贈り物

□protege
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下駄箱を開けて溜め息をひとつ。そっと靴を取らずに職員用下駄箱へ行き、来客用のスリッパを履くと、重い足取りで階段を登る。

今日もこんな憂鬱な気持ちで過ごさなければならないのか。

そんな事を考えながら教室に着くと机に腰掛ける。まだ、机があるだけマシなのだろうけど。

彼等が撮影のロケと言って来なくなってから早1週間。それは彼等が来なくなってから始まったーーーー。










ーprotegeー






朝から暗い気持ちで過ごしているのはうさぎ。高校2年になり、皆とはクラスが離れてしまった。そして暫くして夜天と付き合う様になったのだ。

それを良く思わないファンの子達が彼等が撮影のために海外に行き出すと同時にうさぎに対して嫌がらせをする様になった。彼等とは同じクラスだった為に、彼等がいる時は仲睦まじい友人を装っていた。

最初は、本当に気付かない程度の嫌がらせだった。教科書がなくなったり、体操服がなくなったり。けれど日に日にエスカレートしていき、上履きに大量の画鋲が入っていたり、体操服が切り刻まれていたり、教科書にひどい言葉を書かれたり。

うさぎがそれに気付くと、何処からともなくクスクスと笑い声が聞こえる。

けれどもうさぎはこんなことぐらい平気だと、何も無い風に過ごしていた。

好きな人が違う人と付き合っていると言う辛さがわかるから。これぐらいの事で弱音は吐けないといつもの仲間にも打ち明けてはいなかった。







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「あら、うさぎちゃん。まだ上履き買ってなかったの?」

お昼休みは相変わらず皆と昼食を取る。教科書はなんとか誤魔化す事が出来ても上履きは誤魔化しきれず、無くしたと嘘を吐いた。

「そうなの。買いに行くの忘れちゃって〜」

えへへ、と何時ものドジを演じる。気付かれてはいけない。心配だけは掛けたくないからだ。

「にしてもうさぎちゃん、最近夜天君がいないからってちょっと間抜けじゃない?」

美奈子は鋭い。うさぎの元々の性格にしても、最近はよく物を無くしたと言う。それは夜天達が海外ロケに行ってから。何かあるのではないか、とは思うもののうさぎが何も言ってこないので理解しがたい。

「そ、そんな事ないよ!ほら、あたしって何時もマヌケだからさぁ〜」

本人は『まこちゃんのお弁当おいしー!』などと呑気な事を言っている。

(心配し過ぎから・・・)

一瞬嫌な予感が頭を掠ったが、うさぎの笑顔を信じて余計な事は考えない様にしようと思った。

そんな美奈子の態度にほっと胸を撫でおろし、うさぎは何時もの様に楽しく皆で昼食を食べたのだった。
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