request(旧)
□君が触れていいのは
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名古屋市役所には、難しい本が沢山ある。
名古屋の歴史だったり、文化だったり……
だが、私はその本が結構読んでいて楽しい。
クローリーが出掛けている間は、こういった本を読んで時間を潰している。
時々、フェリドさんが本を持ってきてくれたりするのだが……
その本ももう読み尽くしてしまい……
私は本棚の一番上にある本を眺めていた。
『あの段の本だけ読んでないんだよなぁ……。届かないからあとでクローリーに取ってもらおうと思ってたけど……』
今、彼は出掛けている。
貴族の会議があるそうで……
その暇な時間を潰すものがない。
やはりあの段の本が読みたい。
『背伸びすれば……』
グンっと爪先立ち、腕はこれでもか!とくらい伸ばす。
『つ、攣りそう……』
だが、目当ての本にあと少しで触れそうだ!
『あ……あとちょ……っと……』
もう少し身長があれば……
だが、そんなたらればは通用しない。
『んー…っ』
ツンッと、指先が本の端に当たった。
ダメだ…
背伸びじゃ……
私は少し足を屈め……
『えいっ!』
ジャンプした。
ガタッ……
すると、思ったより本棚に衝撃を与えてしまい……
『あ……』
一番上の段に詰まっていた本がグラッと本棚からはみ出てくる。
やばい……
これは……
落ちてくる!!!!
ドサドサドサドザッ!!!!!!!!!!
本棚から雪崩のように本が落ちてきた。
だが……
その全てが私に当たっていない。
私は何かに包まれていて……
「っ…………危ないなー……」
目をゆっくり開ければ、私はクローリーに抱き締められる形で守られていた。
床には沢山の本が散らばっている。
『えっ!?あ、クローリーがかばってくれたの!?い、痛くない!?こんな沢山の本!!』
「…………いや、痛くはないけど…………久しぶりにまともに打撃を受けたかな」
私がこの本に当たればひとたまりもなかっただろう……
「怪我してない?……ほんと、市役所内でも危なっかしいんだから……」
彼に抱き締められているため、頬が丁度がっしりとした胸板に当たっていた。
「……どの本とって欲しかったの?…………って……なにしてるの」
私の興味は、本から別のものに移行してしまった。
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