贈り物

□Scent
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「僕にきた仕事ってこれ?」

「えぇ、そうですが」

その仕事に頭を抱える夜天。

「本当に僕がやるの?これ」

資料を手に大気へと問い掛ける。

「そうですよ、折角の話です。断るなんてことしないですよね?」

はぁ、と溜め息をつき、それでも尚、資料から目を離さない夜天。

「わかったよ。やればいいんでしょ」

それだけ言い残すと自室へと戻っていった夜天。そんな夜天の姿を困った表情で見つめていた大気。

「なんで、こんな物、僕が・・・」

ふと、思考を違う場所へとやる。刹那、先程までの表情とは違い、柔らかい笑みを浮かべた夜天。

「まぁ、いっか」

そう一言呟き、ベッドへとダイブした。日々の疲れからか、夜天の意識はすぐに途絶えたーーーーー。




ーScentー






「はぁ〜・・・」

「うさぎちゃん、幸せ逃げるわよ」

「ルナ・・・だってぇ〜・・・」

窓の外を見つめながら今日何度目かわからない盛大な溜め息をついた人物。そう、うさぎである。ここ最近、最愛の彼である夜天とは暫く会ってない。新しい仕事がかなり忙しいらしく、会うことは疎か、電話やメールもほぼない。

「仕方ないってわかってるんだけど・・・」

頭ではわかってるのだ。うさぎだってそこまで子供ではない。頭でわかっていても心が、気持ちがついていかないのである。

「さーみしぃーよぉー・・・」

ぽつり呟かれた言葉。それと同時に携帯が鳴る。そこには今会いたくて仕方がない彼の名前。慌てて通話ボタンを押す。

「もしもし」

けれども返事は返ってこない。

「夜天君?」

「ん・・・なかなか電話出来なくてごめん」

久しぶりに聞いた愛しい人の声。高ぶる鼓動は二人共同じである。

「ううん、仕方ないもん。大丈夫よ」

「嘘。我慢してるって声してる」

わずかに震える声でも夜天にはお見通しなのだ。

「泣いてる?」

クスクス、と悪戯っぽく聞く夜天。

「そ、そんなことないわよ!」

「そう?じゃあ、見せてくれる?」

夜天の意味がわからず戸惑ううさぎ。するとコンコンと部屋の窓を叩く音がし、慌てて窓辺に行くと、そこには会いたくて堪らなかった彼の姿。

「夜天君・・・!どうしたのこんなじ・・・」

しっ、と口に指をあてられ、びっくりしたのと恥ずかしさで頬が赤くなるのがわかる。

「バレたらいけないでしょ」

時刻は夜の11時。みんな寝ている時間ではあるが、うさぎの声で起きるとは限らない。コクコクと頷き、夜天を部屋に招き入れる。

「ルナ、久しぶり」

「久しぶりね、夜天君。あたしはちょっと散歩でもしてくるわね」

そう言って窓から出て行ってしまった。

「気を使わせちゃったみたいだね」

夜天がそう呟きながらもうさぎをぎゅっと抱き締める。

「はぁ・・・充電」

「や、ややややや夜天君」

「顔真っ赤だけど?」

にやりと笑いながらも、うさぎを抱き締める手は強さを増し。久しぶりの再会を噛み締める。

「寂しい思いさせてごめん。もうすぐ、この仕事も一段落するから」

「うん・・・がんばってね」

そっと触れる程の口付けをし、うさぎから離れる。

「じゃあ、これ以上いたらマズイから帰るよ」

「え、もう?」

「僕も一応男なんだけど?」

夜天の言葉に疑問を浮かべるうさぎ。はぁ・・・と溜め息をつきながらも、そういうところがうさぎだとも思う夜天だった。

「今日は顔見に来ただけだから。じゃあ、またね」

そう言うと来た時と同じ様にベランダから帰っていく。

夜天の姿が見えなくなるまで見ていたうさぎだが、気になった事がひとつ。

(夜天君、いつもと違う香りがした・・・)

もやもやとする胸。けれども夜天のことだ。綺麗な女優さんと共演、なんてこともあるだろう。

(夜天君・・・まさかね・・・)

女嫌いの夜天にとって浮気など、ありえない。とはわかっているものの、不安は募るばかりで。会えない日々が続けば余計に。

(こんなこと思うなんて、あたしどうかしちゃったのかな)

そう思い、布団を頭まで被り、この日はもう寝ることにした。
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