悪霊流離譚

□人形の家
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 紗霧の能力について、先ずナルが出した指針とは、概ねこういったものであった。

 視えると言っていた『変なもの』がどういう種類のものであるのかというのを確定する事。
 これに関しては『心霊的な要因』による異変のある現場ー…いわゆる心霊スポット等と言われる場所であるー…に行って実際に視てみる以外になく。其処で何を視、何を感じたか細かく記録をとり、過去に集めた霊能、異能の能力者達のデータと照らし合わせる、又は同じ現場に居る他の能力者と擦り合わせる事で傾向を探って行くという事。
 そして視えるか視えないかと言う風に結果が分かりやすい為、回数を重ねて行く事で比較的簡単に判明するだろうと言う事。

 問題があるとすれば『存在感が薄くなる能力』(表現が酷い。せめて気配を同化、又は消す能力といって欲しいものである。)の方であり、過去にもその様な事例がなく。
 直ぐに結論が出せる物ではない。じっくり取り掛かる以外にない為に此方は後回し、追々にという事とする。

 要するに、先ず『視る』方をハッキリした後に『気配』の方に取り掛かるというだけの話である。

 尚、更に、余計な面倒事を避ける為に(という名目で)今後はナルの指示なく気配を消して潜まない事。
 逃げたところでリンが探しに行く羽目になるだけであるから、余計な手間を掛けさせないように(此れに関しては指針と言うよりある種の脅迫のようである。)コソコソと何処かに隠れないと言う事。

 以上を約束(対価を得る以上は約束でなく既に契約であろう)したのであった。



 とはいえども時折、やはりナルの目の届かないー…云わば学校であったり街中であったりだとかー…場においては実はこっそり使っていたりするのは秘密である。

 
紗霧は基より真面目とは言い難い性格なのである。



※※※※※※



 そうして迎えたお仕事であるが。
 紗霧としては初仕事となる此れは、依頼人は森下典子さん。
 肩につく程度の明るい髪の、穏やかな控えめ美人である。


 突然の家具の揺れ、誰も居ない部屋からのノック音、果ては誰も触って居ない扉の開閉等の、家の中での異変……違和感を感じる事が多くなったとの話であった。
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