PAST

□SHORT PAST
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これは、俺が・・・いや、俺たちビーストドールが、製造・管理を行う施設にいたころの話だ。


シャム達と出会う、ほんの少し前の、ある日の事だ。


「私達、いつになったらここを出られるのかな・・・?」


不意に、部屋の隅にいた、蝙蝠の羽が生えた女ーレナが呟いた。


「さあ。いっそ、俺らの力で脱走でもすれば・・・」


「無理よ。外で生きる手段もないのに」


呆れたようにそう言ったのは、蛇のような目と尾を持つ男ーショウ。


それを冷淡な口調で否定したのは、孔雀の羽が背中にある女ーリオだ。


俺は水槽から顔を出して、そいつらの話を聞いていた。


リオ「私達は、ここの人間に延命してもらわないと、いつ寿命が来るかわからない身体なの。脱走とかして、すぐに野垂れ死ぬことも、あり得る話なのよ」


ショウ「それは・・・」


「でもな〜、出たいっていうのは俺も同意見だよ」


リオ「ノブ」


レナ「多分、皆同じだよ。でもそれには、私達が外で生きる方法を模索する必要があるね」


レナが辺りを見渡した。


周りにいた俺たちの同族ービーストドール達が頷く。


レナの言う通り、この建物から出たいという意思は、皆同じらしい。


力を合わせれば、脱走はさほど難しくないとは思うのだが・・・。


ショウ「脱走ついでに資料を盗むってのはどうだ?」


リオ「その技術を理解できなかったら意味無いでしょ」


ノブ「・・・いや、居るぞ。一人だけ・・・」


レナ「それって・・・」


部屋の扉が開く音がして、全員がその方を見た。


「たらいまぁ・・・」


フラフラと、白い羽の生えた、レナそっくりの子供が入って来た。


レナ「ルア、大丈夫?」


ルア「あ、おねーちゃん。大丈夫。ルア、元気だよ」


ルアは、ここにいるメンバーの中では一番新しい個体で、皆の妹みたいな存在だった。


一応、レナとは遺伝子的な姉妹の関係にある。


最近、実験に駆り出されている事が多いが、頭は結構いいから、向こうの技術を色々吸収しているだろう。


さっきの俺の発言は、こいつを指していったものだ。


「ルア、無理してない?」


「疲れたらちゃんと言うんだよ」


「まだ作られて日が浅いんだから、無茶して死んだりするんじゃないよ」


皆がルアを愛し、可愛がっていた。


・・・のちの悲劇は、ある意味そのせいで引き起こされたのかもしれない。


この時の俺は、そんな事を知る由もなく、心配しすぎだって、と皆をからかっていたんだ。
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