは不思議そうな顔をした。
「覚えてない?君、倒れたんだよ?」
夜天にそう言われ、自分が倒れそうになったことを思い出す。
「あ、そう言えば・・・」
「前に月野がいて、なんだかフラフラしてて危ないな〜って思ってたら急に倒れそうになるもんだから慌てて君を支えたんだけど、意識がなかったからここまで連れてきたんだけど」
「夜天君がここまで運んでくれたの?」
申し訳なさそうな顔をしながら夜天の顔を見つめる。
「僕が受け止めたんだから、僕が運んだに決まってるでしょ」
面倒な事が嫌いな夜天だ。怒っているのではないかと不安になるうさぎ。
「ごめんなさい。重かったでしょ?しかもここまで運んでくるなんて手間かけさて・・・」
「月野、こういう時はごめんなさい、じゃなくて、ありがとう、でしょ」
少し拗ねたように言う夜天を見て、怒ってはないんだろうなと思った。
「そうだよね。夜天君、ありがとう」
微笑みながら夜天の目を見つめお礼を言う。
「本当は、星野が連れて行くって言ったんだけど、丁度先生に呼ばれて。だから僕が連れてきたんだけど」
先生に呼ばれてなくても自分が運ぼうとは思っていたが。何故だか星野がうさぎに触れるのを最近良く思わない。自分でも何故かはわからないけれど。良い気がしないのだ。
「それで、体の具合はどう?倒れるなんて無理してるんじゃないの?」
ぶっきらぼうな言い方だが、彼なりに心配してくれているのだ。それは、最近夜天と話すようになって気付いたこと。
「うん、だいぶよくなったみたい」
「そう。ならいいけど。所で、嫌な夢でも見た?」
夜天の言葉に先程の夢を思い出す。前世での記憶。シルバーミレニアムの最期。それを思い出し、また思い詰めた様な表情を見せるうさぎに夜天は疑問を抱いた。
「月野?」
「あ、ごめんごめん!大した夢じゃないよ!大丈夫」
うさぎが無理に作った笑顔など、夜天が気付かない訳もなく。
「嘘。何かあったって顔してる」
それに、人の心に敏感な夜天はうさぎが動揺していることなどすぐに感じとってしまう。
「いやーね!何もないわよ!」
と笑顔で言うものの、やはり笑顔が引き攣っている。
「言いたくないなら、無理には聞かないよ」
そう言ってこの話はもうおしまいにしようと思った。
「きっと、信じて貰えないもん・・・」
ぽつり、とうさぎが呟いたことを夜天は逃さない。
「何を?」
はっ、となるうさぎだが、言ってしまったものは仕方ない。つい思ってた事が口から出てしまった。覚悟を決め、夜天に話をすることにした。
自分が過去に犯した禁忌ータブーーを。