贈り物
□Winde
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テレビに映る愛しい彼の姿。
少し気だるそうなのも愛しく思う。
お正月休みは彼等にはなかった。
超人気アイドルなのだ。
当たり前と言えば当たり前なのだが。
ここ一週間程、テレビ越しにしか見ていない彼に堪らなく会いたくなった。
「夜天君・・・」
愛しい彼の名前をポツリと呟くとうさぎの携帯が鳴った。
誰かと思いディスプレイを見るとうさぎの心臓はドクンと脈を打つ。
「嘘・・・」
そこには夜天君と表示されていた。
時刻は夜中の12時を少し過ぎた頃。
まさかこんな時間に彼から電話が掛かってくるなど予想もしていなかった為、嬉しくて少し震える手でボタンを押す。
「もしもし・・・」
緊張で、少し上擦ってしまった声に恥ずかしくなりながらも彼の声を待つ。
「月野・・・何焦ってんの?」
間違いなく愛しい彼の声。
「焦ってなんかないわよ!///それよりどうかしたの?」
嬉しいのがばれないように落ち着いて話すうさぎ。
「ん・・・ちょっとね」
そう言うと黙ってしまった夜天。
「夜天君・・・?」
不思議に思い彼の名前を呼ぶ。
「声・・・」
「声?」
更にうさぎの頭の上には疑問符が並べられていた。
「――かったの」
あまりにも小さい声で聞き取れなかったうさぎ。
「夜天君、今何て――」
うさぎの言葉を遮る様に夜天は溜め息を付きながらもう一度今言った言葉を言う。
「月野の声が聞きたかったの!」
耳元で受話器から聞こえる彼の声は少し恥かし気な音色をしていた。
「あたしも・・・夜天君の声が聞きたかった」
気付くとそう答えていた。
「ねぇ月野。外出てきてくれない?」
突然の事に少し驚く。
「外?どうして?」
そう聞いたのにいいから早くしてよねと言って一方的に電話を切られてしまった。
訳も分からず着替えをすまして外に出ると雪が少し降っていた。
すると人影が目に入る。
まさかと思いその人影に近付く。
「夜天君・・・!!」
そこには会いたくて仕方がなかった愛しい彼の姿があった。
「久しぶりだね月野。僕に会いたくて泣いてなかった?」
少し意地悪な笑みを浮かべて言う夜天。
「泣いてないわよ///それよりどうしてここに?だってお仕事が――」
突然腕を引かれ夜天の腕の中に包まれ、驚きと緊張で固まってしまった。
「会いたかったから来たんだけど?」
強く抱き締められ今まで会いたくて仕方がなかった分とても幸せな気分に包まれた。
「あたしも・・・!夜天君に会いたかった・・・!///」
いつもは恥ずかしくて会いたかったなど自分から口にしないうさぎだったが今日は素直になれた。
「じゃあ、行こうか?」
手を引かれ歩き出す夜天に疑問を感じたうさぎ。
「夜天君・・・?何処に行くの?」
そう尋ねると顔だけをうさぎに向け答える夜天。
「初詣!行きたかったんじゃないの?」
その言葉にはっとなるうさぎ。
最後に電話した日、うさぎは夜天に一緒に初詣に行きたかったと言ったのだ。
もちろん、仕事だから無理というのを分かっていた為であった。
「覚えててくれたの?」
些細な事でも覚えていてくれたことが嬉しくてつい笑顔でそう尋ねる。
「まぁ月野が凄く行きたそうにしてたからね。ほら、早く行くよ?」
そう言って強く繋がれた手はとっても暖かかった。
初詣のお願い事は
これからもずっとずっと
夜天君と一緒に居られます様に
そう願おうと心に決め軽い足取りで神社に向かううさぎだった。
end-2012*01*05
あいり