贈り物
□純情乙女は最大の恋敵
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「え〜っと・・・BスタジオBスタジオ・・・っと・・・」
「うさぎちゃん、ここ、さっきも通らなかった?」
「えと・・・そんな事ないわよ!!!」
胸に抱いていた黒猫は、呆れた顔をして溜め息をひとつ。
「うさぎちゃん、この年で迷子なんて笑えないわよ」
むぅ、と口を尖らせ拗ねたようなうさぎ。そう、ここはとあるTV局。恋人である夜天に忘れ物を届けて欲しいと言われ、ここまで来たのはいいのだが、スタジオの場所がわからずクルクルと歩きまわる事早10分。
「あっ!!!うさぎちゃん、あっちじゃない!?」
黒猫ー基ルナーに言われ、通った事ない道へ進むと目的のBスタジオがあった。TV局の入り口のすぐ近くに。
「・・・こんなに近かったなんて・・・」
自分のドジさに少しばかり呆れつつ、そっとスタジオの扉を開ける。撮影の邪魔にならない様に、スタジオの中に歩いて行くとカメラの向こう側に愛しの彼の姿が。
「夜天君、かっこいいね」
コソコソとルナに話し掛け、撮影が終わるのを待つことにした。
ー純情乙女は最大の恋敵ー
暫くすると監督らしき人の『カーット!!!!』と言う大きな声と共にスタッフ達が慌ただしく駆け回る。どうやら撮影が終ったらしい。
夜天はうさぎの姿を見付けると駆け足でうさぎの元へと向かった。
「迷わず来れた?」
「ま、まぁね!!!」
あはは〜と目線を上に向けながら言ううさぎに、『絶対迷ったよね』とは思ったものの、何も言わず本題に入る。
「ちゃんと持って来てくれた?」
「もっちろん!!」
そう言って鞄の中から取り出したのは一つの本。夜天の忘れ物ー台本ー。今日撮影しているドラマの台本だった。
ある程度は覚えているものの、細かい直しや指示が書かれた台本が無くては困る。
今日は突然撮影が入った為に学校帰りにそのままスタジオに来た。そのため台本を持って来てなかった夜天は、うさぎに会う口実としてうさぎに持って来て貰ったのだ。
「ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして」
「ちょっと待ってて。もうすぐ終わる予定だから、送ってく」
そう言われ、にこにこしながら近くの椅子に腰掛けた。すると、目の前に小さな女の子がいた。小学1年生ぐらいだろうか。目がクリクリで少し明るい茶髪の女の子。肌は白く、お人形の様な可愛らしい女の子だった。
(子役さんかな?可愛いなぁ〜)
まじまじと見つめているとバチッと目が合った。逸らすわけにもいかず、暫く見つめ合っていると女の子が口を開いた。
「あなた、夜天君の何?」
女の子から発せられた言葉に目をパチクリさせ、固まってしまったうさぎ。目の前にいる可愛らしい少女から発せられたとは思い難い、低く敵意を含んだ声色に思考が停止する。
「聞いてるの?」
うさぎが無反応の為、痺れを切らしたかの様に言う少女にうさぎはハッとする。
「えと・・・お友達・・・かな?」
いくら小さな子と言えど、夜天と付き合っていると言うのはいけない気がして、友達のフリをした。
「ふーん。友達・・・」
その答えに納得がいかない様な顔をする少女だったが、スタッフに呼ばれ、その場を去った。
「ね、ねぇルナ。人って見かけによらないわね・・・」
「えぇ・・・」
そしてまた撮影が始まった。撮影中夜天とさっきの少女は仲睦まじく演技をしていた。
(演技だから仕方ないけど、ちょっと・・・って、あたし何考えてるんだか。あの子は小学生ぐらいなんだから!!!)
ブンブンと頭を振り、余計な事は考えずただ撮影を見ていた。