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□永遠の愛を貴方に(続編)
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吸血鬼には、人間の7倍もの身体能力が備わっている。
そして、吸血鬼にしたやつの強さともとのポテンシャル、生きている年数に比例して強くなる。
クローリー・ユースフォードは第十三位始祖にしてはかなり強い。よって、私もそれなりに強くなることができた。

だから……



ガチャ。



かなみは窓の外に乗り出した身体のまま、視線を後ろに向ける。


「……起きたと思ったらまたか……」


クローリーはぼそりと呟く。
かなみはヘラッと笑ってから、窓を掴んでいた手を離す。もう少しでこの部屋から体が全て出ようとしたその時、右の手首を強い力で掴まれる。

『っ……』

かなみは手首を握りつぶされるような痛みに顔を歪める。そのまま、重力に逆らうように体は引き戻され……


ドサッ。


部屋に逆戻り。床に体を落とされた。



「学習能力がないなぁ。どれだけ逃げようとしたって無駄だって言っただろう」

『あと少しだった』

かなみは床に手をついたまま、ギュッと拳を握る。


「それはこの部屋から出ることだけね。もし、ここから出られても僕はすぐに君に追いつくよ」


『次は……もっと早く……』


顔を上げず、かなみはぶつぶつと呟く。するとクローリーはため息をつき


「自由にしすぎかな。もっと鎖で繋いで監禁でもしたほうがいい?」

『本当に逃げられたくないなら、そうすればいい』


私はようやく顔を上げる。それと同時に、腰についていた鬼呪装備の刀を抜く。


「……相手ならどれだけでもしてあげる」

クローリーも腰の剣を抜いた。


「でも……こう何度も逃げるのは感心しないなぁ」


ギィンッとかなみの刀と彼の剣がぶつかる。凄まじい音が響き、かなみの骨が軋む。


『っ……くそ……吸血鬼になってさえも……勝てないなんて……』


「僕の血で吸血鬼になったんだ。勝てるわけないだろ」


カンッと虚しい音が響き、私の手から刀が抜ける。くるくると円をかきながら刀は飛んでいき、鋭い音をたてながら床に突き刺さった。

その刀を取りに行こうと身体を逸らした時、クローリーの大きな手が私の首を捕まえた。

『うぐっ……』


ぞくりと身体が震える。
クローリーに首を掴まれるのは、苦手だ。昔の怖い記憶を呼び起こされる。


「かなみはこれが苦手だよね。大人しくなってくれる」

『は……なして……』

「ねぇかなみ。君はいつになったら僕の方を向いてくれる?」

『向かない。あんたの約束は……あんたの血で私が吸血鬼になることだけ。……それ以外は……私の自由よっ』



ギリっと首が締まる。
ぞくぞくと背中に寒気が走った。


『こ……殺すなら……殺せばいい』

クローリーを睨みつけると、彼は黙って私をベットへと放り投げる。


柔らかいベットに沈み込み、一瞬にして身体の自由を奪われたことに気づく。クローリーが跨り、両手首を捕まえてしまう。


「先は長いんだ。…いいよ、ゆっくり君を僕のものにしてあげる」


ふわりと笑う彼に、涙が出そうな程恐怖が襲う。

『い…やっ……』


その予想は当たり、クローリーは私の首に勢いよく牙を突き刺した。
ギュルルルルっと血が勢いよく吸われる。痛みより背徳感に襲われ、苦しくなる。体を動かしても全く歯が立たない。


『いや……吸わないで……いや……』


目が霞んでくる。
血がなくなっていく。
頭がボーッとして、何も考えられなくなる。


私は……

今日もここから逃げ出せなかったのか……





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