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□真実は残酷で悲しい
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ベットに座って、ただ窓の外を見ていた。外の世界は綺麗だ。こんなにも綺麗な青空が広がっていて、建物も大きくて立派なものが多い。だが…異国のもののような気がする。


ここは…


どこだろう?



トントン。


ノックの音が部屋に響き、暫くしてから戸が開いた。


「……入るぞ」


扉を開けて入ってきたのは、色黒の肌をもつ、とても綺麗な顔立ちの男だ。見慣れた彼のことは、私が唯一心を許している者だ。


『ウルド様……』


私が名前を呼ぶと、彼は無表情だった顔つきを少し緩ませて私の髪を撫でる。


「どうした?」

『…まだ……思い出せません……。私が何故ここにいるのか……自分が何者なのか……』

すると、彼は目を細め、複雑そうな顔を私にする。その意味は分からないが、あまり良い表情ではない気がする。


「……無理に思い出すな。俺は……お前がどれだけここにいてくれてもいい。いや、どこへも行くな。俺のそばにいろ。かなみ」


名前を呼ばれると、耳がびりびりとする。これが私の名前なのだと、確信できる一つの証。


『ありがとうございます……。こんな素敵な服まで用意してもらって……なんか悪いです』


私を纏うのは、とても綺麗なペールブルーのドレス。こんなドレスに身を包んだことが、記憶を失う前はあったのだろうか?記憶を失った今、そんなことは考えてもわからないが…


「よく似合っているよ。…これも、良かったら付けてくれないか?」


彼は少し大きめの薔薇の髪飾りを取り出す。ドレスと同じ色だ。私はそれを受け取り、自分の髪につけようとするが、上手くいかない。思ってるより不器用なんだろうか……。もたもたしていると、前にいたウルドはふっと笑ってかなみに手を伸ばす。


「俺がやろう」


不意に重ねられた手に、心臓がとくんっと鳴った。私はそっと手を引き、髪に触れる彼の手を感じながらジッと黙っていた。



「よし……出来たよ。ほら、あそこの鏡を見てみればいい」



彼の指差す方向に、全身の映る鏡がある。私は立ち上がり、その場所へ向かい、立ち止まる。

綺麗な青いドレスに身を包む私自身は、不思議な髪色をしている。淡い灰色の髪で、緩くウェーブがかかっている。その髪に綺麗に映えている青い薔薇。


「よく似合っているよ」


ギュッと後ろから抱き締められた。細めの身体だというのに、彼の抱き締める力は強い。体をギュッと締め付け、絶対にどこへも行くな、行かせるものか…と言っているようだった。


私は……どうしてここにいるんだろうか?






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