短編

□性格の悪い僕。
1ページ/4ページ


「おーい、敬太。」

「あ、尊。おはよう。」

僕、宮本敬太(ミヤモトケイタ)と話しかけてきた彼藤宮尊(フジミヤタケル)は幼馴染である。
家が近く親同士が学生の時から仲が良かったので僕たちも必然的に仲良くなった。

尊は明るくて運動ができて勉強は少し苦手だけど前向きに頑張っていてクラスの中心にいるような人。
それに比べて僕は、暗くてなんでもマイナス方向にしか考えられなくていつも教室の端のほうで本を読んでいる根暗と呼ばれる分類に入る。

そんな僕だが恋をしている。

小さいころからずっと一途に思ってきた。
だけど今の関係を壊すのが怖くて何もできていなかった。
ここまで聞けば僕がだれに恋をしているのかわかるだろう。
幼馴染である尊だ。

最初は僕にできないことを何でもできる尊に対してのあこがれだけだった。
だけど気づけばそれは恋に変わっていた。
尊はかっこいい。
性格もそうだが顔も・・・。
恋は盲目とかじゃなくて周りの人たちの評価がそうなのだ。
僕たちは全寮制の男子校に通っている。
深い山奥の中に山を切り開いたところに建てられており外には出れない。
必然的にこの学園では同性が恋愛対象になる。
そしてこの学園には生徒会だとか風紀委員だとか顔のいい人たちが集まる組織がある。
尊はその風紀委員に入っている。
親衛隊というファンクラブみたいなものもあって僕が幼馴染でなかったら一生話せなかっただろうというほどの人気である。

愚かにもそんな人気者の尊に僕は恋をしてしまった。

「敬太?どうかしたか?」

「え、あぁ。ううん、なんでもないよ。」

僕は変わらずに幼馴染を演じている。
何のとりえもない僕は自分に自信が持てず話を切り出すことができない。
もし僕が親衛隊の子達みたいに可愛ければ話を切り出すくらいできただろう。
何もできない自分が恨めしい。

「やっぱお前変だぞ?何かあったか?もしかして俺の親衛隊に何かされたとか!」

「い、いや、なにもされたないよ。寧ろよくしてもらってるっていうか。」

「そうか?本当になにもないんだな?」

「なにもないよ。ただ今日数学豆テストあるんだよ。」

「あ゛・・・忘れてた。」

「じゃあ早く教室に行かないとね。」

そういって歩くスピードを速める。
正直言うと教室にはいきたくない。
あそこには彼がいるから・・・。
僕と同じく尊のことを好きな穂浪瑞樹(ホナミミズキ)が・・・。

彼は可愛い顔立ちをしていて親衛隊もちである。
性格は少々サバサバしており落ち着いたイメージが強い。
そんな彼は尊が好きだ。
よく尊を見ているし僕が尊と話していると割り込んでくる。
それに彼に忠告をされた。
“アンタと藤宮君とでは釣り合うわけがない。邪魔だからさっさと身を引いて。”
と・・・。
彼があんなことを言うなんて驚いた。
いつもクールであんな態度をとる人じゃなかったから。
でも、それだけ尊に本気なんだってことがわかる。
僕だって簡単には負けたくない。
きっと可能性は全くと言っていいほどないんだろうけどせめて抵抗として尊の隣にいたい。
そう簡単に尊の隣は譲ってあげない。
これが僕ができる悪あがきだから。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ