PAST
□純愛抱く蒼の天馬
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私が生まれ育った場所は、私と似たような姿の天馬が大勢いた土地でした。
天馬達は相棒を探すべく渡りをしており、各地に存在する天馬の里には、時たま天馬武者を目指す少女達が訪れていました。
そして天馬達の中から相棒になって欲しいと思う者に認めて貰う為、奮起していました。
私は当時はまだ若く、他の天馬達とは異なり神獣の末裔だった為か、私を乗りこなそうとする者は中々現れませんでした。
まあその時は、人間に使役されるなんてと、自分から嫌がっていたんですけど。
そんなある日私は、決して忘れられない、一つ目の出会いを果たしました。
その日は確か渡りの最中で、新天地を目指す中、ある丘で休憩をしていたんです。
突然、前触れもなく彼は現れました。
『はあ〜・・・全く、人間から逃げてたら迷っちまったよ・・・』
唐突に茂みから現れたのは、真新しい傷を少しばかり負った、真紅の狼でした。
その時、付近には他の天馬はおらず、彼の登場に気付いたのは私だけでした。
・・・だからこそ、勘違いに気付くのに時間がかかった訳ですが。
スカイ『狼・・・!仲間を食う気だ!』
そう、私は彼の事を、捕食者として認識していたのです。
仲間を守ろうとした私は、すぐさま狼に攻撃を仕掛けました。
『うぉあ!?』
スカイ『やい、狼め!仲間を食いに来たんだろうけど、そうはいかないぞ!僕が成敗してやる!』
『はっ!?オレ別に・・・ええい、挑んできたのはそっちだ!かかってきやがれ!』
・・・後から聞いた話だと、この時、僕にいきなり襲われた事に腹を立てて、弁明という選択肢が頭から抜けていた、らしいです。
まあ・・・私も冷静さを欠いていたので、彼に弁明の機会を与えなかったのですが。
そんな感じでお互い話し合う事もせず、暫く乱闘を続けまして。
お互いが疲弊し、攻撃の手が止んだ時、漸く誤解が解けました。
『ったくよー!このヴェルメリオ一族の末裔がなんでこんな目に・・・』
スカイ『・・・へ?』
『ん?』
スカイ『お前、今なんて』
『だから、ヴェルメリオ一族の末裔って・・・』
私はその名に聞き覚えがありました。
かつて、災害によって滅んだ私の一族と親交があったとされる、神獣の一族の名前だったのです。
スカイ『じゃあ、まさかお前も神獣!?』
『え、じゃあお前も!?』
スカイ『な、なんてことだ!てっきり捕食者だと思って・・・』
『何て勘違いしてくれてんだ!』
スカイ『す、すまない!悪気は無くて・・・!』
勘違いで襲われた彼は怒り心頭だったが、暫くすると溜息をつきつつ、私を許してくれました。
『もういいよ。勘違いはよくあるもんな。それよりさ、頼みがあるんだけど』
スカイ『なんでしょう』
『オレ、行くとこねえんだ・・・渡りでもなんでもついてくからよ、置いてくれ』
スカイ『一応仲間にも聞きますけど・・・私は構いませんよ』
私がそう言うと、彼は嬉しそうに笑いました。
『サンキュ!オレ、フレイアヴィー・ロート・ヴェルメリオってんだ!フレインって呼んでくれ!』
スカイ『あ、僕はスカーリィ・ブルム。スカイで構いませんよ』
フレイン『おう、よろしくな!』
人懐こい笑みを浮かべる彼と親しくなるのに、そう時間は掛かりませんでいた。