贈り物
□Scent
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それから数日が過ぎた。あれから何度か夜天には会っていた。少し、仕事が落ち着いたらしい。けれどもうさぎの不安は募るばかり。
(夜天君、今日も・・・)
あれからと言うもの、夜天の香りはいつものものではなく、うさぎが疑問を抱いた香りが続いていた。
いつもは甘い金木犀の香りがしていたのが、ここ最近は別のもの。
その香りに、うさぎは悪いことばかり思い浮かぶ。
「はぁ〜・・・」
「うさぎちゃん、夜天君と何かあった?」
心配そうな顔でうさぎに問うのはルナ。
「ううん、何もない・・・」
不器用な彼は滅多に好きと言葉にしてはくれない。それがうさぎをより一層不安にする。
「何もないって顔じゃないわよ」
むぅ、と口を尖らし観念したように話しだす。
「あのね、この前夜天君家に来たじゃない?」
あぁ、あの夜ね。とルナは思う。
「あの日、夜天君からいつもとは違う匂いがしたの」
「違う匂い?」
「うん。いつもは金木犀の甘い香りなの。でも、あの日は違う香りだった。それから何度か会ってるんだけど、いつもその違う香りなの」
ルナはうさぎの言いたい事が理解できた。夜天が浮気してるのではないか、と。
「でもうさぎちゃん。夜天君は女の子が嫌いじゃなかった?」
「うん、でもそんなのわかんないじゃん」
寂しそうな顔をするうさぎ。
「大丈夫よ。夜天君がうさぎちゃん以外を好きになるなんてあり得ないわよ」
「ルナのその自信はどこからくるのよ;」
少し呆れた顔をするうさぎだったが、ルナの言葉に少し元気が出た。
「ありがとう、ルナ。あんまり気にしない様にする」
そう言ってうさぎは眠りについた。
ーーーーーーー
「夜天さん、これ」
「あぁ。ありがとう」
その頃夜天はある会議室にいた。
綺麗な女性から受け取ったものを愛おしい目で見つめる。
「こんなに想われてる彼女さんは幸せね」
「そうだといいけど」
ふっと微笑みながらうさぎの顔を思い浮かべる。
「そうだ、この事はくれぐれも内緒にしててね」
「えぇ、もちろん」
そう言って夜天はその場後にした。
(どんな反応してくれるかな)
期待と少しの不安を胸に夜天は自宅への道を急いだ。