PAST

□染井吉野は孤独に笑う
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「桜ー!今日も勝負しよー!」


桜「ま、またですか!?最近、ほぼ毎日勝負してますよ!?」


「いーからいーから!」


家を出てから6年。


12になった私には、修行仲間が出来ました。


彼女の名はレイン。


志願理由は、楽して生活したいかららしい。


去年の始め辺りから毎日、召喚術、魔術、法術等々で勝負させられている。


勝敗は、丁度半々ほど。


今日は召喚術の勝負らしい。


お互いに得意とも不得意とも言えない分野だ。


桜「もう、わかりましたよ。でも、なんで召喚術なんですか?貴方が得意な魔術、最近やってないでしょう?」


レイン「忘れたの?今回は500回目の勝負!今の所248勝248敗1分けなんだよ!今日、決着をつけようと思ってね!」


桜「そんなの、数えてる訳ないじゃないですか・・・」


「なに?また勝負?」


「レインさん懲りませんね〜」


レイン「うっさい!今日の私は一味違うのよ!いでよバハムート!」


観客に一声吠えた後、彼女は召喚獣を呼び出した。


彼女の召喚獣は、巨大魚の幻獣バハムートだ。


しかし、書物通りの魚のような姿ではなく、翼が6本ほどある、竜の姿になっている。


しかも大きい。


「あれほどの召喚獣を出すなんて・・・」


「レインって、意外と真面目に修行してたんだね!」


レイン「してるわよ!隠居のためにね!ほら早く、桜も召喚獣だしなよ!」


桜「わかりました。私も、六年の集大成を見せますよ。おいで、キキ」


私は、小さな鳥の召喚獣を呼び出す。


キキは私の指の上に乗り、此方を見つめた。


書物に載ってない、しかも小さい召喚獣に観客は静まり返る。


「ちょっと、桜、バハムートにそんなちっこい鳥で挑むわけ?」


「無理がありますよ」


「バカにしすぎじゃない?」


桜「どう思われても結構。この子は私の相棒で、切り札ですもの」


レイン「ふっ、桜の事だもの油断はしない、出来ないってものよ!いけ、バハムート!」


バハムートが大きく吠えた。


そしてこちらに襲い掛かる。


桜「キキ、いい?一点を貫いて。余計な力はいらないわ」


キキは静かに飛び立ち、バハムートを見据える。


そして、攻撃してきた一瞬を突き、巨体を貫いた。


急所を突かれたバハムートは粒子となり、消滅していった。


レイン「あちゃー、負けた。桜は力を集中させるの得意だからなァ。勝てないや」


桜「いえ、あなたも精神力が高いのですから、それを生かせば強力な召喚獣を生み出せるはずです」


レイン「そうか?なら、これからも精進するっきゃないね!勝負してくれてありがとな!」


桜「いえいえ」


レイン「そうだ、今から友達と会う約束してんだ!桜にも紹介するよ」


桜「あら、お友達ですか?・・・え?今から?」


レイン「おーい!来ていいぞー!」


レインが空に向かって思いっきり叫ぶ。


この時点で、彼女の言う「友達」が人でない事を察した。


予想通りと言うか、人の3倍程の大きさの二頭の竜がやって来た。


観客は、突然の竜の訪問に騒いでいた。


レイン「よく来たなあ、光竜族の長のせがれ!桜、こっちの赤い方はヨウ、黒い方はインだ!よろしくな。そんで、こいつは桜だ」


ヨウ『このお方が、レイン様の好敵手か。俺はヨウだ。よろしく頼む』


イン『私はインです。宜しくお願い致します、桜様』


桜「は、はい・・・」


ヨウ『それとレイン様、俺はもうせがれではなく長だ。先代は一年前に亡くなられた』


レイン「おお、そいつは済まなかった!いや、頼もしいな!頑張れよ!」


桜「あはは・・・」


私は改めて、修行仲間である彼女の事を、色々な意味で凄いと感じた。
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