request(旧)

□※狂おしいほど
1ページ/12ページ

あぁ……どうしようか……


このままでは、私はこの街から出て行かなければならない。


周りには、家畜の服を着た子供達がはしゃいでいる。


幸せそうだ。


いや、こんな世界で、こんな場所に家畜として飼われている人間が幸せなわけないのに……


私は、彼らが羨ましい。


あと何年……彼らはこの場所に居続けられるんだろうか……



「フェリド様!!」



子供達が無邪気にその名前を呼んだ。

私は建物の隅に隠れ、その様子をうかがう。


子供が駆けて行った先には、貴族の服を身にまとった美しい男がいた。


「あはー……君かぁ……どうしたの?」

「今日もフェリド様の館へ行ってよろしいでしょうか!」

「……うん。……もちろん。待ってるよ」



私は、フェリド様の顔を見て



口角を上げる。



あの子供はもう……用済みなんだ。

きっと殺される。だって、名前さえ忘れられてるじゃないか。


目線を移し、私はガラスに映る自分を見た。


長く、サラサラとした髪。大きな目。白い肌。大人びた顔立ち。大きくなった胸。すらっと長い足……



全てが……気に入らない……



『また……身長が伸びてる……』



私は今……18歳だ。


18歳となれば、もう、そろそろこのサングィネムから追い出され、地上の都市に行かされてしまう。

サングィネムで保護されているのは子供だけだ。

地上に出たからといって自由になれるわけじゃない。地下鉄の駅などに場所が移り、そこで飼われるのだ。


『こんな大きくなった姿じゃ…もうきっと彼は私の血を吸ってくれない…』


ガラス越しから目を離し、彼の方を向く。

すると、フェリドは新しい小さな女の子と手を繋ぎ、館の方へ歩いて行っていた。


『…………嫌だ……行かないで……』



かなみはその場に崩れ落ちる。


目に涙をためる。



『行かないで……置いてかないで……』



私以外の血を吸わないで……

私以外の手を握らないで……

私以外の肌に触らないで……

私以外の目を見ないで……





貴方には……


私だけだったでしょう?


あの時のように……



私に興味を持ってください。


私を貴方の側に……



ずっと置いてください……




貴方を狂おしいほどに……




愛しているんです……






.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ