セブルスSと極東の魔女
□姉妹
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何時の頃からか(何時も何もセブルスはハッキリ記憶にあるが)家から出れば先ず公園に立ち寄る癖が付いてしまったセブルスは、その日も無意識(目的の人物が今現在此処にいないと言うのが分かっていて)公園へと寄ってからイギリスに借りてある雨野宅へと向かおうと思っていたのである。
何とは無しに見た何時もの公園に、見慣れぬ子供の姿があったものだから、既視感と言おうかその光景を少しばかり懐かしく思い(という程の日数も経っては居ないにも拘わらずセブルスの中ではもう相当昔の出来事であるかのように感じている。)その赤毛の少女を注視してみたのだが。
其処には手にした萎れた花を、再び元気に咲かせる少女の姿。そしてそれを見て喜んで居る少女の嬉しそうな声が聞こえてきたものだから、此れは本当に何時かの日の様だなと少しばかり心が浮き足立ち、顔に微笑みを浮かべたまま其の少女に声を掛けたのだ。
「それは魔法の力だ。君は魔女なんだよ。」
「魔法?私は魔女なの?それじゃあそれを教えてくれたあなたは?」
「僕は魔法使いだ。僕にも魔力はある。
きっと今年にはホグワーツ魔法学校から入学許可証が届くと思う。
君は幾つ?十歳になる魔力を持った子供の処に入学許可証は届くんだ。」
「私は十歳よ!
なら私の所にも魔法学校?から入学許可証っていうのが届くの?」
「同じ年か。それならきっと届くと思う。同学年だ。
学校でも会うかも知れない。」
紗霧の時とは違い、魔法の事を知らなかった様子のその赤毛の少女を見れば、恐らくは両親共にマグルであるのだろうと思われた。
何れ入学許可証と共に説明の教師が来るのだろうが、其れまでに何も知らぬままで居るよりは少しでも理解しておいた方が良いだろうと、己が紗霧達から詳しく聞いた時のよう、覚えている限りの魔法界の様子や何やらを教えてあげようと考えて。
「僕も人から教わった話なんだが、」
と、そうしてその日の日暮れ間際まで話し込んだのであった。
※※※※※※
「リリー!お母さんが呼んでいるわ!」
離れた場所から、どうやらこの赤毛の少女の家族らしき少女が呼び掛けて来る声が聞こえ、それに反応した赤毛の少女が、
「こっちよチュニー! 少しだけ待って。すぐに行くわ!」
そう返事をするのを目にしては、
「姉妹なのか?仲が良さそうだ。
……楽しそうだな。僕は独りっ子だから、この間まで兄弟と言うものがどういうものか解らなかったんだ。」
「そうね、とっても楽しいわ!
いつだってお家に何でも相談できるお友達が居るようなものよ!
そうだ、あなた独りっ子なら、私達姉妹と兄弟みたいになれないかしら!」
「いや、僕にはもう兄のような人達が居るんだ。
国が違うが兄だと思えばいいと言ってくれた。
そのおかげで兄弟がどういうものなのか理解出来たんだ。」
そう言って自然と笑ったセブルスの顔と言えば、この場に紗霧が居れば相当な衝撃を受けて悶え喜ぶだろう事請け合いの。
「そうなの、兄弟になれなかったのは残念だわ。
でも、それでも私達は友達よ!
ねえ、また会える?良かったらその時その人達のお話を聞かせて!
違う国の人達のお話って、すごく興味があるわ!」
「構わない。じゃあその話は次に会った時に。」
「私はリリー!リリー・エヴァンスよ!
お話に夢中になりすぎて名前すら教えてなかったなんて、びっくりだわ。」
「そう言えば忘れていた。
僕はセブルス。セブルス・スネイプだ。」
ではまたきっと直ぐに会いましょうね、と言ってチュニーと呼ばれた少女の方へと駆けていった赤毛を見送り、当初の予定通りセブルスは自宅とは違う方角へと歩き出したのだった。