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□届かない想い
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日本帝鬼軍大佐、三宮葵が出てきたのは、独房の部屋に入ってからすぐのことだった。


『もういいのですか?』

「はい、引き続き監視をお願いします」


表情は一切変えず、凛とした姿で…、彼女はその場から去っていった。


「…そろそろ食事を運ぶ時間だな」


同じく見張りをしている兵の一人がそう言った。


だがその時、アナウンスが流れ、今目の前にいる一緒に見張りをしている男の名前が呼ばれた。


『……呼び出し……ですね』


「……あぁ……すまないが、君が運んでおいてくれないか?運ぶだけだ、当番が代わっても然程問題はないだろう」


『え……私がですか』


それは……
いいのだろうか?
私は部屋の扉を見つめた。


「すまないが、よろしく頼むよ」


『……はい』


私はとりあえず返事をした。

迷っていたが、彼が戻ってくる気配がなかったので、私は食事を独房にいる彼へと運ぶこととなった。


中にいる彼とは……


できれば会いたくなかった。

独房の中にいる彼。
名前は"柊深夜"。
柊家ではあるが、養子だ。


そして……

私の幼馴染でもあった。


子供の頃、柊真昼の許婚になるための戦いをする深夜を側で見てきた。

精神が崩壊しそうになる彼を支え、なんとか許婚になれたと思ったのに……

それは結局意味のないことだった。


あの戦いはなんだったのか……

許婚となるために生まれたあの大勢の犠牲はなんのためにあったのか……

私は……柊家のやることに疑問を感じていた。

まぁ……そんなこと口走れば、私の首は簡単に飛んでしまうだろう。


それでも、私は柊家のやることをやはり賛成はできない。

幼馴染である彼をこんなところへ閉じ込めて……

何もできない自分が悔しかった。

彼に合わす顔もない。


どうにかバレないように……

彼へ食事を届けよう。


彼を見ること自体、久々だった。
見張りといっても、独房の外の扉に立っているだけだったから、囚人との接触は禁じられていた。


でも、こんなチャンス滅多にない。

彼の顔見たら……

関わりは持たず、すぐに部屋から出よう。

そうすれば……なにも問題ないはずだ。


私は食事のトレイを持ち、独房へと入る扉を開けた。




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