request(旧)
□if君の愛を僕に
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クローリー・ユースフォードの彼女であるかなみは、よくサングィネムに遊びに来る。
好きな女が自分の部屋にいるのに、どうにもできないもどかしさをいつも抱えていた。こんなに好きなのに、彼女はクローリーの女で、無理矢理手に入れようとすれば彼女を泣かしてしまうことになるだろう。まぁ、力的にもクローリーには勝てないことは分かっているが……
『ミカ君、最近何か面白いことあった?』
いつも他愛もない話をしている為、今日もそんな話題を僕に振ってくる。
「うーん……最近は外に出てないからなぁ……」
『えー、ダメだよ?家の中ばっかりいちゃ……身体がなまっちゃうよ?』
「かなみだって市役所に軟禁されてるくせに」
『な、軟禁って……私は好きでいるんだよー』
困ったように笑う彼女の口から出る"好き"って言葉に、心がざわつく。どうしてその言葉は…僕に向けられないんだろうか。
ミカは、やるせない表情をかなみに向けてしまう。かなみは、そんな表情に気づくと首を傾げ
『……ミカ君?』
不思議な顔をする。ミカは、自分の気持ちをぐっと抑え、なんでもない顔をして笑った。
「なんでもないよ」
『……そう?…………ねぇ、あれってなんなの?』
かなみは机の上を指差した。ミカは指の方向を辿る。すると、机の上に、一つの小さな瓶が乗っていた。
あんな瓶あっただろうか?
ミカは首を傾げ、ガラスでできた10センチにも満たない小瓶を凝視した。
「なんだろう……」
『ちょっと取ってくるね』
かなみは立ち上がり、机の上にある小瓶を手に取った。そして躊躇なく蓋を開ける。
「え、ちょっ……何かわからないのにもう少し警戒しなよ」
『えー?でもミカ君の部屋にあるってことは、別に劇薬とかじゃないでしょ?』
彼女は人間のくせに、そう言った危機感というものがない。ミカはため息をついて立ち上がる。そして、かなみの側に駆け寄った。
「危ないから貸して?何かあってからじゃ、僕が君の彼氏に怒られるんだ」
『あはは、大丈夫だよ〜。なんだろね、これ』
蓋を開けた小瓶に鼻を近づけ、くんくんと匂いを嗅ぐかなみ。
「ちょ……危ない薬だったらどうするんだよ……いいから貸してっ」
ミカは、かなみの手から薬を取ろうとした。
『え、ちょっ……待ってよっ』
何故かかなみは手を離そうとしない。だが、力の差は歴然だ。ミカは無理矢理にかなみの手から薬を取り上げた。
その時だった。
かなみの手から取り上げ、上に上げた小瓶がするりと抜け落ちる。
「え…」
蓋が開いている小瓶は、真っ逆さまにかなみに向かって落ちていく。
そして…
バシャッ
『っ……ひゃぁ!?』
かなみに当たって、中の液体は全て溢れてしまった。
「かなみ!?」
すると、かなみは顔を青くしてミカの方を見る。
『……ち、ちょっと飲んじゃった……』
「……え?」
そして、その瞬間、かなみはフッと気を失うように倒れ込んだ。
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