セブルスSと極東の魔女
□才能
1ページ/3ページ
「あの、こんにちは。えっと、サギリはいますか?
昨日、一緒に遊ぶ約束をしていて、」
紗霧達がイギリスで借りて居る家に先日の約束通り訪れたセブルスは、先ず最初に顔を出した女性に、挨拶に不慣れ故の若干テンパった愛らしい対応を見せたが為、思いがけずその見知らぬ女性にハグをされる羽目となった。
「まあ、こんにちは。ひょっとしなくても貴方がセブルス君ね?
私は紗霧の母親の雫・雨野です。あの子と友達になってくれて有り難う。
さぁ、入って。紗霧なら居間にいるわ。」
入って、と言いながらハグをしたそのままにセブルスを抱き上げ家の中へと歩き出してしまった雫に、既にセブルスはパニックである。
「あの!……あの、僕、歩けます、」
「うふふ。私が抱っこしたかったの。
あら、ひょっとしてセブルス君は嫌だったかしら。だったらご免なさいね。」
まぁ降ろさないけど、と其処だけセブルスには分からないよう日本語で呟きつつ居間へと足を運ぶ雫の行動に、10才にもなって友人の母親に何故か抱っこされてしまった少年の心は推して知るべしである。
「嫌、というんじゃなくて……恥ずかしいんです。
男なのに……こんなところサギリに見られたら、」
男のプライドというものか。
小さくとも、特に誰かに教わる事もなく持ち合わせているものなのであろうか。男らしく見られたいと云うことなのだろう。
しかし寧ろ逆効果である。頑張っている様子が余計に可愛らしくみせてしまっている。
“己が娘の前で、男として格好つけようとしているのだ”
そう受け取った雫にとって、此の時点でセブルスは既に〈紗霧ちゃんのお婿さん候補〉に挙がってしまったのである。当然ながら本人達の意思は考慮されていない。
「そう!そうね!それじゃ私はお茶を淹れてくるわね。
セブルス君は先に行っててくれるかしら。居間は其処を真っ直ぐ行った突き当たりのドアよ。」
「はい、それじゃ、おじゃまします。」
小さいのに礼儀正しくて男の子してるなんて!何あの子可愛い!我が娘ながら良い趣味してるわね紗霧!
お茶を淹れにキッチンへ向かった雫の方から日本語らしき雄叫びが聞こえた気もしたが、生憎セブルスには何を言っているのかは分からなかった。