贈り物
□emotion
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賑やかに遊ぶ子供達の声を聞きながらうさぎは夜天を待っていた。
今日は夜天とデートの日。
春になってポカポカと暖かく、気持ちまでも穏やかになる。
けれども気になることが1つ。待ち人を待っている間に何人もの人が目の前を通りながらこそこそと呟く。
(あたし、どっか変・・・??)
そう思ってくるくると自分を見つめながら回ってみるも、特におかしな所は見当たらない。
「うさぎ、何してるの?」
聞き慣れた呆れた口調に顔を向けると夜天・・・ではなくそこには女性が。
「夜・・・天君・・・じゃなくてヒーラー!!!どうしたの!?」
突然の恋人の女性姿に驚きを隠せないうさぎ。
「うん、たまにはこっちでもいいかなって思って。さっ、行きましょ」
そう言うとうさぎの手を引き歩き出す。
「そう言えば、何してたわけ?」
「あ、えと。ヒーラーを待っている間にすれ違う人が皆こそこそ言ってたから何か変なのかなって・・・どっかおかしい?」
もう一度自分を見ながら言ううさぎに溜め息を吐きつつうさぎの全身を上から下へと窘めるように見つめる。
「あなたが可愛すぎるのよ」
そう言えば真っ赤に染まるうさぎの頬。
今日のうさぎの服装は小花柄のクリーム色のミニのワンピースに薄いピンクのカーディガン、薄い茶色のニーハイブーツ。
「か、可愛いだなんて・・・でも、ヒーラーみたいに大人っぽくないし・・・」
そう言いながら少し俯く。ヒーラーの格好は、黒のシンプルな体のラインが出るフィットしたロンTと少しダメージのある細身のジーンズに濃い紫のパンプス。服装はシンプルだが、小物類を目立ち過ぎない様に着けており、顔が余り目立たないようにハットも被っていた。
うさぎは大人っぽいヒーラーとは対照的な自分を子供らしく感じ、少し落ち込み気味だった。
「あたしが可愛いって言ってるんだからいいでしょ?」
そう言うと頬に軽く触れる程のキスをひとつ。
「ヒ、ヒーラー!!」
真っ赤になったうさぎを見てクスクスと笑うヒーラー。
「女だからって油断しちゃダメよ?うさぎを好きなのはあたしだって同じなんだから」
夜天でも、ヒーラーでもうさぎを好きなのは変わらない。だからうさぎを見るとついついからかいたくなってしまうのも同じ。
違うといえば少しの性格と性別だけ。
ヒーラーになると少し大胆で、少しお喋りになる。それは、最近うさぎが知った事。
「今日は何処に行くの?」
「うさぎと服買いに行きたかったのよ。女物も欲しいしね。夜天だと何処に行くのも不便だから」
人気アイドルの悩みの一つ。何処にいても誰かの目を気にしなくてはいけないし、気配にも気を使わなければならない。
けれどヒーラーであれば、顔が似ていると言っても何処から見ても『女性』なのだからその辺の心配はいらない。
「今日はゆっくりお買い物出来るね!!」
嬉しそうなうさぎにヒーラーで来て良かったと思うヒーラーだった。